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万能の薬草 満月草を探して
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「というわけで、半ば強引に依頼を受けたわけだけど……本当にこの依頼でよかったのかい? サクヤ君」
「仕方ないじゃないですか、歩いて行ける距離の高難易度の依頼がこれぐらいしかなかったし、ナイトさんがこれがいいっていうから!」
あの後、高難易度クエストを受けられるようになった私たちであったが、いざ高難易度クエストを受けようとするとそのほとんどが国境を超えるかもしくは移動に馬を要するものばかりであったのだ。
あれだけの騒ぎを起こしておいて、今更お金がなくてできません等といえるはずもなく。
最終的に一番近場の依頼を受けたのだが。
その内容は、満月草と呼ばれる薬草の取得が目的であったようだ。
「三日月草ならご存知の通りだよね。あらゆる薬を作る下地になる薬草でいて、単体で食べても頭痛や吐き気に効く一種の万能性を持つ薬草だけど。満月草も同じものなのかな?そもそも見分けがつくようなものなのかい?」
「一応スケッチはもらいましたが」
召喚魔術に使用する草花には覚えがあるが、正直薬学には全く精通していないため、見分けがつくかどうかは怪しい。スケッチも確かに特徴のある見た目だが、大量にある草花の中からこれだけを探し出せ、といわれたら難しいかもしれない。
しかし。
「満月草は万能薬、さらにはポーションを作成するために必要な素材になる。三日月層よりも扱いは難しく、薬学の練度は必要になるが、俺たちの世界でも薬の下地になる薬草の中でも最高級のものに当たる……ゆえに、俺ほどのナイトがほかの雑草と見間違えることはあり得ない」
ナイトさんは思い出す……というよりも、本に書いてある内容を読み上げるかのようにすらすらと、そう満月草について語る。
「驚いたな、君が満月草を知っているなんてね。いや、それよりも三日月草が君の世界にも自生していることを驚くべきか、意外な親近感がわくよ」
満月草はともかく、三日月草は私たちの間でも身近な薬草である。
特に頭痛持ち―――主に局長の世話のせいで発生する―――の私にとっては、副作用が一切なく、即効性も日持ちもするこの薬は、薬バッグに常備するレベルでは必須アイテムだ。
しかし。
「違う世界、違う次元でまったく同じ植物が生えるわけがないだろう。三日月草、満月草はもともと、俺たちの世界の植物だ」
「え?」
ナイトさんはのんきな私に忠告をするようにそう呟く。
「おそらく転生者が持ち込んだものが、千年の時をかけてこの世界になじんだのだろう。マスターの言う通り、それだけこの世界になじんでいるとなると、三日月草のせいで絶滅した草木もあるのだろうな」
「そん…」
私たちの生活を助けるはずの植物……身近で、場所によっては国のシンボルにしている国もあるほど、この世界に根付いたそんな植物であるが。
「転生者と同じさ。本来この世界に存在していたはずの住人を淘汰し、気が付いたらこの世界の住人に成り代わっている……気づかないうちにな」
「く、草木一つで大げさだなぁナイト君は。現に僕たちの役に立っているし、こうして僕たちの世界と共存ができているんだ。悪いものと断ずることはできないんじゃないかい?」
「確かにな……一概にすべてが悪いといっているわけではないさ。現に、栽培をするだけならば害がなく、人の助けになる素晴らしい植物だ。多くの命を救ってきたことだろう」
「ほら」
「そう、だから問題なのは……それをコントロールできていないことだ」
「コントロール?」
意味不明な言葉に局長はそう怪訝そうな声を漏らして問いかけると、ナイトさんは少し考えるようなそぶりを見せ。
「まぁいい……先を急ごう」
「あっ! ちょっとナイトさん、待ってくださいよ!」
説明を中断し、ずんずんと先に進んでいってしまうのであった。
アルムハーンの町を抜け、私たちは地図をもとに国境沿いにあるエルフの森へと向かう。
距離にして約二十キロほどのその場所に到着するころにはすっかり日も高く上っており、森の入り口前で立ち止まり一度ナイトさんに声をかける。
「到着しましたね……ここに満月草があるみたいです」
「のようだな……エルフの森と言ったが?」
「よくぞ聞いてくれました! クッコロー旅行記にもちゃんとエルフの森についての記述があるよ! かつてはこ
の森にはエルフ族が住んでいて、自然を管理していたらしいよ」
「エルフといえば、森を美しく保つ種族の代表ですが……管理していたというのは?」
「最近はめっきり見なくなったって噂だね。女騎士クッコローが森に入ったときにはいたらしいけど。まぁ、エル
フが住処を変えることはさほど珍しいことでもないらしいけどね」
「……つまりは、この森には今誰もいないということだな……それは好都合だ」
「あっ、ちょっとナイトさん置いていかないでくださいよ!」
局長の言葉に、ナイトさんはそう漏らすと、一人草木をかき分けて森の中に侵入してしまい、私は慌ててそのあとをついていく。
◇
「仕方ないじゃないですか、歩いて行ける距離の高難易度の依頼がこれぐらいしかなかったし、ナイトさんがこれがいいっていうから!」
あの後、高難易度クエストを受けられるようになった私たちであったが、いざ高難易度クエストを受けようとするとそのほとんどが国境を超えるかもしくは移動に馬を要するものばかりであったのだ。
あれだけの騒ぎを起こしておいて、今更お金がなくてできません等といえるはずもなく。
最終的に一番近場の依頼を受けたのだが。
その内容は、満月草と呼ばれる薬草の取得が目的であったようだ。
「三日月草ならご存知の通りだよね。あらゆる薬を作る下地になる薬草でいて、単体で食べても頭痛や吐き気に効く一種の万能性を持つ薬草だけど。満月草も同じものなのかな?そもそも見分けがつくようなものなのかい?」
「一応スケッチはもらいましたが」
召喚魔術に使用する草花には覚えがあるが、正直薬学には全く精通していないため、見分けがつくかどうかは怪しい。スケッチも確かに特徴のある見た目だが、大量にある草花の中からこれだけを探し出せ、といわれたら難しいかもしれない。
しかし。
「満月草は万能薬、さらにはポーションを作成するために必要な素材になる。三日月層よりも扱いは難しく、薬学の練度は必要になるが、俺たちの世界でも薬の下地になる薬草の中でも最高級のものに当たる……ゆえに、俺ほどのナイトがほかの雑草と見間違えることはあり得ない」
ナイトさんは思い出す……というよりも、本に書いてある内容を読み上げるかのようにすらすらと、そう満月草について語る。
「驚いたな、君が満月草を知っているなんてね。いや、それよりも三日月草が君の世界にも自生していることを驚くべきか、意外な親近感がわくよ」
満月草はともかく、三日月草は私たちの間でも身近な薬草である。
特に頭痛持ち―――主に局長の世話のせいで発生する―――の私にとっては、副作用が一切なく、即効性も日持ちもするこの薬は、薬バッグに常備するレベルでは必須アイテムだ。
しかし。
「違う世界、違う次元でまったく同じ植物が生えるわけがないだろう。三日月草、満月草はもともと、俺たちの世界の植物だ」
「え?」
ナイトさんはのんきな私に忠告をするようにそう呟く。
「おそらく転生者が持ち込んだものが、千年の時をかけてこの世界になじんだのだろう。マスターの言う通り、それだけこの世界になじんでいるとなると、三日月草のせいで絶滅した草木もあるのだろうな」
「そん…」
私たちの生活を助けるはずの植物……身近で、場所によっては国のシンボルにしている国もあるほど、この世界に根付いたそんな植物であるが。
「転生者と同じさ。本来この世界に存在していたはずの住人を淘汰し、気が付いたらこの世界の住人に成り代わっている……気づかないうちにな」
「く、草木一つで大げさだなぁナイト君は。現に僕たちの役に立っているし、こうして僕たちの世界と共存ができているんだ。悪いものと断ずることはできないんじゃないかい?」
「確かにな……一概にすべてが悪いといっているわけではないさ。現に、栽培をするだけならば害がなく、人の助けになる素晴らしい植物だ。多くの命を救ってきたことだろう」
「ほら」
「そう、だから問題なのは……それをコントロールできていないことだ」
「コントロール?」
意味不明な言葉に局長はそう怪訝そうな声を漏らして問いかけると、ナイトさんは少し考えるようなそぶりを見せ。
「まぁいい……先を急ごう」
「あっ! ちょっとナイトさん、待ってくださいよ!」
説明を中断し、ずんずんと先に進んでいってしまうのであった。
アルムハーンの町を抜け、私たちは地図をもとに国境沿いにあるエルフの森へと向かう。
距離にして約二十キロほどのその場所に到着するころにはすっかり日も高く上っており、森の入り口前で立ち止まり一度ナイトさんに声をかける。
「到着しましたね……ここに満月草があるみたいです」
「のようだな……エルフの森と言ったが?」
「よくぞ聞いてくれました! クッコロー旅行記にもちゃんとエルフの森についての記述があるよ! かつてはこ
の森にはエルフ族が住んでいて、自然を管理していたらしいよ」
「エルフといえば、森を美しく保つ種族の代表ですが……管理していたというのは?」
「最近はめっきり見なくなったって噂だね。女騎士クッコローが森に入ったときにはいたらしいけど。まぁ、エル
フが住処を変えることはさほど珍しいことでもないらしいけどね」
「……つまりは、この森には今誰もいないということだな……それは好都合だ」
「あっ、ちょっとナイトさん置いていかないでくださいよ!」
局長の言葉に、ナイトさんはそう漏らすと、一人草木をかき分けて森の中に侵入してしまい、私は慌ててそのあとをついていく。
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