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大事なことは早めに伝えて欲しい……
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森の中はとても幻想的で、とても居心地の良い場所であった。
草や木はどれも緑色に輝き、木々の間から差し込む光を吸収し、森の中を美しいエメラルドグリーン色に染め上げている。
その場所に咲き誇る花々、そして生い茂る三日月草。
森の中の草木は、一本の例外もなくまるで自分たちは主人公である……そう誇るかのように胸を張っていた。
「澄んだ魔力がたまっているね。森はもともと命にあふれているから魔力が濃い場所だけど、とても純度の高い魔力が流れているよ」
そう局長はモニター越しに呟き、私は大きく森の空気を吸い込む。
「本当です……結構歩いたはずなのに疲労を感じません」
「そうだねえ……そういえば」
私の言葉に、局長は何かをふと思ったのか声をかけてくる。
「どうしたんですか局長?」
「いや、森の中颯爽と歩いているところ悪いし、今更聞くのかって言われたらぎゃふんというしかないんだけど……さっきからナイト君ずんずん進んでいってるけど、満月草の場所わかるの?」
「今更それを聞くのか?」
「ぎゃふん」
ナイトさんの発言に局長はそうふざけた言葉を漏らすが、しかし思ってみればそうだ。
先ほどからナイトさんが自信満々に先に進んでいってしまうためになんとなく後をついて言っていたが……そもこの森に入るのも初めてなナイトさんが、どうして満月草が自生しているところを知っているのだろう。
まさかいくら何でも知らずに歩いているということはないだろうが、それでも私は不安になったのでナイトさんに聞いてみる。
「え、今更ですけど。ナイトさん、満月草の生えてる場所わかるんですか?」
「知らんが?」
知らなかった。
「なっ!? だって君あんなに自信満々……なのはいつものことか!」
「ちょっ、どうするんですか! この森結構広いですよ! やみくもに歩き回ったって見つかるわけが……」
そういうと、ナイトさんは肩を一つすくめ。
「落ち着けマスター。確かに生えている場所は知らないが、生えているところは知っている」
「? それはどういう……」
言っていることは同じなような気もするが、とりあえず生えているっぽい場所に検討はついているということだろうか?
私はその真意を聞こうとするが。
「ふむ、思ったよりも早くついたな。 マスター、到着だ」
そういうとナイトさんは絡みついたつたを手でちぎり、その先を私に見せてくる。
そこは。
「……これは……」
そこは森の中にぽっかりと空いたような草原。
森を抜けたわけではなく、四方を森で囲まれた森の中の草原には、たくさんの三日月草が太陽の光を燦燦と浴びて、見たこともないくらい大きく育っている。
中心にはひなたぼっこをするかのように、巨大な大岩が座り込んでいる。
「人の手が加えられてる様子もない……自然に作られた森の中の平原のようだね……確かに、自然にもできる例は
なくはないけど……でもここはまるで」
「人の手で作られたように、きれいな円形をしているだろう?」
モニターをしている局長は、俯瞰からの情報を得たのか、息をのんでそんな言葉を漏らす。
ここに立っている私はなんとなくしかわからなかったが、少なくともこの場所が普通と違う、ということだけはなんとなく肌で感じることができた。
「森に隠れた満月に自生する薬草……満月草と呼ばれるゆえんだ。あまりにも見つける難易度が高いために、俺たちの世界では運営が飛行の魔法を実装した……というのが有名な話だ。真意のほどは分からんが」
ウン=エイという人物の名前が出て、私はふとおばあちゃんに聞いた話を思い出す。
時に狂い、時に人々に富と幸福をもたらした勇者様の世界の神様。
世界を拡張したり力を与えたり奪ったりする、気まぐれな神様だったとか……。
「なるほどね、咲いてるところを知っているっていうのはそういうことだったんだね」
「あぁ、満月草を見つけるのは、この地形を探すのが一番難しいが、自生している場所さえ押さえてしまえば探すのは簡単だ」
誇らしげにそう語るナイトさん。
「あ、あの岩の上……スケッチの形と同じですよナイトさん!」
意外にも、満月草は簡単に発見ができた。
「そうだな、間違いない。あんなところに生えるのは満月草くらいだ」
その数も一本や二本ではない、巨大な大岩の背中に群生するかのように、大量の満月草がそよ風に揺られている。
「……私、取ってきます!」
「しかし、君の言う通り生えている場所さえ分かれば随分と簡単な依頼だけど……どうして最高難易度クエストに指定されているんだろうね?」
「あぁ、それは」
ナイトさんと局長の会話が無線越しに聞こえてくる。
確かに、局長の言う通り最高難易度という割にはこの森、魔物も危険な動物も存在していなかった……。
しかし、疑問には思えど満月草はすぐ目の前。
私は耳を傾けながら、岩を上るために手をかける……瞬間。
地響きが起こり……その巨大な岩が立ち上がる。
いや。岩だと思っていた何かが起き上がった。
「満月草は必ず竜の背中に生えるものだからだろう」
【あんだぁ? てめぇ?】
考えているのなら……その考えをこれからは私に伝えてほしい。
巨大な竜の怒号と一緒に森に絶叫を響かせながら、私はそう思うのでありました。
草や木はどれも緑色に輝き、木々の間から差し込む光を吸収し、森の中を美しいエメラルドグリーン色に染め上げている。
その場所に咲き誇る花々、そして生い茂る三日月草。
森の中の草木は、一本の例外もなくまるで自分たちは主人公である……そう誇るかのように胸を張っていた。
「澄んだ魔力がたまっているね。森はもともと命にあふれているから魔力が濃い場所だけど、とても純度の高い魔力が流れているよ」
そう局長はモニター越しに呟き、私は大きく森の空気を吸い込む。
「本当です……結構歩いたはずなのに疲労を感じません」
「そうだねえ……そういえば」
私の言葉に、局長は何かをふと思ったのか声をかけてくる。
「どうしたんですか局長?」
「いや、森の中颯爽と歩いているところ悪いし、今更聞くのかって言われたらぎゃふんというしかないんだけど……さっきからナイト君ずんずん進んでいってるけど、満月草の場所わかるの?」
「今更それを聞くのか?」
「ぎゃふん」
ナイトさんの発言に局長はそうふざけた言葉を漏らすが、しかし思ってみればそうだ。
先ほどからナイトさんが自信満々に先に進んでいってしまうためになんとなく後をついて言っていたが……そもこの森に入るのも初めてなナイトさんが、どうして満月草が自生しているところを知っているのだろう。
まさかいくら何でも知らずに歩いているということはないだろうが、それでも私は不安になったのでナイトさんに聞いてみる。
「え、今更ですけど。ナイトさん、満月草の生えてる場所わかるんですか?」
「知らんが?」
知らなかった。
「なっ!? だって君あんなに自信満々……なのはいつものことか!」
「ちょっ、どうするんですか! この森結構広いですよ! やみくもに歩き回ったって見つかるわけが……」
そういうと、ナイトさんは肩を一つすくめ。
「落ち着けマスター。確かに生えている場所は知らないが、生えているところは知っている」
「? それはどういう……」
言っていることは同じなような気もするが、とりあえず生えているっぽい場所に検討はついているということだろうか?
私はその真意を聞こうとするが。
「ふむ、思ったよりも早くついたな。 マスター、到着だ」
そういうとナイトさんは絡みついたつたを手でちぎり、その先を私に見せてくる。
そこは。
「……これは……」
そこは森の中にぽっかりと空いたような草原。
森を抜けたわけではなく、四方を森で囲まれた森の中の草原には、たくさんの三日月草が太陽の光を燦燦と浴びて、見たこともないくらい大きく育っている。
中心にはひなたぼっこをするかのように、巨大な大岩が座り込んでいる。
「人の手が加えられてる様子もない……自然に作られた森の中の平原のようだね……確かに、自然にもできる例は
なくはないけど……でもここはまるで」
「人の手で作られたように、きれいな円形をしているだろう?」
モニターをしている局長は、俯瞰からの情報を得たのか、息をのんでそんな言葉を漏らす。
ここに立っている私はなんとなくしかわからなかったが、少なくともこの場所が普通と違う、ということだけはなんとなく肌で感じることができた。
「森に隠れた満月に自生する薬草……満月草と呼ばれるゆえんだ。あまりにも見つける難易度が高いために、俺たちの世界では運営が飛行の魔法を実装した……というのが有名な話だ。真意のほどは分からんが」
ウン=エイという人物の名前が出て、私はふとおばあちゃんに聞いた話を思い出す。
時に狂い、時に人々に富と幸福をもたらした勇者様の世界の神様。
世界を拡張したり力を与えたり奪ったりする、気まぐれな神様だったとか……。
「なるほどね、咲いてるところを知っているっていうのはそういうことだったんだね」
「あぁ、満月草を見つけるのは、この地形を探すのが一番難しいが、自生している場所さえ押さえてしまえば探すのは簡単だ」
誇らしげにそう語るナイトさん。
「あ、あの岩の上……スケッチの形と同じですよナイトさん!」
意外にも、満月草は簡単に発見ができた。
「そうだな、間違いない。あんなところに生えるのは満月草くらいだ」
その数も一本や二本ではない、巨大な大岩の背中に群生するかのように、大量の満月草がそよ風に揺られている。
「……私、取ってきます!」
「しかし、君の言う通り生えている場所さえ分かれば随分と簡単な依頼だけど……どうして最高難易度クエストに指定されているんだろうね?」
「あぁ、それは」
ナイトさんと局長の会話が無線越しに聞こえてくる。
確かに、局長の言う通り最高難易度という割にはこの森、魔物も危険な動物も存在していなかった……。
しかし、疑問には思えど満月草はすぐ目の前。
私は耳を傾けながら、岩を上るために手をかける……瞬間。
地響きが起こり……その巨大な岩が立ち上がる。
いや。岩だと思っていた何かが起き上がった。
「満月草は必ず竜の背中に生えるものだからだろう」
【あんだぁ? てめぇ?】
考えているのなら……その考えをこれからは私に伝えてほしい。
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