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第一章 かずま

第5話 入部

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 僕は一年三組の教室に入った。二組までが女子だけの学級で、三、四組が男子学級だった。

 女子の教室は新校舎でエアコンも床暖房もあったが、男子の教室は平成の最初の頃に建てられた校舎で、エアコンは故障中、もちろん床暖房などなかった。

 授業は同じように行われているらしいが、掃除と給食準備は男子の仕事で、女子はその間、本を読んだりおしゃべりしたりしていた。けど、それについて文句を言う生徒は、僕が知る限り一人もいなかった。

 学校の終了時刻は、男子学級の方が十分早かった。担任が、「それぞれのご主人様をお迎えに行きなさい。遅刻は許されませんよ」と告げてきた。

 僕は大急ぎで二組の教室へ行き、萌絵様を待った。

 どの女子にも付き人がおり、教室から出ると同時に男達は駆け寄り、鞄を預かると、後ろからついて行くのだった。

 十番目くらいに萌絵様は出てきた。

「今からサッカー部の部室行くわよ」

 それだけ言うと、さっさと歩いて行った。

 部室といえば倉庫のようなプレハブをイメージするかもしれないが、ここの部室は違った。部室は一軒家のような外観で、それがいくつもグランドを囲むように、建てられていた。

「サッカー部」と書かれた表札のような物の横に、「部員登録は中にあるパソコンで」と紙が貼られてあった。

 中に入ると、広いスペースに長椅子が四つ置かれ、左側にたくさんのロッカー、右側にシャワーが五つあった。そしてその向こうには床が一段高くなったフローリングの部屋があった。雰囲気としては、時代劇のお白州のようだと僕は感じた。

 入ってすぐのところ、ロッカーの脇にパソコンがあり、萌絵様は登録を始めた。

 萌絵様は何か情報を入力しながら、はっと気付いたように僕の顔を見た。

「お前の名前だって……どうしよう。決めなきゃ」

「僕は、桜川主馬です」

「それはあなたのママがつけた名前でしょう。付き人の名前よ。……実は昨日から考えていたんだけど聞いてくれる?     あなたの名前はねぇービッツ!    どう?    ポークビッツのビッツ。この写真見てて思いついたの」

 僕に、ステージで両手を持ち上げられた時の恥ずかしい写真を見せてきた。

「ね!    ここ!    ポークビッツみたいでしょう?    でもポークビッツじゃ長いし、ポークだとブタみたいでしょう?    だからお前はこれからビッツね」

 そう言うと、名前をパソコンに打ち込んだ。そんな名前でこれから呼ばれることを知った僕は激しく落ち込んだ。
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