8 / 18
1章 波乱の五日間
7話 解決と次の刺客
しおりを挟む
クランムの荷物を探っていると、気になるものが出てきた。
「これ『ヒガン』の徽章じゃないか。」
「知っているのか。」
「昔、仕事をしたことがある。こいつらはまだ若手だ。もっと強い奴らがいたはず。」
その言葉にクランムは頭を抱える。それもそうだろう。
先ほどの2人で苦戦していたのだ。
ここが突破されることはないだろうが、また刺客が送られてくるのはまずい。
「すぐ騎士団に連絡しよう。護衛をつける。」
「護衛騎士に護衛をつけるのは駄目だろう。」
「しかし、」
「手に負えないって言ったけど、鍛え直せばなんとかなる。」
問題は鍛え終わるまで相手は待ってくれないということだけど。
それがわかっているのだろう。クランムは首を横に振った。
「お前はツル様の護衛なのだ。ここで死んでもらっては困る。」
「わかった。でも護衛はこっちで用意する。じゃあな。」
何か言われると面倒なので返事も聞かず急いで立ち去った。
戻ると、かなりの騒ぎになっており人混みができていた。
宿は治安騎士によって封鎖されていて、なぜかバドルの姿もあった。
「お、生きてたか。こいつが聞きたいことがあるらしい。」
こちらに気づいたバドルは隣の騎士を指差す。騎士にしてはかなり華奢だな。見習いかな。
「あぁその前に、殺された護衛の実力について教えてくれないか。簡単にでいい。」
「実力ねぇ。全員でかかれば全盛期のお前を無傷で捕まえられるくらい、かな。」
「なるほど。で、聞きたいことって何ですか。」
俺は隣にいた騎士に顔を向ける。
「犯人について聞きたかったんですがもう確保したそうなので、大丈夫です。」
騎士は深々とお辞儀をすると他の騎士の元へ走っていった。
「さっきの騎士、だいぶ小さかったな。」
「あの騎士は見習いなんだよ。さっき、駐屯所が襲撃されて人手が足りなくなってるらしい。」
街を走っている時、騎士がいなかったのはそのせいか。
俺の襲撃と関係していそうだが、それくらいバドルも気づいているだろう。
「頼みがあるんだが。」
「なんだ。」
「俺に護衛をつけてくれないか。ある程度戦える奴。」
バドルは少し悩んで、大きく頷いた。
「わかった。丁度いい奴らがいる。明日の朝、城の門の前に向かわせとく。」
「ありがとう。」
「気にすんな。じゃあまた。」
バドルはそういうと人混みの中に消えていった。
~とある地下施設~
ここの暗い雰囲気にはいつも憂鬱にさせられる。
そう思いながら廊下を進むのは『皇城』の西門長クランム・グットン。
クランムは長い廊下の最奥の壁の前まで来ると4度ノックをした。
すると壁に切り込みが生じ、ゆっくりと開く。
壁の先には近未来的な器具が並ぶが、クランムはどれほどすごいものかはわからない。
「遅かったですね。何かありましたか。」
そんな部屋の奥に座っていたのは、皇帝の第二子、長女ヒューマン・デラート。
昼間とは違い、その顔に表情はなく、見ているものになんとも言えない違和感を与える。
「任務に失敗した『ヒガン』の処理に時間がかかりまして。申し訳ありません。」
「失敗したのね。まあ英雄くらいなら殺す方法はいくらでもあるし、問題はないわ。」
失敗、と言う言葉に特に気にする様子もなくホッとするクランム。
しかし気を抜くのはまだ早かった。
「でも他にも何かあったわね。隠し事は嫌いよ。」
デラートには、というよりは皇族には、相手の感情を読む力があった。
その力によって帝国の支配を今日まで保ってきた。
ある一定の貴族や、クランムはその力について知っていたが、それでも報告を見送りたかったことがあった。
しかし、聞かれたからには答えなければならない。
「実は、実験体として確保していた2人が軍部の保守派に取られました。」
「は、嘘でしょ。まぁ、なんとかなるわ。どこの部隊?」
「それがツル皇女の護衛になるそうで。」
先ほどとは違い、その報告を受けたデラートに余裕がなくなった。
「あの2人がいないと計画が進まない・・・。わかった。クランム、お母様に、そうね『モモノハナ』送るように言っておいて頂戴。」
クランムはその言葉に耳を疑う。
「も、『モモノハナ』ですか。彼らは制御できません。前のように私に任せてくだされば、」
「あなたは切り札。今は動かす時じゃない。わかったら早く行って。」
クランムには頷くしか選択肢はない。
こうしてカインに次なる刺客が送り込まれることになった。
「これ『ヒガン』の徽章じゃないか。」
「知っているのか。」
「昔、仕事をしたことがある。こいつらはまだ若手だ。もっと強い奴らがいたはず。」
その言葉にクランムは頭を抱える。それもそうだろう。
先ほどの2人で苦戦していたのだ。
ここが突破されることはないだろうが、また刺客が送られてくるのはまずい。
「すぐ騎士団に連絡しよう。護衛をつける。」
「護衛騎士に護衛をつけるのは駄目だろう。」
「しかし、」
「手に負えないって言ったけど、鍛え直せばなんとかなる。」
問題は鍛え終わるまで相手は待ってくれないということだけど。
それがわかっているのだろう。クランムは首を横に振った。
「お前はツル様の護衛なのだ。ここで死んでもらっては困る。」
「わかった。でも護衛はこっちで用意する。じゃあな。」
何か言われると面倒なので返事も聞かず急いで立ち去った。
戻ると、かなりの騒ぎになっており人混みができていた。
宿は治安騎士によって封鎖されていて、なぜかバドルの姿もあった。
「お、生きてたか。こいつが聞きたいことがあるらしい。」
こちらに気づいたバドルは隣の騎士を指差す。騎士にしてはかなり華奢だな。見習いかな。
「あぁその前に、殺された護衛の実力について教えてくれないか。簡単にでいい。」
「実力ねぇ。全員でかかれば全盛期のお前を無傷で捕まえられるくらい、かな。」
「なるほど。で、聞きたいことって何ですか。」
俺は隣にいた騎士に顔を向ける。
「犯人について聞きたかったんですがもう確保したそうなので、大丈夫です。」
騎士は深々とお辞儀をすると他の騎士の元へ走っていった。
「さっきの騎士、だいぶ小さかったな。」
「あの騎士は見習いなんだよ。さっき、駐屯所が襲撃されて人手が足りなくなってるらしい。」
街を走っている時、騎士がいなかったのはそのせいか。
俺の襲撃と関係していそうだが、それくらいバドルも気づいているだろう。
「頼みがあるんだが。」
「なんだ。」
「俺に護衛をつけてくれないか。ある程度戦える奴。」
バドルは少し悩んで、大きく頷いた。
「わかった。丁度いい奴らがいる。明日の朝、城の門の前に向かわせとく。」
「ありがとう。」
「気にすんな。じゃあまた。」
バドルはそういうと人混みの中に消えていった。
~とある地下施設~
ここの暗い雰囲気にはいつも憂鬱にさせられる。
そう思いながら廊下を進むのは『皇城』の西門長クランム・グットン。
クランムは長い廊下の最奥の壁の前まで来ると4度ノックをした。
すると壁に切り込みが生じ、ゆっくりと開く。
壁の先には近未来的な器具が並ぶが、クランムはどれほどすごいものかはわからない。
「遅かったですね。何かありましたか。」
そんな部屋の奥に座っていたのは、皇帝の第二子、長女ヒューマン・デラート。
昼間とは違い、その顔に表情はなく、見ているものになんとも言えない違和感を与える。
「任務に失敗した『ヒガン』の処理に時間がかかりまして。申し訳ありません。」
「失敗したのね。まあ英雄くらいなら殺す方法はいくらでもあるし、問題はないわ。」
失敗、と言う言葉に特に気にする様子もなくホッとするクランム。
しかし気を抜くのはまだ早かった。
「でも他にも何かあったわね。隠し事は嫌いよ。」
デラートには、というよりは皇族には、相手の感情を読む力があった。
その力によって帝国の支配を今日まで保ってきた。
ある一定の貴族や、クランムはその力について知っていたが、それでも報告を見送りたかったことがあった。
しかし、聞かれたからには答えなければならない。
「実は、実験体として確保していた2人が軍部の保守派に取られました。」
「は、嘘でしょ。まぁ、なんとかなるわ。どこの部隊?」
「それがツル皇女の護衛になるそうで。」
先ほどとは違い、その報告を受けたデラートに余裕がなくなった。
「あの2人がいないと計画が進まない・・・。わかった。クランム、お母様に、そうね『モモノハナ』送るように言っておいて頂戴。」
クランムはその言葉に耳を疑う。
「も、『モモノハナ』ですか。彼らは制御できません。前のように私に任せてくだされば、」
「あなたは切り札。今は動かす時じゃない。わかったら早く行って。」
クランムには頷くしか選択肢はない。
こうしてカインに次なる刺客が送り込まれることになった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる