至高の騎士、動きます〜転生者がこの世界をゲームと勘違いして荒らしてるので、最強騎士が分からせる〜

nagamiyuuichi

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ナイトさんは空気が読めない

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【ルインの酒場】

 中に入ると、まず目についたのはたくさんの丸テーブルに、巨大な建物の壁一面の掲示板と所狭しと貼られたWANTEDと書かれた手配書の数々。そして耳に入るのは冒険者たちの野太い笑い声や会話の声に、その会話を彩るようにリュートやハープを持った音楽家たちにより奏でられる、どこの国のものだかわからない軽快な音楽。

 豪華でも厳かでもない、乱雑とした印象を受けるそのギルドを一目見まわし、前方へ視線を戻すと、冒険者でごった返す人の中の間から、三つのカウンターが見える。

「あれが受け付けのようだな……それにしても、混んでいるな」

「それだけこの町には冒険者が集まっている。ギルドに力がある証拠さ」

「なるほど……仕事には困らなそうだな」

「とりあえず、受付に行ってみましょう」

 カウンターには左から【報酬】 【食事】 【クエスト】とカウンターのプレートに大きく書かれており、お昼時だからだろうか、食事カウンターには大量の料理が並んでおり、赤い頭巾をかぶったギルドの受け付け嬢らしき少女たちが、鬼気迫る表情で両手に料理をもって縦横無尽にカウンターとテーブルをせわしなく行き来している。

「とりあえずクエストカウンターに向かうとしよう。マスター」

「そうですね」

 ナイトさんの提案に私はうなずき、人ごみを咲けてクエストカウンターにむかうと。

「へいらっしゃい! ようこそお客さん今日はどんな御用かな!」

 クエストカウンターには褐色肌の少女が立っていた。

 獣人族だろうか、身長は高く、その口元からは八重歯がのぞいており、髪の毛も独特な癖っ毛をしている。 
何より発育がいい……私よりかは一つ二つ年上だろうが、あれほどの体になれる未来が私には想像できない。
看板娘というやつだろう。ほかの少女たちに比べ、それほど彼女は魅力的な女性であった。

「クエストを受注しに来たのですが」

「ほぉ! 見ない顔だけど遠くから来たのかい?」

「いいえ、実はついさっき冒険者になったばかりで」

「ほほぉ。となると新顔かい? いいねえ、命知らずは大歓迎さ。ようこそ冒険者! 地獄の沙汰もつながり次第、私のギルドルインの酒場へ」

「……え? 私のって」

 その言葉に私はついついその言葉に聞き返すと、少女は愉快そうに笑みをこぼすと。

「あっはっは、私が小間使いのガキに見えたってか! いやはや嬉しいねえ、これでも三百年は生きてるばあさんなんだけどね! まぁそれは置いといて、私がここのギルドマスタールインさ」

「えっ!? ギルドマスター?」

「ほう、ロリババアとはよく言ったものだ……もっとも、ロリではないが」

「ちょっ! ナイトさん何言ってんですか!」

 驚愕する私の隣でいきなり暴言を吐くナイトさんに私は慌てるが。

「あっはっは! まあ婆には変わりはないねぇ、まぁそれは置いといて冒険者登録だろう? ここは仕事が有り余
っちまってしょうがないからね! 新参者は大歓迎さ。ギルドジュエルはあるかい?」

 しかし流石はギルドマスター、ナイトさんの失言も気にする様子もなく、私たちにギルドジュエルの提出を求める。

「あ、はい……ここに」

私はそう答えると、アッガスさんより預かった宝石を首から外し、ルインさんに渡すと。

「なんだ、あんたらアッガスのところの新米かい」


―――――ざわり―――――――


 そう漏らしたルインさん。

 同時に、その言葉を聞いた冒険者たちの視線が一斉に集まる。

「……どうやら、アッガス君は相当の実力者らしいね」

 局長がそっと私にした耳打ちでさえも、はっきりと聞き取れてしまうほどの静寂。

 先ほどの笑い声やリュート、ハープの音は一斉に静まり返り、私はその変化に怖気づきながらも、アッガスさん率いる冒険者クラン悠久の風がいかに冒険者の間で名が知れ渡っている存在であるかを痛感させられる。

 まぁもっとも、王国騎士団の要人護衛を任されている時点で、かなりの実力者であることは間違いないのだが……。

「えと、そうなんです。先日アッガスさんに認められて」

「それは期待できるねぇ。そっちのお兄さんは相当鍛えられてるみたいだし、アッガスんところの人間なら疑うべくもないね、無理しない程度に好きな仕事を持っていくといい!」

 そう笑いながら、ギルドジュエルを投げてよこすルインさんに、私は表情に出ないようにほっと胸をなでおろす
が。


「そうか……ならこのギルドで一番難易度の高い依頼を受けようか」


 すぐさまその胸から心臓が飛び出そうになる。
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