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第五章 復活のはじまり
第六十六話 相手は怪物
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隠し通路から城に入って、ヴラド公のいる礼拝堂へ向かうオクタヴィアン、ヤコブ、アンドレアスの三人。
隠し通路からの階段は松明の灯りもなく、真っ暗である。
しかし三人には何の関係もない。
しかしここで、ヤコブの様子が少しおかしくなってきた。
「オ、オクタヴィアン様っっ。わ、わし、何だか調子が悪くなってきただ。何か……」
「え? ひょっとして、血を飲んでないから?」
そのうち歩くのも辛くなり、壁にもたれてしまった。
「ヤ、ヤコブっっ! だ、大丈夫?」
アンドレアスはとても心配しているが、どうしていいのか分からない。
オクタヴィアンも、ここには血がないどころか生き物がいない事は臭いや感覚で分かっていた。
「ヤコブ、ボクの背中に来るんだ」
オクタヴィアンはヤコブを軽く背負った。
「あ~……も、申し訳ないですっっ。わしをおんぶするなんて……」
「そんな事言ってる場合じゃないよ。たぶんだけど、さっきローラや屍食鬼が生き返ったのはヴラド公の仕業だと思うんだ。とにかく会わないと! あ、いいかいアンドレアス。ボクは先に礼拝堂へ行く。キミも場所は分かるね」
「ヘイ、ダンナ~。そこへ行きますわ~」
オクタヴィアンはアンドレアスに向かって頷くと、ヤコブを背負ったまま、一瞬で階段を登って、礼拝堂へ向かった。
階段を登り二階に着くと、所々、松明の灯りがついており、廊下などが炎の揺れで怪しげな雰囲気をかもし出していた。
その中を通り過ぎ始めた時、オクタヴィアンは足を止めてしまった。
何故なら、あまりに想像を超えた光景を目の当たりにしたからだった。
ヤコブに至っては、自分が血が足りなくて歩くのもしんどかった事も忘れてしまうくらい、口をあんぐりと開けて固まってしまった。
テスラが首根っこを掴まれ、今にも殺されそうになっている!
まだそこまではいいのだ。問題はその相手だった。
人の三倍はあり、全身が銀色の毛だらけで、腕は左右に二本ずつの計四本あり、更に背中にはコウモリのようだが、かなり巨大な羽も持つ、まさに怪物!
「な、何っっ?」
「え? ヴラド公は? え?」
オクタヴィアンとヤコブは、こんな怪物を見るとは夢にも思っていなかったので、何が何だか分からなくなった。
しかし二人の声を聞いた怪物が、首を二人の方へ向けた。
顔も当然、犬とコウモリと人間を足したような、摩訶不思議なモノだった。
そしてその怪物は口を開いた。
「おお! オクタヴィアン! それにヤコブ君だったな! この通り、私は元気に回復できたよ。貴様達には感謝しかない。どうだ? これからは共に行動しないか?」
「え? な、何? 誰?」
オクタヴィアンは困惑した。
テスラは首根っこを掴まれながらも、首を横にふっている。
「何を言っているんだ。私だ。ヴラドだよ。見れば分かるだろう?」
オクタヴィアンとヤコブは動揺を隠せなかった。
「ヴ、ヴラド公はそんな怪物じゃないわ!」
ヤコブは思わずくってかかった。
「何?」
ここで怪物の動きが少し止まった。
オクタヴィアンはヤコブを後ろに下げると、怪物に冷静に話し始めた。
「ヴ、ヴラド公? 本当にヴラド公なんですか? 今、自分がどんな姿になっているのか、分かっていないんですか?」
その冷静な口調で、怪物は自分の手に持っているテスラの顔を見た。
テスラは冷静な顔でウンウンと頷いている。
怪物はそのまま、自分の手、腕、身体と目線を動かしていった。
その腕や手はまるで毛だらけで、人の物ではない。そしてよく見ればテスラを掴んでいる手の大きさも、三倍ぐらいに膨れ上がっている。
怪物はワナワナと震え始めた。
「テスラ……私はいつ、こんな姿になった?」
首根っこを掴まれているテスラは、声を枯らしながら答えた。
「先ほど……そこの死体を動かしたあたりからだ」
その言葉を聞いてオクタヴィアンとヤコブは、怪物の足元にグニグニと動いている肉の塊がある事に気がついた。
そんな中、ワナワナと震えている怪物はテスラを離すと、壁にもたれて、顔を手で触って確認した。
その時、自分の手が二本増えている事にも気がついた。
「うわああああああああああっっ!」
怪物から思わず叫び声が出た。
そしてそのまま、壁沿いにペタンと座り込んでしまった。
オクタヴィアンは少しずつ近づきながら声をかけた。
「ヴ、ヴラド公? 何があったんですか? どうして怪物になって、テスラを襲ってたんですか?」
オクタヴィアンは少しずつ怪物に近づき、その間にヤコブはテスラの元へ行き、テスラはグリゴアに少しでもここから離れる様に手で合図をした。
グリゴアはその合図を見て、ゆっくりと部屋から離れ、後ろ向きのまま、傷口を押さえながら立ち去った。
「わ、私にも分からない……。先程、この部屋で目が覚めたらブルーノが私を殺そうとしていて……その後、ヤツの血を飲んで……」
「ヴラド公は吸血鬼になったんですね」
「……そうだ。私は吸血鬼になったのだ! それに偉大な力も手に入れた……どうしてこんな素晴らしい力を、ラドゥが使わなかったのかさっぱり分からなかったのだ……しかし姿が変わるのが怖かったんだな、ヤツは。所詮臆病者よ! これは私が生まれ変わり、これから世界を統治する者になった証拠なのだ。そうだ! オクタヴィアン! 私と共に世界を征服しようではないか!」
その言葉を言い終わる前に、怪物はオクタヴィアンの首根っこを掴んだ。
「グ!」
「しかし、貴様もテスラと同じで私の敵になるのは分かっている! だから今のうちに手を打たせてもらうぞ!」
「ヴ、ヴラド公……」
「フハハハハハハハハ! もうヴラド公はこの世にはいない! 私の事はドラクリアと呼んでほしい!」
「ド、ドラクリア? ヴラド公……ざ、残念ですっっ!」
オクタヴィアンは苦しもがきながら、おじさんからもらった袋をそのままドラクリアの顔面に押し付けた。
ドラクリアは訳が分からないまま、つい猛獣のようなその口を開けて、その袋を破いた。
すると中から光り輝く十字架と木の杭と聖水の入っている陶器の瓶二つ、現れた。
「グワっっ!」
「熱!」
ドラクリアは十字架を直接顔面につけたせいで、煙が上がり始め、思わず掴んでいたオクタヴィアンを手から離した。
しかしオクタヴィアンも近くで十字架を見たせいで、顔から煙が上がり始めた。
十字架は高熱の鉄のようにドラクリアの顔を溶かし、燃やし続けている。ドラクリアは必死になってその十字架を顔から外し、床に放り投げた。
その時に、いっしょに袋に入っていた木の杭と陶器の瓶二つがゴロゴロと苦しみ悶えているドラクリアの身体をつたってそれぞれ床に落ちた。
そして一つの瓶が床で割れた。
すると今度はドラクリアの座っている足から尻から燃え始めた。
「な、な、なんだこれは~~~~~~~っっ!」
ドラクリアは大慌てでその場所から離れるために礼拝堂へ入っていった。
この時、オクタヴィアンは割れなかった聖水の入った瓶を慌てて手に取り、ズボンのポケットへ入れた。
そこにテスラが駆け寄った。
「だ、大丈夫か?」
「はい、何とか」
オクタヴィアンの顔からは煙が上がっているが、軽い火傷程度だった。
すると大広間の方から「こっちです!」と言うグリゴアの声と、複数の人達の足跡、それと十字架の輝きが松明とともに近づいてきた。
対吸血鬼部隊が到着したのである。
「我々もここから去ろう」
テスラの指示でオクタヴィアンとヤコブは礼拝堂から移動しようとしたその時だった。
ドガーーーーーーーーーーーーーン!
礼拝堂の壁が石ごと部屋の中から破壊され、大小の石が部屋の周りや大広間に向かって飛んで行った。
その石の威力は凄まじく、対吸血鬼部隊にも直撃し、掲げた十字架はもちろんの事、石を食らった兵士達は顔がもげたり、胸に穴が空いたりと、かなりのダメージを与えた。
床には松明が転がり、その火を浴びてしまった兵士は燃えながら走って逃げていったり、逃げる事が出来ずにその場で苦しみながら燃えてしまっている。
そしてさらに壁を破壊したドラクリアは、衝撃で飛ばされた石と同じスピードで対吸血鬼部隊へ向かい、倒れている兵士に噛みついた。
「ふう~。死ぬかと思ったよ、オクタヴィアン。そんな小細工でも、用心をしないといけないな」
一瞬で兵士の身体をミイラに変えたドラクリアの身体には、傷一つなくなっていた。
隠し通路からの階段は松明の灯りもなく、真っ暗である。
しかし三人には何の関係もない。
しかしここで、ヤコブの様子が少しおかしくなってきた。
「オ、オクタヴィアン様っっ。わ、わし、何だか調子が悪くなってきただ。何か……」
「え? ひょっとして、血を飲んでないから?」
そのうち歩くのも辛くなり、壁にもたれてしまった。
「ヤ、ヤコブっっ! だ、大丈夫?」
アンドレアスはとても心配しているが、どうしていいのか分からない。
オクタヴィアンも、ここには血がないどころか生き物がいない事は臭いや感覚で分かっていた。
「ヤコブ、ボクの背中に来るんだ」
オクタヴィアンはヤコブを軽く背負った。
「あ~……も、申し訳ないですっっ。わしをおんぶするなんて……」
「そんな事言ってる場合じゃないよ。たぶんだけど、さっきローラや屍食鬼が生き返ったのはヴラド公の仕業だと思うんだ。とにかく会わないと! あ、いいかいアンドレアス。ボクは先に礼拝堂へ行く。キミも場所は分かるね」
「ヘイ、ダンナ~。そこへ行きますわ~」
オクタヴィアンはアンドレアスに向かって頷くと、ヤコブを背負ったまま、一瞬で階段を登って、礼拝堂へ向かった。
階段を登り二階に着くと、所々、松明の灯りがついており、廊下などが炎の揺れで怪しげな雰囲気をかもし出していた。
その中を通り過ぎ始めた時、オクタヴィアンは足を止めてしまった。
何故なら、あまりに想像を超えた光景を目の当たりにしたからだった。
ヤコブに至っては、自分が血が足りなくて歩くのもしんどかった事も忘れてしまうくらい、口をあんぐりと開けて固まってしまった。
テスラが首根っこを掴まれ、今にも殺されそうになっている!
まだそこまではいいのだ。問題はその相手だった。
人の三倍はあり、全身が銀色の毛だらけで、腕は左右に二本ずつの計四本あり、更に背中にはコウモリのようだが、かなり巨大な羽も持つ、まさに怪物!
「な、何っっ?」
「え? ヴラド公は? え?」
オクタヴィアンとヤコブは、こんな怪物を見るとは夢にも思っていなかったので、何が何だか分からなくなった。
しかし二人の声を聞いた怪物が、首を二人の方へ向けた。
顔も当然、犬とコウモリと人間を足したような、摩訶不思議なモノだった。
そしてその怪物は口を開いた。
「おお! オクタヴィアン! それにヤコブ君だったな! この通り、私は元気に回復できたよ。貴様達には感謝しかない。どうだ? これからは共に行動しないか?」
「え? な、何? 誰?」
オクタヴィアンは困惑した。
テスラは首根っこを掴まれながらも、首を横にふっている。
「何を言っているんだ。私だ。ヴラドだよ。見れば分かるだろう?」
オクタヴィアンとヤコブは動揺を隠せなかった。
「ヴ、ヴラド公はそんな怪物じゃないわ!」
ヤコブは思わずくってかかった。
「何?」
ここで怪物の動きが少し止まった。
オクタヴィアンはヤコブを後ろに下げると、怪物に冷静に話し始めた。
「ヴ、ヴラド公? 本当にヴラド公なんですか? 今、自分がどんな姿になっているのか、分かっていないんですか?」
その冷静な口調で、怪物は自分の手に持っているテスラの顔を見た。
テスラは冷静な顔でウンウンと頷いている。
怪物はそのまま、自分の手、腕、身体と目線を動かしていった。
その腕や手はまるで毛だらけで、人の物ではない。そしてよく見ればテスラを掴んでいる手の大きさも、三倍ぐらいに膨れ上がっている。
怪物はワナワナと震え始めた。
「テスラ……私はいつ、こんな姿になった?」
首根っこを掴まれているテスラは、声を枯らしながら答えた。
「先ほど……そこの死体を動かしたあたりからだ」
その言葉を聞いてオクタヴィアンとヤコブは、怪物の足元にグニグニと動いている肉の塊がある事に気がついた。
そんな中、ワナワナと震えている怪物はテスラを離すと、壁にもたれて、顔を手で触って確認した。
その時、自分の手が二本増えている事にも気がついた。
「うわああああああああああっっ!」
怪物から思わず叫び声が出た。
そしてそのまま、壁沿いにペタンと座り込んでしまった。
オクタヴィアンは少しずつ近づきながら声をかけた。
「ヴ、ヴラド公? 何があったんですか? どうして怪物になって、テスラを襲ってたんですか?」
オクタヴィアンは少しずつ怪物に近づき、その間にヤコブはテスラの元へ行き、テスラはグリゴアに少しでもここから離れる様に手で合図をした。
グリゴアはその合図を見て、ゆっくりと部屋から離れ、後ろ向きのまま、傷口を押さえながら立ち去った。
「わ、私にも分からない……。先程、この部屋で目が覚めたらブルーノが私を殺そうとしていて……その後、ヤツの血を飲んで……」
「ヴラド公は吸血鬼になったんですね」
「……そうだ。私は吸血鬼になったのだ! それに偉大な力も手に入れた……どうしてこんな素晴らしい力を、ラドゥが使わなかったのかさっぱり分からなかったのだ……しかし姿が変わるのが怖かったんだな、ヤツは。所詮臆病者よ! これは私が生まれ変わり、これから世界を統治する者になった証拠なのだ。そうだ! オクタヴィアン! 私と共に世界を征服しようではないか!」
その言葉を言い終わる前に、怪物はオクタヴィアンの首根っこを掴んだ。
「グ!」
「しかし、貴様もテスラと同じで私の敵になるのは分かっている! だから今のうちに手を打たせてもらうぞ!」
「ヴ、ヴラド公……」
「フハハハハハハハハ! もうヴラド公はこの世にはいない! 私の事はドラクリアと呼んでほしい!」
「ド、ドラクリア? ヴラド公……ざ、残念ですっっ!」
オクタヴィアンは苦しもがきながら、おじさんからもらった袋をそのままドラクリアの顔面に押し付けた。
ドラクリアは訳が分からないまま、つい猛獣のようなその口を開けて、その袋を破いた。
すると中から光り輝く十字架と木の杭と聖水の入っている陶器の瓶二つ、現れた。
「グワっっ!」
「熱!」
ドラクリアは十字架を直接顔面につけたせいで、煙が上がり始め、思わず掴んでいたオクタヴィアンを手から離した。
しかしオクタヴィアンも近くで十字架を見たせいで、顔から煙が上がり始めた。
十字架は高熱の鉄のようにドラクリアの顔を溶かし、燃やし続けている。ドラクリアは必死になってその十字架を顔から外し、床に放り投げた。
その時に、いっしょに袋に入っていた木の杭と陶器の瓶二つがゴロゴロと苦しみ悶えているドラクリアの身体をつたってそれぞれ床に落ちた。
そして一つの瓶が床で割れた。
すると今度はドラクリアの座っている足から尻から燃え始めた。
「な、な、なんだこれは~~~~~~~っっ!」
ドラクリアは大慌てでその場所から離れるために礼拝堂へ入っていった。
この時、オクタヴィアンは割れなかった聖水の入った瓶を慌てて手に取り、ズボンのポケットへ入れた。
そこにテスラが駆け寄った。
「だ、大丈夫か?」
「はい、何とか」
オクタヴィアンの顔からは煙が上がっているが、軽い火傷程度だった。
すると大広間の方から「こっちです!」と言うグリゴアの声と、複数の人達の足跡、それと十字架の輝きが松明とともに近づいてきた。
対吸血鬼部隊が到着したのである。
「我々もここから去ろう」
テスラの指示でオクタヴィアンとヤコブは礼拝堂から移動しようとしたその時だった。
ドガーーーーーーーーーーーーーン!
礼拝堂の壁が石ごと部屋の中から破壊され、大小の石が部屋の周りや大広間に向かって飛んで行った。
その石の威力は凄まじく、対吸血鬼部隊にも直撃し、掲げた十字架はもちろんの事、石を食らった兵士達は顔がもげたり、胸に穴が空いたりと、かなりのダメージを与えた。
床には松明が転がり、その火を浴びてしまった兵士は燃えながら走って逃げていったり、逃げる事が出来ずにその場で苦しみながら燃えてしまっている。
そしてさらに壁を破壊したドラクリアは、衝撃で飛ばされた石と同じスピードで対吸血鬼部隊へ向かい、倒れている兵士に噛みついた。
「ふう~。死ぬかと思ったよ、オクタヴィアン。そんな小細工でも、用心をしないといけないな」
一瞬で兵士の身体をミイラに変えたドラクリアの身体には、傷一つなくなっていた。
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