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第一章 かずま
第4話 優香
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五分くらい歩くと、優香の家に着いた。家の前には優香と僕の知らない男子がいた。男子は優香の前で土下座させられていた。
「優香!」
萌絵様の呼びかけに優香は手を振って答えた。僕は優香を見ないように下を向いて歩いた。
「どうしたの? そいつ」
萌絵様が土下座している優香の付き人を、顎で指した。
「何でもないよ。ちょっと反抗的だったから、お仕置きしてやっただけ」
男子は青い顔をして、汗をかいていた。
お仕置きって、何をされたんだろう……。何か恐ろしいことをされたんだろうか。あの優香に……。
優香と言えば卒業式の後、「このクラスは男子も女子も仲良く助け合える最高の学級でした。こんな経験はもう出来ないのでないかと思うと、本当にこの学級で良かったと思います」なんて言っていた子だった。誰にでも明るく、活発な子。土下座する男子の前に立ち、「そいつ」呼ばわりする女子が、同一人物だとは思えなかった。そんなことを考えていたら、萌絵様は萌絵様で、とんでもないことを言い始めた。
「へえー、そうなんだ。だったら取り替えてもらったら?」
まるで物みたいな言い草だ。
「うん、ちょっと考えた。でもそれやるとこいつのクラス下がっちゃうんだろ? もう1回チャンスやろうと思ってさ。……それより」
優香は僕をのぞき込んできた。
「萌絵の付き人ってこいつ?……プッ、ハハハハハハハ」
優香は大笑いした。僕がちらっと優香を見ると、ますます大声で笑った。小学校の時は、楽しい仲間だった彼女が、今は僕を蔑むいやな女にしか見えなかった。
「ほら、挨拶しなさい」
萌絵様が僕の頭を押さえてきた。僕は仕方なく「優香、おはよう」とだけ言った。
それを聞いた萌絵様が僕の左頬を思い切り叩いた。
「どうしようもないやつだね。さっき、呼び方を教えただろ」
「萌絵も大変だねえ。自己アピールもできず、尻叩かれた奴を任されて」
僕は屈辱に絶えながら「おはようございます。優香様」と挨拶した。
優香は当然という表情をして、挨拶を返すこともせずに歩き出した。土下座していた男子も立ち上がり、女子二人についていった。
「きみ名前は? どこの小学校?」
歩きながら、優香の付き人男子に尋ねると、萌絵が僕を叱ってきた。
「おしゃべり禁止! 何でも私の許可なくやったらだめだからね」
その一言で、僕は名前も聞けなくなってしまったが、男子は鞄の名前をさして、堀 晴奈と教えてくれた。
そこからは無言で歩いていると、二人の会話がいやでも聞こえてきた。
「優香は部活決めたの?」
「もちろん。バスケに入るよ」
「そうか、小学校からやってたもんね」
「萌絵は?」
「私、スポーツ嫌いだからさ。入りたいの思いつかなくて」
「あいつ(主馬のこと)サッカーできるよ。サッカー入れたら? 先輩が面白いって言ってたよ。それに部長のヨ・シ・キさんだったかが、かっこいいって」
「サッカーかあ。いいかも、フフ。こいつもプロサッカー選手にでもなれたらクラスBまで上がれるしね。じゃあそうする。ところで優香の付き人はどうするの?」
「バスケやるから、私のマッサージや椅子代わりかな? マッサージ師ってクラスなんだっけ」
勝手な会話だったが、サッカーをやれそうだと聞いて、僕の中学校生活にもようやく希望の光が見えてきた気がした。でもそれは……
「優香!」
萌絵様の呼びかけに優香は手を振って答えた。僕は優香を見ないように下を向いて歩いた。
「どうしたの? そいつ」
萌絵様が土下座している優香の付き人を、顎で指した。
「何でもないよ。ちょっと反抗的だったから、お仕置きしてやっただけ」
男子は青い顔をして、汗をかいていた。
お仕置きって、何をされたんだろう……。何か恐ろしいことをされたんだろうか。あの優香に……。
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「へえー、そうなんだ。だったら取り替えてもらったら?」
まるで物みたいな言い草だ。
「うん、ちょっと考えた。でもそれやるとこいつのクラス下がっちゃうんだろ? もう1回チャンスやろうと思ってさ。……それより」
優香は僕をのぞき込んできた。
「萌絵の付き人ってこいつ?……プッ、ハハハハハハハ」
優香は大笑いした。僕がちらっと優香を見ると、ますます大声で笑った。小学校の時は、楽しい仲間だった彼女が、今は僕を蔑むいやな女にしか見えなかった。
「ほら、挨拶しなさい」
萌絵様が僕の頭を押さえてきた。僕は仕方なく「優香、おはよう」とだけ言った。
それを聞いた萌絵様が僕の左頬を思い切り叩いた。
「どうしようもないやつだね。さっき、呼び方を教えただろ」
「萌絵も大変だねえ。自己アピールもできず、尻叩かれた奴を任されて」
僕は屈辱に絶えながら「おはようございます。優香様」と挨拶した。
優香は当然という表情をして、挨拶を返すこともせずに歩き出した。土下座していた男子も立ち上がり、女子二人についていった。
「きみ名前は? どこの小学校?」
歩きながら、優香の付き人男子に尋ねると、萌絵が僕を叱ってきた。
「おしゃべり禁止! 何でも私の許可なくやったらだめだからね」
その一言で、僕は名前も聞けなくなってしまったが、男子は鞄の名前をさして、堀 晴奈と教えてくれた。
そこからは無言で歩いていると、二人の会話がいやでも聞こえてきた。
「優香は部活決めたの?」
「もちろん。バスケに入るよ」
「そうか、小学校からやってたもんね」
「萌絵は?」
「私、スポーツ嫌いだからさ。入りたいの思いつかなくて」
「あいつ(主馬のこと)サッカーできるよ。サッカー入れたら? 先輩が面白いって言ってたよ。それに部長のヨ・シ・キさんだったかが、かっこいいって」
「サッカーかあ。いいかも、フフ。こいつもプロサッカー選手にでもなれたらクラスBまで上がれるしね。じゃあそうする。ところで優香の付き人はどうするの?」
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