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2章

5話

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「此処で着替えろって?」
差し出されたのは白いワンピースみたいな服だった。
シャツを長くしたような、水織の知識だとアラブの王族が着ているようなもののイメージだったが、こんな場所で着替えたくはないし、周囲を取り巻く人間の好奇の視線が気になる。
まさか、最近流行りの異世界転生ものなのだろうか?と、ありえない考えが頭の端をよぎるがまさか自分がにそんな災難が降りかかるなどと信じたくない。
「ミオリ?」
「何だ」
「お前は、この国の人間じゃないのか?」
「みたいだな」
「そうか、なら少し話がしたい、俺の部屋に来てくれ」
差し出された手を見てから、苦笑した。
「それは構わないが、この格好で歩くわけにもいかないし着替えもできない……」
流石にこの大人数の前で脱ぐのは遠慮したい。
「ならば、連れていってやろう」
いきなり距離を詰めて来たカミーユの腕に掬い上げられて横抱きにされた。所謂お姫様抱っこなのだが。
「うわっ!ちょっ!!」
お姫様抱っこなんて、したこともされたこともない。なんて思いながら視界の端に見えた足は、ほっそりとした白い女性のような足だった。
自分の足だろうかと考えながら動かしてみると、膝から下は自分の思った通りに動くから、やはりこれは自分の足なのだろう。
じゃあ、身体は女性のものかと考えたがシャツの下は恐らく平らだろう。
恐る恐るシャツの上から触れると、思っていたように丸い膨らみは無く。かといってみっちりとした筋肉があるわけでも無かった。
やっぱりこの身体は俺の身体じゃないと確信する。
そんなことをぐるぐると考えていると、カタンと音がして俺はそっちを向くとさっきまで大勢いた人が全員その場に平伏していた。
何で?
「カミーユ下ろせよ……恥ずかしいから」
「誰か掛けるものを」
良く通る声で言い放つ。
その声に凄く良い声だなぁと思ってしまった。そんなことを考えている場合じゃないのに。
声を掛けると直ぐにひとりの若い男性が持ってきた薄い布をふわりと胸から下へと掛けてくれた。
「ありがとう」
俺がお礼を言うと、若い男性は真っ赤になりその場に平伏する。
何で?2回目の何での答えもあるわけはなく。
「ちっ」
カミーユの舌打ちに意味がわからなくじろりと見上げると、それを気にしないのかそのまま何処かへと歩き出す。
着替えるんじゃなくてもこの布を取り敢えずスカートみたく巻き付けて歩けるような気がしたが、そんな意見はできなかった。
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