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本編
C4 けがらわしい過去
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※児童への性暴力の描写があります。苦手な方はご自衛ください<(_ _)>
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死にたくて死にたくてたまらなかったけれども、自殺はできなかった。
日曜日ごとに通う教会で、自殺はとても罪深いもので永遠に魂が救われなくなると、繰り返し教えられて育ったからだ。
ある時ふと子供向けの冒険物語を読んでいて気が付いた。そうだ、騎士になればいい。
騎士ならば戦争で、要人警護で、都市の治安維持や都市周辺の害獣退治で、殉職する機会がとても多い。殉職ならば自殺にはならない。
だから僕は騎士になりたいと父上にねだった。初めのうちは父上たちもそんな危険な道を選ばなくても、と渋った。
それでも、年頃の少年らしさを装って騎士の活躍する冒険物語の数々を挙げ、自分もあの物語の主人公たちのような強く気高く格好良い騎士になりたいのだと熱心に語ると、渋々ながらも承諾してくれた。
父上は「騎士学校に入学できる年齢まで家にいれば良い」としきりに言っていたけれども、僕は一日も早く修行がしたいと駄々をこねた。
ちょうど見習いになるのに良い年頃だったため、すぐに王立騎士団に見習いとして入団することになった。父上は伯爵家にゆかりの深い家の私設騎士団に入れたかったらしいが、僕がどうしても王家直属の騎士団が良いと言って頑として譲らなかったのだ。
説得のために騎士の栄光やら王家への忠誠を引き合いに出したが、本音は家とできるだけ関りのない所で生きたいだけだった。
弟子入りして二年ほどは充実した日々を送っていた。
見習いから叩き上げで騎士団に入る高位貴族の子息は珍しく、目をつけられて絡まれる事も多かったが、平民出身の先輩も貴族出身の先輩同様に敬い、素直に指導に従う僕の事を可愛がってくれる人の方が多く、酷いイジメに遭う事もなかった。
次の叙任式の際には従騎士となるとの辞令も下った。師匠は貴重な身体操作魔法を使う人で、まだ見習いの僕にも手取り足取り丁寧に指導をしてくれた。
おかげで僕はすぐ簡単な身体強化魔法と治癒魔法を使えるようになった。扱いが難しいという槍斧の使い方も教えてもらった。
叙任式まであとわずかに迫った頃、同じ師匠に仕える先輩従騎士とその取り巻きの見習いたちに呼び出された。
「いつもヘラヘラして気持ち悪い」
「師匠に媚を売って特別扱いされて、貴重な身体強化魔法や治癒魔法も教えてもらって卑怯だ」
「見習いのくせに槍斧を持つなんて生意気だ」
みな口々に僕を責め立てた。
僕は先輩方もとうにそれらの指導を受けているものだと思っていたけれども、実は受けていたのは僕だけで、先輩方は武術と魔術のごく基礎しか学んでいなかった。
そして「誰にでも愛想を振りまきすり寄る売女に相応しい教育を施してやる」と言われ、全員に犯された。
全身の穴と言う穴に性器や異物を突っ込まれ、あちこち裂けて大量に出血してもお構いなしだ。あまりの激痛に泣き叫んだが誰も助けてくれなかった。何度も何度も失神したが、彼らは満足することなく朝まで入れ代わり立ち代わりさんざんに僕を犯した。
もはや立ち上がるどころか指一本たりとも動かせないほど消耗し、ぐったりとした僕は全裸のまま放置され、そのまま失神した。
発見された時にはいくつかの臓器が傷ついてかなり危険な状態だったらしい。意識が戻ったのは十日以上経ってからだった。生命をとりとめたのは、師匠が高度な治癒魔法を何度も使ってくれたからだという。
一時は腹膜炎を起こして高熱に苦しめられたらしいが、ひどい後遺症もなく、数か月のリハビリを経て僕は元通りの健康な身体を取り戻した。
精神の方は元々ひび割れていたので今更どうということもない。
僕を襲った者は一人残らず除籍となり、貴族の子息に暴行を加えたとして厳罰を受けた。どのような処罰かは教えてもらえなかったが、少なくとも主犯の元従騎士は処刑されたらしい。
師匠も弟子の監督不行き届きとのことで王立騎士団を退団し、地方の私設騎士団に入ったそうだ。その後、彼がどうなったかは知らない。誰に訊いてもわからなかった。
僕のせいで師匠の人生をめちゃくちゃにしてしまったと思うと申し訳なくて、何とか謝罪したかった。しかし、いくら父上や兄上たちにそう言っても手紙を出す事すら叶わなかった。
僕自身も意識不明の間に騎士団を退団しており、そのまま実家に帰された。
意識が戻るまでは後遺症が残るかどうかもわからなかったし、全裸で血と精液にまみれて失神している姿を多数の団員に見られたのだ。そのまま居座られてもみなどう接したら良いかわからないだろう。
もはや騎士団内に僕の居場所なんてどこにもなかった。
従騎士叙任間近ではあったが、騎士の道は諦めるしかなかった。
実家の中でも同じことだ。家族も使用人も、僕に対して腫れものを扱うように接した。
さすがにあれだけのことがあった後だ。いくら明るく振舞おうとしても無理がある。
兄たちは学園の寮に入り、休暇になっても帰ってこなかった。父も仕事に没頭し、家には僕と使用人たちだけが残された。
また僕のせいで家族がバラバラになってしまったのだ。
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死にたくて死にたくてたまらなかったけれども、自殺はできなかった。
日曜日ごとに通う教会で、自殺はとても罪深いもので永遠に魂が救われなくなると、繰り返し教えられて育ったからだ。
ある時ふと子供向けの冒険物語を読んでいて気が付いた。そうだ、騎士になればいい。
騎士ならば戦争で、要人警護で、都市の治安維持や都市周辺の害獣退治で、殉職する機会がとても多い。殉職ならば自殺にはならない。
だから僕は騎士になりたいと父上にねだった。初めのうちは父上たちもそんな危険な道を選ばなくても、と渋った。
それでも、年頃の少年らしさを装って騎士の活躍する冒険物語の数々を挙げ、自分もあの物語の主人公たちのような強く気高く格好良い騎士になりたいのだと熱心に語ると、渋々ながらも承諾してくれた。
父上は「騎士学校に入学できる年齢まで家にいれば良い」としきりに言っていたけれども、僕は一日も早く修行がしたいと駄々をこねた。
ちょうど見習いになるのに良い年頃だったため、すぐに王立騎士団に見習いとして入団することになった。父上は伯爵家にゆかりの深い家の私設騎士団に入れたかったらしいが、僕がどうしても王家直属の騎士団が良いと言って頑として譲らなかったのだ。
説得のために騎士の栄光やら王家への忠誠を引き合いに出したが、本音は家とできるだけ関りのない所で生きたいだけだった。
弟子入りして二年ほどは充実した日々を送っていた。
見習いから叩き上げで騎士団に入る高位貴族の子息は珍しく、目をつけられて絡まれる事も多かったが、平民出身の先輩も貴族出身の先輩同様に敬い、素直に指導に従う僕の事を可愛がってくれる人の方が多く、酷いイジメに遭う事もなかった。
次の叙任式の際には従騎士となるとの辞令も下った。師匠は貴重な身体操作魔法を使う人で、まだ見習いの僕にも手取り足取り丁寧に指導をしてくれた。
おかげで僕はすぐ簡単な身体強化魔法と治癒魔法を使えるようになった。扱いが難しいという槍斧の使い方も教えてもらった。
叙任式まであとわずかに迫った頃、同じ師匠に仕える先輩従騎士とその取り巻きの見習いたちに呼び出された。
「いつもヘラヘラして気持ち悪い」
「師匠に媚を売って特別扱いされて、貴重な身体強化魔法や治癒魔法も教えてもらって卑怯だ」
「見習いのくせに槍斧を持つなんて生意気だ」
みな口々に僕を責め立てた。
僕は先輩方もとうにそれらの指導を受けているものだと思っていたけれども、実は受けていたのは僕だけで、先輩方は武術と魔術のごく基礎しか学んでいなかった。
そして「誰にでも愛想を振りまきすり寄る売女に相応しい教育を施してやる」と言われ、全員に犯された。
全身の穴と言う穴に性器や異物を突っ込まれ、あちこち裂けて大量に出血してもお構いなしだ。あまりの激痛に泣き叫んだが誰も助けてくれなかった。何度も何度も失神したが、彼らは満足することなく朝まで入れ代わり立ち代わりさんざんに僕を犯した。
もはや立ち上がるどころか指一本たりとも動かせないほど消耗し、ぐったりとした僕は全裸のまま放置され、そのまま失神した。
発見された時にはいくつかの臓器が傷ついてかなり危険な状態だったらしい。意識が戻ったのは十日以上経ってからだった。生命をとりとめたのは、師匠が高度な治癒魔法を何度も使ってくれたからだという。
一時は腹膜炎を起こして高熱に苦しめられたらしいが、ひどい後遺症もなく、数か月のリハビリを経て僕は元通りの健康な身体を取り戻した。
精神の方は元々ひび割れていたので今更どうということもない。
僕を襲った者は一人残らず除籍となり、貴族の子息に暴行を加えたとして厳罰を受けた。どのような処罰かは教えてもらえなかったが、少なくとも主犯の元従騎士は処刑されたらしい。
師匠も弟子の監督不行き届きとのことで王立騎士団を退団し、地方の私設騎士団に入ったそうだ。その後、彼がどうなったかは知らない。誰に訊いてもわからなかった。
僕のせいで師匠の人生をめちゃくちゃにしてしまったと思うと申し訳なくて、何とか謝罪したかった。しかし、いくら父上や兄上たちにそう言っても手紙を出す事すら叶わなかった。
僕自身も意識不明の間に騎士団を退団しており、そのまま実家に帰された。
意識が戻るまでは後遺症が残るかどうかもわからなかったし、全裸で血と精液にまみれて失神している姿を多数の団員に見られたのだ。そのまま居座られてもみなどう接したら良いかわからないだろう。
もはや騎士団内に僕の居場所なんてどこにもなかった。
従騎士叙任間近ではあったが、騎士の道は諦めるしかなかった。
実家の中でも同じことだ。家族も使用人も、僕に対して腫れものを扱うように接した。
さすがにあれだけのことがあった後だ。いくら明るく振舞おうとしても無理がある。
兄たちは学園の寮に入り、休暇になっても帰ってこなかった。父も仕事に没頭し、家には僕と使用人たちだけが残された。
また僕のせいで家族がバラバラになってしまったのだ。
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