攻略本片手に異世界へ 〜モブは、 神様の義祖母 〜

出汁の素

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間章 旅のまにまに

第6話 豊穣の女神

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「神よ。雨を」

 祈りに失敗した祈祷師の首がまた飛んだ。この世界最大の砂漠地帯を領土とする。自称南の大国ローデシア王国では、昔から続く光景だ。昨年からの日照りは、ここ100年でも最大級で、水不足で多くの者が亡くなっている。そんな中で、帝国からリーゼンハルト殿下がお越しになると言う。革命の可能性すらある危険な状態である事は、殿下もご存知だろうが、帝国でも色々あるんだろう。色々不足する中ではた迷惑な話だが、帝国と事を構える訳もいかず、受け入れるしか無いのだろう。


「ロゼッタ。お父様がお呼びです。すぐに謁見の間に。」

 私は、王である父に呼ばれたのは、殿下が来る3日前であった。私は急ぎ謁見の間に向かった。

「ロゼッタか、リーゼンハルト皇子が3日後にいらっしゃるのは知ってるな。」
「はい、お父様。」
「ロゼッタ、リーゼンハルト皇子を籠絡して、帝国からの援助を得よ。」
「は?」

 お父様は、何を言い出すかと思えば、リーゼンハルト殿下を口説き落として、帝国からの援助を受け、国をなんとかしろと。リーゼンハルト殿下には、ベルーフ王国なマーリー姫という婚約者がいるはず。真面目と言われるリーゼンハルト殿下がお父様の様に女性を何人も侍らせなんて事はない筈だ、

「リーゼンハルト殿下には、婚約者が」
「男なんてものは、綺麗な女がいれば手を出したいものだ、皇族であれば、もう10人や20人は愛人がいるだろう。ワシはその頃50人程いたがな。お前と、リーファに饗応役を任す。上手くやれ。」

 そう言って、お父様は、愛人達を連れて下がって行った。お父様を始め、兄弟姉妹40人余、皆んなまともな頭は無く、享楽に溺れ、国の現状が見えていない。大臣達も最低で、下級官吏達の力で何とか保っている状況だ。私は仕方なく、饗応役として、殿下の出迎えをした。

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 殿下の隊列の先頭を見ると、鎧を着た10歳前後の少女が馬に跨っていた。

「少女趣味か、どうしようか。」

 リーファが漏らした言葉に私も頭を抱えつつ、いい言い訳になったと、ほくそ笑んだ。それにしても、男ってやつは。
 隊列が私の前まで来ると、馬が止まり、少女が右手を上げ隊列を止めた。そのあと、少女は、馬から飛び降り、私の前に立った。

「小官は、帝国軍リーゼンハルト護衛騎士隊隊長ジェシカ大佐です。ローデシア王国第18王女ロゼッタ様と、第20王女リーファ様ですか?」

 帝国大佐?と思ったが、

「いかにも私はロゼッタで、彼女はリーファです。」

 その後、リーファが急に余計な事を言い出した。

「帝国では、可愛くて、皇子を落せば将校になれるんですか?」

 は?なんて事を。と思ったがジェシカさんは、

「私が可愛いか分かりませんが、色々な実績で今の地位を頂いております。」
「色々ってキャッ。」

 と、リーファは目を覆った。

「そう、目を覆いたくなる様な場面は沢山ありました。リーファ様もお気をつけを。」

 そう言って、馬に飛び乗り、隊列は城に向かった。あれ?何かがおかしい。と若干思ったが、この時はすぐに忘れてしまった。殿下達は王城でお父様と謁見した後、帝国大使公邸に向かってしまったり

「1年間よろしくお願いします。」
「はい、出来る限りの事をさせてる頂きます。」

 私がその日殿下と交わせた言葉は、謁見の間で話した、この程度だった。

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 翌朝、大使公邸に向かうと、殿下達は既に港町ウォーロックに視察に向かっており、ジェシカ大佐しかいなかった。

「おはようございます。ロゼッタ様。」
「おはようございます。ジェシカ大佐。殿下は?」
「リーゼンハルト帝国皇子は、バリーバリーの街の視察に向かわれましたので、お戻りは4日後です。」
「えっと、ジェシカ大佐は何故残ってるの?」

 そう、通常護衛騎士隊隊長なら、ついて行く筈だ。

「私の仕事は、護衛ではありませんから、明日から、王都学院に交流の為に留学することになっておりますので、今日は手続き等をする予定です。」

 は?護衛騎士が交流の為に留学。しかも、王都学院って、王都最高峰の学校で、お父様が教育により反乱分子を産むとして、閉鎖させる予定の学校じゃないの。殿下の愛妾に何かあったら、お父様にご報告しないと。その前に、私もついていって、私の護衛に警護させないと。

「そうですか、私もする事がありませんし、ご案内しますわ。」
「ありがとうございます。」

 玄関を出て、ジェシカ大佐は馬に乗り、私は馬車に乗り込み、学院に向かった。学院は、王都で、王城を挟んだ反対側にある。民衆と軍との衝突で、一部潰れた建物や、閉鎖した店等が多い地域でもあり、初めて来たが、散々な街並みだった。そんな街を眺めていると、ジェシカ大佐が馬で寄ってきて、キャビンの窓を叩いた。

「どうされたのですか?」
「多分40人位が襲ってきます。私が引き付けますので、姫は王城へ。」
「へ、ジェシカ大佐は?」
「私は実績で帝国大佐となった身、民衆、一部冒険者かな?その程度、相手になりません。では。」

 そう言うと、私の馬車は王城に進み、ジェシカ大佐か小さくなっていった。私が王城に戻り、お父様に会おうとすると、お父様はやんごとなき理由で会えないとの事だったので、1番まともな騎士団長である、第9騎士団長リバレイル将軍に事情を話した。

「は?40人ですか?1対40だと、農奴相手でも勝ち様がありません。もし、護衛騎士隊隊長のジェシカ大佐が愛妾だとすると、殿下が激怒し、取り急ぎ、参りましょう。」

 そう言うと、ジェシカ大佐の元に騎士達と向かった。

「へ?」

 現場に、着くと戦闘の後や、血痕等が残っていた。

「ジェシカ大佐は?間に合わなかった?」

 と、悲嘆に暮れていると、リバレイル将軍か肩を叩いて、

「姫、今国内はどこもこんな状況で、各都市の領主達も命の危険を感じながら頑張っています。ご存知の様に、今年に入ってからも、高官以上が、月に4、5人亡くなってます。ジェシカ大佐と言う方も、武人であれば、」
「違うの、ジェシカ大佐は、小さい女の子なの。」
「帝国大佐が女の子?そんな筈は。」
「どういうことですか?」
「帝国の軍制度は実力本位で、少なくとも騎士と名乗った上で大佐には正騎士でないとなれません。」
「正騎士?」
「そう、正騎士です。正騎士には、現役正騎士を倒す実力が要求されます。しかも、騎士は、准尉からスタートして、実績のみで昇格していく筈です。逆に言えば、実績さえあれば、年齢性別に関係なく機械的に准将まで、昇格出来るはずです。少女で大佐。どんな修羅場を乗り越えてきたか想像も出来ません。」
「そうなの。」

 私は、勘違いしていたことに気がついた、彼女の言っていた実績は正に実績であり、目を覆いたくなる様な場面は、生死を分かつ場面だ。

「でも、少女が本当に大佐なら。もしかすると、40人程を倒したかもしれません。」
「そ、そうなの。」

 と、話していると、向こうから、馬に乗って平然とジェシカ大佐が向かってきた。

「ジェシカ大佐。」


 私は大声を上げてしまった。

「あっ、ロゼッタ様。騎士団を連れて、」

 ジェシカ大佐はキョトンとした可愛い顔でこちらを見た。

「あなたを助けに。」
「あっ、すみません。ゴロツキさん達にお灸を据えた後、事務手続きに。」
「お灸?」
「ゴロツキさん達をいちいち捕まえるのも無駄でしょし、」
「でも、犯罪では?」
「井戸が枯れて、止むを得ずと言ってたので、魔力で空気から水を作る魔導具を作って置いてきました。多分、まともな仕事に戻るでしょう。」
「は?魔力でそんなことが?」
「はぁ、出来ますよ。じゃないと帝都なんかすぐに水不足ですよ。渡したのは生活水と、飲用水を1時間で1人分作れる程度のものですけどね。帝都も昔作った物で、今は作ってる工房はない筈ですよ。研究所では扱ってる筈ですが、私も偶々知ってただけですし。」
「王国にその魔導具をお売り頂いけませんか?」
「真面目にお売りするとすると、1人分で1億ゴールド位ですよ。払えますか?」
「えっ、でも、ゴロツキさん達に、」
「あれは、私の趣味です。姫にプレゼントであれば差し上げますが、適正価格は、その位です。」
「分かりました。」(シュン)
「ところで、明日から学院が閉鎖されると聞いたのですが。」
「えっ、国王陛下のご命令で、再開は未定とのこと。」

 もう、その命令は出ていたのか。状況は、悪化の一途を進んでいるか。

「私は戻り、明日から炊き出し等を行う予定ですが、ロゼッタ様はどうされますか?」

 えっ、どうせ、リーゼンハルト殿下を落とせないし、そんな事もしたくないので、

「お手伝いしますわ。」
「ありがとうございます。助かります。」

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 翌日から、ジェシカ大佐と一緒に炊き出しや、孤児院巡りを始めた。我が国は、主に太陽神べべトム様を祀っており、神殿や孤児院にもべべトム様の像しか無い。ジェシカ大佐は、各神殿や孤児院に行くたびに、グリーン様の像と、その土地の職業に合わせた像を送り、合わせて拝むように勧めた。また、井戸では、魔導具でより深い穴を掘り、簡単に汲める魔導具も併せて設置し、住民の水不足が徐々に回復していった。井戸の効果と、グリーン様の思し召しで、土地が回復して行くのが見て取れる程だった。2ヶ月が経つ時、私はお父様に呼び出された。

「ロゼッタ、お前、リーゼンハルトを口説き落とさず、リーゼンハルトの愛妾と仲良く遊び回ってると、リーファから報告を受けている。」
「いえ、」
「お前には失望した。リーゼンハルトを落とすまで、帰城を認めん。落とせなければ、国外追放だ。」
「はい。」
「下がって良い。」

 私が下がりかかった時、

「リプマン。巷には、豊穣の女神と言われる少女が、下民達に水を配っているらしい。まず満たすべき我が王城をさておいてだ。奴隷としてやるから、即刻連れてこい。最悪殺しても構わん。」

 えっ、それって、ジェシカ大佐のことでは?

「お父様、それは帝国に」
「ロゼッタ、お前は、まだいたのか。早く行ってこい。」

 お父様は、私の言うことを聞いてくれない。ジェシカ大佐に伝えないと。そう思って、私は荷物も持たず馬車に走った。私が今日炊き出し予定の孤児院に馬車を進めていると、馬車の横を第2騎士団が馬で追い抜いて行った。

「ジェシカ。頼むから無事でいて。」

 私が孤児院に着いたときには、孤児院の周りを第2騎士団が固めていた。

「お前が豊穣の女神か餓鬼。」

 第2騎士団長ビルモア将軍がジェシカ大使に怒鳴りつけている。

「は?私は女神などであるわけないでしょう。」

 ジェシカ大佐が、頭悪い子の相手をする様に答えた。

「どうでも良いわ。ありがたくも国王陛下は、貴様を奴隷にしてくれるそうだ。ついて来るんだ。」

「申し訳ございませんが、私は貴国の奴隷にならないといけない言われは無いのですが。」

「ふっ、国王は、殺しても構わないと言っている。大人しくついてくるんだ。」

 それを聞いた民が一斉に反発した。

「は?騎士団に逆らうか?命はないぞ。」

 と凄んで、騎士達は剣を抜いた。

「姫様。」
「あっハーバードさん。」

 ジェシカ大佐のお兄さんで、殿下の顧問として随行している。長身で超二枚目の性格良し。旦那様にするならこんな人って感じだが、妹好きだ。

「こちらへ。危険です。」
「ジェシカ大佐は?」
「妹なら、ドラゴンを連れてきても死にませんから、この位の数なら大丈夫です。」
「へ?」

 私は、ハーバードさんに抱き抱えられて、大使公邸に向かった。

「大丈夫ですか?済みませんがこのまま公邸まで駆け抜けさせて貰います。」
「はっ、はい。」

 初めてのお姫様抱っこ、最高の気分だったが、屋根を飛び跳ねながらってどんな兄妹だろう。こんな最高な気分はすぐに終わってしまったが、公邸についても、ビクビクしている私の手を握りしめてくれていた。本当に、恋に落ちそう。そんな気持ちでいると、殿下が入ってきた。

「ハーバード、状況は?」
「革命が始まりそうです。」
「どこの派閥か?」
「どこと言うより、妹を襲った王国に反旗を翻したのが原因なので、急拡大しそうです。」
「そうか。」

 二人は、目を見合わせて、首を振った

「もう駄目だな・・・。」
「ですね・・・・。」

 そいう言うと、殿下は私に寄ってきて

「ロゼッタ妃。あなたには、3つの選択肢があります。1つ目は、この公邸を出て王城に戻ること。王城までは責任をもってお連れします。2つ目は、帝国に亡命されること。帝国まで責任をもってお連れします。3つ目は、この公邸に残ることです。内戦終了後に帝国にお連れします。どうしますか。」

 私は、悩んだ、王城に戻ったところでやれることはないだろう。帝国に亡命は、王女として論外。王国の存亡を間近で見て、最後を決めるのもいいかもしれない。

「殿下、宜しければ私をこの公邸に置いてください。全て殿下に従います。」

 殿下は、一瞬迷い。

「わかりました。ハーバード、彼女の警護を」
「了解した。」
「えっ、ハーバード様、私の警護をハーバード様が・・・。」

 殿下は少し笑いながら。

「帝国として、今回の内戦について直接介入する気はありません。」
「内戦?」

 ハーバード様は、私にニコって笑い。

「気づかれましたか、私達は今回の革命を内戦扱いにし、条約に基づき介入する気はありません。そもそも、姫もお気づきかと思いますが王国は病んでいます。貴国に来て王家、貴族、国民を見てきましたが、この国は持ちません。そこで、帝国使節団及び外交府は、一つの決定をしました。この国を潰します。これは、帝国本国の了解を取っています。但し、帝国として軍事介入は行いません。我々に喧嘩を売らない限りは・・・。」
「でも、それが破られた。」
「そうです。貴国在留軍の最高位を襲った。これはどう言い訳をしても、どう見ても帝国への宣戦布告です。確実に。で、どうする?」

 と、扉の方を向いて語りかけた。

 ガチャ。と扉が開き

「えーとですね。今ある6派を糾合します。その前にあのことは?」
「あのこと?」

 入ってきたジェシカ大佐は、可愛くまゆを顰めて、

「もう、ロゼッタ様、帝国軍の介入がある場合、敵を明確化します。今回の場合は、今の状態では、王国政府となります。この場合、内戦は帝国には関係無いので、貴国を帝国領とします。ですが、内戦の相手が、王家で有れば、敵は、王国国王派となり、貴国に対し相応の補償を貰い、領土は保全されます。わかりますか?」

 えっ、それって、私が革命軍の旗頭になれと、でも国が、

「わ、わかりました。仔細は、お兄ちゃんに任せてください。」
「えっ私がやるの?」
「当然でしょう。顧問なんて内戦中は暇なんだから。」
「了解。」
「で、物資は?」
「ほぼ納品が間に合ったから、公邸の倉庫に。」
「武器は揃えたし、港は?」
「我が領軍の艦隊が封鎖完了しているって連絡が入っている。」
 リーゼンハルト殿下が優然と語っている。

「領軍の艦隊?」
「あぁ、私の領地には、艦隊規模として、4個艦隊の艦隊を有しているから、その半分を派遣させた。そうだ、ジェシカちゃん。アーサーも一緒に来てるって、」

 ジェシカ大佐は、まゆを顰めて、

「え?メイドい。」
「「アーサー君可哀想。」」

 アーサー君て誰?

「お兄ちゃん。傭兵部隊3つを国境沿いに派遣してるし、リゾナンド公爵に殿下からの親書が届いてる筈なので、」
「先程公爵家軍のリスビル中将から連絡があった。「傭兵部隊の件は、了解した。街道開発の件よろしく。」だそうだ。」
「予算そろそろ無くなったきたから、残額全て南部ルートで、お兄ちゃんよろしく。」
「了解。連絡入れとく。これで、帝国全域の主要街道が完成か。」
「長かった~。で話を戻して、南部派と北部派は?」
「明日王都に代表者がくる予定だ。」
「バミルー市長と、べべミス子爵本人が?」
「あぁ、そっちは?」
「王都急進派のピザさんは血だらけだったからシャワー浴びせてるし、王都に穏健派のロー司祭は、公邸の神殿で神像を撫で撫でしてたるよ。」
「東部のリバレイル将軍は、ロゼッタ姫の命と引き換えに約定済みだし。問題は西部か。」
「リバレイル将軍が反乱?あと、西部?」

 西部は穏健な地域と聞いているので問題はないはずだ。

「東部はそうよ。西部は、リザピエール侯爵が、暴虐の限りを尽くしているから、革命組織が出来なかったけど、そもそも民を逃しておいたから、帝国の傭兵部隊を2つ潜り込ませてるし、なんとかなるんじゃないかな?」
「文官派は?」
「文官派って?」

 政府にも反逆者がいるのか?

「文官の半分以上は、明日姿を消す予定だよ。公邸の地下に食料や水、魔導具を用意しておいたから。」
「了解。では、成功させよう。」
「そうだな。リーゼンハルト殿下。」
「帝国の抑えをよろしくお願い申し上げますね。殿下。」

 そういって始まった内戦は、1ヶ月で王城が落ち私以外の王族、多くの貴族が処刑されて終わった。私は女王になった。

「ロゼッタ女王陛下。御即位おめでとうございます。帝国を代表して御礼申し上げます。」
「リーゼンハルト殿下。帝国のご協力いたみいります。」
「私はあと9ヶ月余り貴国に滞在させて頂く予定です。可能な限り協力させて頂きます。」
「では、一つお願いが。」
「はい。」
「滞在中、ハーバード氏をお貸し下さい。政策協力として。」

 私は何を言ってるんだろう。顔が真っ赤になった。

「わかりました。」

 そう言って、ウインクして来た。絶対バレてる。私がハーバード様に恋をしてるのを。
 私はハーバード様と、国を良くするために、9ヶ月間過ごした。辛かったけど幸せな日々だった。そして、瞬く間にお別れパーティーとなった。パーティーも終わりに近づいた頃、ジェシカちゃんが私に声をかけてきた。

「ロゼッタ様、お兄ちゃん連れてって良いの?あの鈍感男、言わなきゃわからないわよ。」
「えっ」

 と、私の背中をそっと押してくれた。私が、一歩二歩と歩くと目の前にハーバード様がいた。

「ハーバード様?」
「なんでしょうロゼッタ陛下。」
「貴方にお願いがあります。」
「何でございましょうか?」
「私を貴方の一生の伴侶にして下さい。」
「えっ。」

 周りは静まりかえり、衆目は2人に向いていた。彼は、ジェシカちゃんの方を向き、次にリーゼンハルト殿下を見てから、私をじっと見た。

「わかりました。よろしくお願いします。」

 大きな拍手が会場を埋め尽くし、私は、ハーバードの妻となった。ハーバードは、ローデシア公と言う、王配の地位となり、私はそのまま女王となっている。実体はハーバードが国を治め、国中でグリーン様を祀り、ジェシカの商会と協力して、砂漠が徐々に緑化していっている。

 ジェシカは、豊穣の女神と言われ、グリーン様の使徒ではないかと噂され、革命の英雄にもなった。彼女にも残って欲しかったが、彼女は、私は護衛騎士なのでと言って旅立って行った。それにしても護衛しない護衛騎士だなんてぬ。
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