元英雄のやり直し

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1章 途切れた道、踏み出す道

4話 昨日のあの子

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食事会が無事?に終わった。
かなり長い時間、話を聞いていたが、ツル皇女に話が回ってくることはなかった。
片付けを始めるメイド達を見ながら、この後のことを考える。
今後ツル皇女の専属騎士として働く。
嫌な予感がする。食事会での様子、護衛の数。ツル皇女に何かあるのはほぼ確実。何に巻き込まれるのだろうか。

数分後、片付けが終わり、入ってきた順に退出していく。帰りは護衛も部屋までついていくようだ。
「カイン、下ろして。」
「承知しました。」
ツル皇女を椅子から下ろし、追い抜かないようゆっくり歩く。
心なしか部屋に入ってきた時よりも皇女の足取りが軽い。
にしても、リタリー陛下は今回の食事会で何がしたかったのだろうか。
「ツル様、お疲れ様です。」
「ライア!」
悩む俺を置いて、部屋の外に駆け出す皇女。その先には綺麗な白髪のメイドが立っていた。
「初めまして。私はツル様の専属メイドをしております。ライアと申します。」
にこやかに挨拶をしたライアさんについドキッとする。
「今日から騎士として雇われましたカインです。よろしくお願いします。」
彼女の顔を近くで見ると、少しずつ記憶が蘇って・・・
あ、思い出した。
「あ、昨日酒場で、」
「人違いではないかと。私は昨日この城から出ていません。」
先ほどの笑顔からは一転、ものすごい真顔で否定するライアさん。
「それは大変失礼しました。」
「大丈夫ですよ。ただ、」
危険を察知しすぐに謝ったが、遅かった。
「一ついいですか。」
ライアさんが俺の甲冑を掴み、グッと顔に近づける。
「女性が助けを求めたら、すぐに助けるべきだと思うんですけど、どうですか。」
「そ、その通りだと思います。」
年下の少女とはいえ、先ほどとは違う意味でドキッとしてしまう。
なんというか心臓に悪い。
ライアさんは俺の言葉を聞いてすぐ手を離した。
「失礼しました。これからお願いします。」
なんともいえない空気の中、俺の自己紹介は終わった。

なぜか俺を見上げながら歩くツル皇女。居心地が悪い。
すると何かを感じ取ったのか、前にいたライアさんが、急に振り返った。
「カイン様、まだかなり歩くのでツル様を抱っこしてあげてください。」
会ったばかりの人に抱っこされるとか流石に嫌なんじゃ。
「いや、業務に支障が。」
普通に断ろうと思ったが俺は見てしまった。
ツル皇女が両手を俺の方に伸ばしかけて、戻す様子を。
抱っこして欲しかったのか、シュンとしている。
「・・・支障ありません。ツル様が嫌でなければ部屋まで抱えて行きましょう。」
「じゃあカイン、お願い!」
俺は失礼の無いよう、慎重に抱き上げる。
甲冑抱っこしにくいな。
めちゃくちゃ滑るためかツル皇女はすごい力でしがみついてくる。
「ツル様、そんなに力を込めなくても、落としませんよ。」
「あ、痛かった?」
9歳の皇女に本気で心配され、首を撫でられた。
それを見たライアさんはクスクスと笑いながら先に進み始める。
「・・・・・。」
俺はなんともいえない気持ちになりながら、ついていった。

しばらく歩いて、ツル皇女の部屋に到着した。
抱えていたツル皇女は食事会で疲れていたのか、スヤスヤと眠っていた。
首元を掴んだ小さな手は、眠っても離れなかった。
「では、入ってください。」
「いや、貴いお方の部屋に入るのはいかがなものかと。」
そういうとライアさんの表情が驚きに変わる。
「そんなこと気にしてたんですか。困っている女性は助けないくせに?」
うっ。耳と心が痛い。
「冗談ですよ。これからについて話さないといけないことがあります。入ってください。」
「・・・では、失礼します。」
俺は渋々部屋に入ることにした。

部屋の中は意外と狭く、体感としては俺の泊まっていた部屋の2倍くらいだった。
ただ、家具が多いので、実際はもっと広いだろう。
「カイン様、ツル様はここのベッドへ。」
「わかりました。・・・あれ?」
言われた通り、ベットに寝かせようと思ったのだがツル皇女の手が離れない。
「あの、どうしたらいいですか。」
「起きなければいいです。そのままお聞きください。」
俺は諦めて、抱き抱えたまま話を聞くことにした。
「カイン様には5日後までに、あなたを含めた5人の騎士を集めてもらいます。」
「なるほどわかり、えっ?」
突然の無茶振りに俺は、思わず返事をしてしまった。
「ありがとうございます。ではまた5日後に。」
ライアさんは見事な手つきでツル皇女を回収し流れ作業のように、俺を部屋から追い出した。
「・・・まじかよ。」
誰もいない廊下に、俺の声だけが静かに響いた。
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