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三日目の朝は高速回転

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翌朝の車内の冷え込みったら…。
私は朝が苦手だから、
朝のテンションはすこぶる低い。
ましてや出勤前は超ブルーだ。
彼は早起きして朝ご飯やら、お弁当やら作ってくれて
朝が弱い感じはしなかったんだけど
口数が何となーーーく少ない。

「…この先、左?」
「うん。あとは真っ直ぐだよ」
「…わかった」
「……」
「……」
「…」
「…」

知り合って3日目…無言は辛いですぅ……。
昨日までの強引過ぎる彼のスキンシップに救われていたんだな、と
ようやく思い至る。

「……あのさ、なんか、流された感じになっちゃってるけど
………アナタには感謝してます。……ありがとう」

っはーーーーー!!!
苦手!シリアスな空気は苦手!!!!

「えーと、お弁当もありがとう。
帰ったらちゃんと話そう?
あ、あのヒョミマ前で降ろしてっ!!」

バタバタっと彼の車から降りて、ヒラヒラっと手を振る。
そのまま振り返らずに駆け出して、点滅信号を急いで渡った。
今日は必ず定時で帰らなければ、と固く誓って社屋の門をくぐる。

出勤してからは怒涛の忙しさで、折角のお弁当もおざなりに胃に収めてしまった。


***************************


「お疲れ様、希帆さん」
「ありがとう!助かります!!」

朝別れた場所で待ち合わせして、そのまま近所の大型ショッピングモールへ向かう。
必要なものの買い出し、と思っていたけれど
よくよく考えたら、持ち込んだ荷物で何とかなりそうなんだよなぁ。
お互いに予期せぬ同居なわけだし
彼にとっては縁もゆかりもない居候を抱えるわけで
あんまり私の荷物を増やすのもどうかと思う。

「あ、お弁当、ご馳走様でした。
すっごい美味しかったよ~。LIMEさえも送る暇なくてごめんね」

両手を目の前で合わせる「ごめんね」のポーズをしながら
彼に誠心誠意の感謝の気持ちと、謝罪の気持ちを伝える。

「ハハ。大丈夫、大丈夫。お口に合って何よりだよ」

今朝に引き続き、やっぱり心なしかよそよそしい彼。
うーーん。これはやっぱり、アレだろう。
勢いに任せて同居を決めたは良いけれど、一晩経って思い直した、ってことだろうか。
年上の私相手に言い出せずにいるんだろうなぁ。
それに下手に身体を重ねているからこそ、なんとなく遠慮しているのかもしれない。
昨夜は流されてしまった私だが、今の状況を考えると
今回の同居話は正直なところ、ありがたい…!
引っ越し費用も、引っ越し先のあてもない状態で、このような申し出は渡りに船だ。
けれど、身体の関係を結んだだけの間柄で、このような同居話を進めるのは
やっぱり「ナシ」だろうとは思う。

「あ~…、あの、さ」
「…」

信号待ちで停車したのを見計らって声を掛けると、彼は僅かに身体を強張らせた気がした。

「今回の事は、私はすっごくありがたいし助かるんだけど
アナタの負担を考えたら甘えちゃいけない事だよね。
やっぱり自分で何とかするよ。変に気負わせてごめんね」

思っていることを一息で伝えて、ペコリと頭を下げる。
さて、これからどうしたものか。

「…ごめん、やっぱり買い物は後でも良い?一回家に帰ろう」
「んぇ?お、おぅ…」

どことなく緊迫した雰囲気に押され、コクコクと頷く。
滑らかに都会を走るSUVの車内で、私はひっそりと息をひそめた。
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