元英雄、無職に堕ちて騎士に成る

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1章 波乱の五日間

5話 バドルの状況解説

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部屋から追い出され、途方に暮れているとどこからともなくロイルさんが現れ、
「お疲れ様です。先ほどの部屋で着替えたらお帰りください。」
と言うとどこかに消えた。
正直気味が悪かった。
出るついでにミタマとアマトに会おうとしたが、どこにも見当たらない。
挨拶くらいしたかったのだが、忙しいのだろうか。
俺は諦めて宿の方向へ歩き出した。

宿に向かう途中、街で出店に寄った。
まだお昼を少し過ぎたくらいだったので、人が多く、並ぶことになった。
こうして活気あふれる街にいると本当に戦争が終わったんだと感じる。
平和になってよかった、そう思うと同時になぜか少し寂しさを憶えた。

日が沈みかける頃、ようやく泊まっていた宿に辿り着いた。
「よぉ、お疲れ。」
なぜか宿の前に疲れた顔のバドルが立っていた。
「遅かったな。」
「街をうろうろしてたらこんな時間になった。それより、何でいるんだ。」
「俺の助けがいると思ってな。わざわざ来てやったんだ。」
「助け?」
「皇女様の護衛、必要だろ?」
「は、何でそれを、」
途中まで言って、俺は気がついた。
「そういやお前、昨日の酒屋で俺が王様に直々にって。もしかして。」
てっきりいつもの誇張かと思ってたがそうじゃなかったらしい。
バドルはニヤリと笑う。昨日のオニトよりも汚く見える。
「ここで話すのはちょっとな。とりあえず部屋に入ろうぜ。」
バドルはそういうとさっさと中に入っていった。
今日は早く寝たいと思っていたが、そうは行かなそうだ。
重い足を何とか動かし、部屋に向かった。

「まずは、カイン。どこまで状況を把握してる。」
部屋に入るなり、真剣な顔をして質問するバドル。何やら鬼気迫る感じだ。
「どこまでって、俺がツル様に雇われた護衛になったくらい。仕事の説明とかも一切なかった。」
「だろうな。あの御方が説明するわけないか。」
「どういうことだ。」
「お前の役割は護衛。それはあっている。ただ、雇ったのはツル様じゃない。現皇帝のリタリー陛下だ。」
「・・・・。」
「まぁ納得いかないよな。」
俺の反応を見て、しきりに頷くバドル。こいつはツル様が置かれた状況を詳しく知っているらしい。
「皇女様は、かなり危険な立場にいる。暗殺を企む奴がいるくらいにな。」
「暗殺?そんなの捕まえればいいじゃないか。」
「そうもいかないんだよ。企んでるのが3人いる側室の誰か、だからな。」
街で聞いたことがある。
今は亡き正妻の唯一の子、ツル皇女を嫌っている側室がいて、いざこざがあるとかないとか。
ただの噂だと思っていたが、今日見た様子とこいつの話を聞く限り本当のようだ。
「事情はわかったがお前、今は軍部の高官だろ。護衛くらい何とかならないのか?」
「いや用意していたんだが、一ヶ月ほど前、まとめて始末された。だから急遽、何やかんや頼りになるお前に任せることになった。」
なるほど。突然お達しが来たのはそのためか。
「ツル皇女は来年、皇族の決まりで帝都を出る。今は陛下に守られているから大丈夫だが帝都を出たら、そうはいかない。ずっと命の危険に晒される。当然カインも巻き込まれる。でも頼む。ツル様を守ってくれ。」
頭を床に押し付けるバドル。こいつが頭を下げるなんて、よほど思い入れがあるのか。
・・・昔なら面倒事は嫌だ、と断っていた。しかし、
「わかった。俺に任せておけ。昨日言われたばっかりだしな。」
せっかく頼ってくれたんだ。ある程度の危険、引き受けてやろう。
「ありがとう。すまんがこの後も用事があるんだ。また来る。」
「あぁ、またな。」

バドルが出て行った後、俺は寝支度を済ませ、さっさとベットに入る。
暗殺者が俺のところに来ないことを祈り、目を閉じた。
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