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1章
141話
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「おはようございますお母様」
優雅な仕草で頭を下げたミリシャ。
「おはよう、良く眠れた?」
「はい」
にこにこと笑うミリシャは大きくはなったが、まだまだ。
表情は大人びたものを見せるときもあるが、まだ子供だ。
ただ、女の子の成長は早いと聞くから……。
綺麗に侍女に髪を結い上げてもらい、動きやすい服装に片手には小さなバスケット。
中には竜神への焼き菓子が入っている。
「ミリシャ、今朝はお母様も一緒に祈ろうと思って。良い?」
「もちろんです」
静かに屋上にのぼると、ちょうど朝日がのぼり始める頃だった。
雨の気配を感じると言うのは、竜神が近くに居るということ。
ミリシャが力を抜いてバスケットを祭壇の前に置くと、ゆらゆらとバスケットが揺れた気がした。
サンダルを脱いだミリシャが手首に付けたバングルを叩くと、シャリンと高い鈴の音がした。
俺が使った神具は、今のミリシャには重いとカイルがミリシャ用に作らせたもの。
手首に填まるそれは、ミリシャが舞う時には邪魔にならないものだ。
ミリシャはそれが気に入って頻繁にバングルを嵌めているため、ミリシャが歩くときにはチリンチリンと可愛らしい音がする。
だから、鈴の乙女と呼ばれることもある。
「テト様、こちらは」
アスミタがそっと俺の神具を差し出してくるが、それはいらないと手で止めた。
折角のミリシャの可愛らしい鈴の音を消してしまうといけないと。
「お母様、お母様の鈴の音聞きたいですから、一緒に」
可愛らしい娘のおねだりについ負けてしまうと、俺は神具を手に取った。
「ミリシャ、何を歌おうか」
「始まりの詩を」
ミリシャの言葉に頷いてから視線を合わせてゆっくりと手を動かす。
鈴の音が響き、言葉を旋律に乗せていく。
聞こえるのはミリシャの声と鈴の音だけ。
音が消えると俺はゆっくりと息を吐き出す。
それに合わせて現れたのは双子竜神。
『久方ぶりじゃの、テト』
『たまには二人でも良いな』
猫程の大きさだった竜神が、今は随分と大きくなりミリシャの背丈より大きくなっている。
それが、ポンポンと人の姿になる。
するとその容姿に驚いた。
カイル程大きくはないが、俺よりも背丈が大きく、肩口で切り揃えられていた髪は背中の中程まである。
大きかった瞳は切れ長で涼しげ。
「久し振りだね、ミリシャ焼き菓子を」
「はい、お母様」
ミリシャは双子にひとつずつ焼き菓子を手渡した。
「今は二人が濡れるゆえ、日が昇りきったら雨を降らせるからな?」
「ありがとうお願いします」
焼き菓子をぱくりと口にする姿は少し前の姿と重なるのに、とても不思議な感じがした。
優雅な仕草で頭を下げたミリシャ。
「おはよう、良く眠れた?」
「はい」
にこにこと笑うミリシャは大きくはなったが、まだまだ。
表情は大人びたものを見せるときもあるが、まだ子供だ。
ただ、女の子の成長は早いと聞くから……。
綺麗に侍女に髪を結い上げてもらい、動きやすい服装に片手には小さなバスケット。
中には竜神への焼き菓子が入っている。
「ミリシャ、今朝はお母様も一緒に祈ろうと思って。良い?」
「もちろんです」
静かに屋上にのぼると、ちょうど朝日がのぼり始める頃だった。
雨の気配を感じると言うのは、竜神が近くに居るということ。
ミリシャが力を抜いてバスケットを祭壇の前に置くと、ゆらゆらとバスケットが揺れた気がした。
サンダルを脱いだミリシャが手首に付けたバングルを叩くと、シャリンと高い鈴の音がした。
俺が使った神具は、今のミリシャには重いとカイルがミリシャ用に作らせたもの。
手首に填まるそれは、ミリシャが舞う時には邪魔にならないものだ。
ミリシャはそれが気に入って頻繁にバングルを嵌めているため、ミリシャが歩くときにはチリンチリンと可愛らしい音がする。
だから、鈴の乙女と呼ばれることもある。
「テト様、こちらは」
アスミタがそっと俺の神具を差し出してくるが、それはいらないと手で止めた。
折角のミリシャの可愛らしい鈴の音を消してしまうといけないと。
「お母様、お母様の鈴の音聞きたいですから、一緒に」
可愛らしい娘のおねだりについ負けてしまうと、俺は神具を手に取った。
「ミリシャ、何を歌おうか」
「始まりの詩を」
ミリシャの言葉に頷いてから視線を合わせてゆっくりと手を動かす。
鈴の音が響き、言葉を旋律に乗せていく。
聞こえるのはミリシャの声と鈴の音だけ。
音が消えると俺はゆっくりと息を吐き出す。
それに合わせて現れたのは双子竜神。
『久方ぶりじゃの、テト』
『たまには二人でも良いな』
猫程の大きさだった竜神が、今は随分と大きくなりミリシャの背丈より大きくなっている。
それが、ポンポンと人の姿になる。
するとその容姿に驚いた。
カイル程大きくはないが、俺よりも背丈が大きく、肩口で切り揃えられていた髪は背中の中程まである。
大きかった瞳は切れ長で涼しげ。
「久し振りだね、ミリシャ焼き菓子を」
「はい、お母様」
ミリシャは双子にひとつずつ焼き菓子を手渡した。
「今は二人が濡れるゆえ、日が昇りきったら雨を降らせるからな?」
「ありがとうお願いします」
焼き菓子をぱくりと口にする姿は少し前の姿と重なるのに、とても不思議な感じがした。
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