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④男子校の放課後-1-
しおりを挟む「クレッセント学園にも怪談はある」
例えば・・・誰もいなくなった放課後の教室から呻き声が聞こえてくるだの、何かを囁いている声が聞こえてくるだの、一人で医務室で休んでいるとファイト一発をしているような気分になるだの、金縛りになるだの──・・・
ある生徒は好奇心で瞳を輝かせながら
小説の挿絵に描かれているような悪霊が自分に襲ってくるところを想像してしまったある生徒は怯えながら
寮の談話室に集っている学生の一部はシュトロームの話に耳を傾けていた。
「シュトローム殿下?まさか、それ等の真相を調べようと言いませんよね?」
「ヴィクトワール君!君は何て素晴らしい勘の持ち主なんだ!」
そう!僕はこれ等の怪奇現象が霊によるものなのか、誰かの悪戯によるものなのかを確かめたいんだ!!
シュトロームの宣言に、彼に付き合っていた生徒達は頭を抱える。
「でも、調べた結果、誰かの悪戯だったり、窓の隙間から入ってくる風が原因だったという可能性もあるのですよ?それでも構わないのですか?」
「ああ。それに『若い頃はこういう馬鹿な事をした』と語り合うのも、人生の醍醐味ではないのかな?」
ミスリルの言葉に、これも学生時代にしか味わえない体験なのだとシュトロームが返す。
「つまり、思い出作りの為という訳ですね?」
「そういう事」
という訳で、明日の放課後に調査をするからね
「「「「了解です・・・」」」」
シュトロームの一言で解散となり、怪談の調査をする事になってしまった生徒達は自分の部屋へと戻る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ミスリル、シュトローム殿下ってああいう方なのか?」
「そうね。殿下は幼い頃から好奇心が旺盛で、自分が興味を持った事に関しては調べるわね」
逆に自分が興味ないものに関しては、とことん歯牙にもかけないわ
幼い頃になるとはいえ、少しだけ付き合いがありシュトロームがどういう人物であるのかを覚えていたからなのか、ヴィクトワールの問いにミスリルが答える。
「ねぇ・・・シュトローム殿下が言っていた心霊現象が霊によるものだとしたら、ヴィクトワールはどうする?」
「そういう事は専門家に任せる話であって、俺達素人は何もしないのが一番だろうな」
「そ、そうよね!」
(・・・?)
「ミスリル!後ろに白い影が!」
ミスリルの声が僅かに震えている事に気が付いたヴィクトワールは、まさかと思いながらも、彼女に向けて幽霊を思い起こさせる言葉を言い放ってみた。
いやっ!
「ヴィクトワール!幽霊を追い払って!」
自分のベッドで横になっていたはずのミスリルは勢いよく起き上がると、涙目で悲鳴を上げながらヴィクトワールがいるベッドに素早く潜り込み彼に縋りついてきた。やはりと言うべきか、彼女は心霊の類が苦手であるらしい。
(・・・あ゛っ)
見上げると、ヴィクトワールはニコニコと笑みを浮かべていた。
騙された事に気が付いたミスリルは自分のベッドに戻ろうとするのだが、そうは問屋が卸さないと言わんばかりにヴィクトワールは彼女を自分の腕に閉じ込める。
「ミスリル・・・」
「んっ・・・」
腰に来る低い声で名前を耳元で囁かれながら、首筋に舌を這わされているミスリルが甘さを含んだ声を上げる。
「ヴィクト、ワール・・・その、明日は、殿下の、だから・・・」
「分かっている。ミスリルの身体に負担をかけない程度で抑えるし、見えないところに跡を付ける」
(ち、違う!)
明日はシュトローム達と一緒に心霊現象の謎を追うのだから止めて欲しいという意味で言ったのだが、同じアブソリュート人であるはずのヴィクトワールにはアブソリュート語が通じなかったらしい。
気が付けば一糸纏わぬ姿にされてしまった事で諦めの境地に至ったのも理由の一つだが、何のかんの言っている自分も目の前に居る男が欲しかったのだ。
「手加減、してね・・・」
「・・・・・・善処します?」
(そこって疑問系で答えるところなの!?)
ミスリルに求められたからなのか、笑みを浮かべたヴィクトワールは自分の中にある飢えと渇きを満たす事が出来る女を貪る──・・・。
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