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63.精進料理のフルコース。またの名を大豆無双-11-
しおりを挟む豆乳で作った人参のポタージュスープの舌触りは円やかで滑らか。
またスープに溶け込んだ野菜の甘味を感じるからなのか、温かいスープを口にするだけで心が落ち着く優しい味だ。
「「奥様。豆乳で作ったスープ、とても美味しいです!」」
カフェ・ユグドラシルで出しているポタージュスープは肉を使ったブイヨンやコンソメ、牛乳を入れているのでコクと旨味、そして優しい甘みがあって美味しい。
しかし、豆乳で作ったポタージュスープは動物性食品を一切使っていない。
流石は異世界。
食文化がキルシュブリューテ王国より遥かに進んでいると思わせる料理だ。
次に一同はフォークとナイフで食べ易い大きさに切った豆腐ステーキを口に運ぶ。
「お、奥様・・・これって、あの豆腐なのですよね?!」
「まるでお肉を食べているみたいです!」
こってりとコクのある味噌ソースをかけた事で淡泊な豆腐ステーキに味がついて食べ易くなっている。
メアリアとキャスリンにとって豆腐は挽き肉に混ぜるか、グラタンのソースになるか。
或いはティラミスのようにチーズに混ぜて使う事でディッシュにもデザートにもなる柔らかい食べ物という認識だ。
その豆腐を凍らせる事で肉のような食感になるという事実にメアリアとキャスリンは声を上げて驚く。
「バターか生クリームを混ぜた味噌というよりソースであればクリーミーで濃厚になるし、そのソースを豆腐にかける事でより満足感を得ると思うのだが、それ等を使った料理を出せばメティス王国と陛下、何より紗雪の故郷の料理を侮辱している事に繋がるし・・・・・・」
紗雪の話によると精進料理はカフェでも食べる事が出来るらしいが、動物性食品を口にする事が出来ない僧侶が美味しく食べられるようにと穀類や豆類等を工夫した料理だ。
先人の知恵によって生まれた料理に動物性食品を加えたら紗雪の故郷に対する侮辱になるとレイモンドは思っている。
「レイモンド殿、サユキ嬢」
「遊びに来たぞ」
相手の事を尊重する料理を作るのは難しいと考えているレイモンドの耳に二つの声が入って来た。
「クリストフ陛下、ソフィー王妃・・・」
カフェ・ユグドラシルにやって来たのは、クリストフとソフィーだった。
「二人共、何か悩んでいるようじゃな?」
「力になれるかどうか分からぬが、儂等に話をするだけでも気分が晴れるかも知れぬぞ?」
「実は・・・」
千年以上生きている二人であれば牛や山羊の乳を使わないバターや生クリームを知っているかもしれないと思ったレイモンドは、来年の春にメティス王国の国王夫妻がキルシュブリューテ王国を訪問し、その時に出す料理について悩んでいる事を打ち明ける。
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