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20 愛妻家の豹変
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出来のよくない手下たちを、
「さっさと去にさらせ、アホンダラ!」
と、尻を蹴りあげて帰らせた五十男が、ゆっくりと振り向いた。
おお、なかなかの眼光。
俺はかるく頭を下げておいた。
「ども」
「勘違いしたらあかんで」
「なにをですか」
「ワシら引いたわけと違う、ちゅうことや。いつでも相手したんねん。臨戦態勢やぞ」
「はあ、そうですか」
「そっちがその気なら、やけどな」
「そんな気ないですよ。今日は買い物に来ただけなんですから」
「むー」
こら業火娘、つまらなそうな顔すんな。
「こないな時間にか」
「この街で言えば、まだ宵の口じゃないですか』
「どこ行くんや」
「ジュリアさんの古道具店に」
「なんやと」
五十男の顔面に、一瞬、まぎれもない動揺が走った。
「ジュリアさんって、あのジュリアさんかいな」
「あなたの言うジュリアさんが千年魔女のジュリアさんなら、そのジュリアさんでしょうね」
「──知り合いなんか」
「ええ、まあ。俺は魔術士じゃないんで、あんまり来ませんけど」
「あたし、ちょくちょく買い物するよ」
ロレッタが会話に入ってきた。
「冒険の前とかね。アイテム婆ぁのとこなら何でも揃うから便利だし」
「あ、アイテムば──ばあ?」
「ケチだから安くないんだけど、たまーにまけてくれるしね」
「ちょ、ちょう」
「なに? アイテム婆ぁがどうかしたの?」
「ちょう待てや、声でかいねん」
「あ、もしかしてアイテム婆ぁの友だち?」
「声がでかい言うてるやろ! あと話しかけるな」
「なにそれ、わけわかんない」
五十男の動揺は恐怖にかわって、明らかな撤退モードにはいっていた。スラム街にもいろいろな人間関係があるのだろう。
「せ、せや。ワシ──やなかった、ボク、用事があったんや」
「あの、いろいろとお騒がせしまして」
「何のことや? ボク、嫁はんにお遣い頼まれて通りかかっただけやねん。誰にも会うてへんし何にも見てへんで」
なかなか愛嬌のある惚け方で平静を装っているが、そわそわと金の鎖をまさぐる仕草に動揺があらわれている。
俺も小芝居につきあって、ちょっと畳みかけてみることにした。
「せめてお名前を。後日、あらためてお詫びにあがりますので──」
「い、いらん! というかキミタチ、誰やったかいな」
「おじさん、ボケたの? あたしはロレッ──」
「あーそうや! こないなとこで油売っとったら嫁はんに怒られるがな」
「あの、お名前を──」
「通りすがりのおっちゃんや! キミタチももう遅いんやから、早よお家に帰らなあかんよ。ほな、ボクはこれで!」
言うが早いか脱兎のごとく走りさった。
素晴らしい瞬足だ。あれなら都市対抗競技会のカスバ市代表になれる。
でも、住民台帳に載ってないだろうな。
「さっさと去にさらせ、アホンダラ!」
と、尻を蹴りあげて帰らせた五十男が、ゆっくりと振り向いた。
おお、なかなかの眼光。
俺はかるく頭を下げておいた。
「ども」
「勘違いしたらあかんで」
「なにをですか」
「ワシら引いたわけと違う、ちゅうことや。いつでも相手したんねん。臨戦態勢やぞ」
「はあ、そうですか」
「そっちがその気なら、やけどな」
「そんな気ないですよ。今日は買い物に来ただけなんですから」
「むー」
こら業火娘、つまらなそうな顔すんな。
「こないな時間にか」
「この街で言えば、まだ宵の口じゃないですか』
「どこ行くんや」
「ジュリアさんの古道具店に」
「なんやと」
五十男の顔面に、一瞬、まぎれもない動揺が走った。
「ジュリアさんって、あのジュリアさんかいな」
「あなたの言うジュリアさんが千年魔女のジュリアさんなら、そのジュリアさんでしょうね」
「──知り合いなんか」
「ええ、まあ。俺は魔術士じゃないんで、あんまり来ませんけど」
「あたし、ちょくちょく買い物するよ」
ロレッタが会話に入ってきた。
「冒険の前とかね。アイテム婆ぁのとこなら何でも揃うから便利だし」
「あ、アイテムば──ばあ?」
「ケチだから安くないんだけど、たまーにまけてくれるしね」
「ちょ、ちょう」
「なに? アイテム婆ぁがどうかしたの?」
「ちょう待てや、声でかいねん」
「あ、もしかしてアイテム婆ぁの友だち?」
「声がでかい言うてるやろ! あと話しかけるな」
「なにそれ、わけわかんない」
五十男の動揺は恐怖にかわって、明らかな撤退モードにはいっていた。スラム街にもいろいろな人間関係があるのだろう。
「せ、せや。ワシ──やなかった、ボク、用事があったんや」
「あの、いろいろとお騒がせしまして」
「何のことや? ボク、嫁はんにお遣い頼まれて通りかかっただけやねん。誰にも会うてへんし何にも見てへんで」
なかなか愛嬌のある惚け方で平静を装っているが、そわそわと金の鎖をまさぐる仕草に動揺があらわれている。
俺も小芝居につきあって、ちょっと畳みかけてみることにした。
「せめてお名前を。後日、あらためてお詫びにあがりますので──」
「い、いらん! というかキミタチ、誰やったかいな」
「おじさん、ボケたの? あたしはロレッ──」
「あーそうや! こないなとこで油売っとったら嫁はんに怒られるがな」
「あの、お名前を──」
「通りすがりのおっちゃんや! キミタチももう遅いんやから、早よお家に帰らなあかんよ。ほな、ボクはこれで!」
言うが早いか脱兎のごとく走りさった。
素晴らしい瞬足だ。あれなら都市対抗競技会のカスバ市代表になれる。
でも、住民台帳に載ってないだろうな。
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