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①兄の出奔。そして、学園生活-2-
しおりを挟む次の日の朝
『旦那様!奥様!お嬢様!』
シュタール様が・・・!
シュタール付きの侍女が一通の書置きを持って、一同が揃っている食堂へとやって来た。
侍女から受け取った書置きには、こう書いていた。
捜さないで下さい。男としての自信を失くしました
『シュタールが家出!?』
『何故、あの子が・・・』
離婚歴のある女性と一緒になりたいと言っていたが、それは人妻に憧れる若さからきた一時的な過ちとして許したつもりだった。
それがシュタールのプライドを傷つけたのだろうか?
考えても分からない。
だが、これだけは分かる。
シュタールがいなくなったという事は、フェルナンデス公爵家の後継者はミスリルに移った事を意味する。
フェルナンデス公爵家にとって不幸な事に、ミスリルは公爵令嬢として、夫を支える奥方としての教育は受けているが、当主としての心構えなど何一つ知らないのだ。
『ミスリル、今日からそなたが公爵家の後継者だ。クレッセント学園で学んで貰う』
『えっ?私が、ですか・・・?お父様の遠縁に当たる男子を婿養子に迎えるのではないのですか?』
『いや。ミスリルの婿って何の罰ゲームだよ!?と、いう感じで断られた』
『罰ゲームって・・・。お父様、殿方の目に私はゴリラ女として映っているのでしょうか?』
自分で自分の事を『ゴリラ女』と口にするのは構わないが、ミスリルとて年頃の女の子。他人に言われると傷ついてしまうものである。
『いや、ミスリルは自慢の娘だ』
身体能力に秀でているし、シュタールよりも後継者に相応しい器を持つミスリルが男であれば良かったのにと、アルシェントは何度思った事か──・・・。
アルシェントは溜め息を漏らす。
『分かりました。その代わり条件があります』
『何だ?』
ミスリルの主張はこうだ。
自分の婿となる男は即ちフェルナンデスに住む民の命と暮らしを、そして公爵家を護る事を意味する
故に心身共に自分より強い男でなければ受け入れないので、自分で選ばせて欲しい
『もしかしたら、私は生涯独身を貫くかも知れない。その時は親戚の子供を養子に迎えます。お父様、それでよろしいですわね?』
『・・・・・・分かった。私達はミスリルの人生を変えてしまったのだ。そなたの主張を認めよう』
『お父様、お母様・・・ありがとうございます』
全ては公爵家の為
覚悟を決めたミスリルは普段から身を護る為に所持している短剣を懐から取り出すと、幼い頃から伸ばしていた髪を何の躊躇いもなく切り落とす。
兄が出奔したせいで家を継ぐ事になってしまったミスリルは、クレッセント学園へと入園する羽目になるのだった。
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