16 / 84
第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました
9
しおりを挟む
「ほ、 本当にここに泊まるんですか?」
あわわ。
門番が二人もいるじゃないですか。 ひょっとして、貴族御用達のホテルということですか。
一般庶民の私には敷居が高すぎますよ!
「 何を萎縮しているのじゃ?」
リゼは 余裕たっぷりで、雰囲気に飲まれることはありません。 私と違って、高級感あふれる場所には慣れているのでしょう。
「 お楽しみで何よりですね」
「 外泊は初めてじゃからの。 こんな機会を心待ちにしておったのじゃ」
素敵な笑顔をしていらっしゃいますね。 まるで無邪気な子供のようです。
リゼの 身分なら仕方がないのかもしれません。 きっと今までは、箱入り娘のような生活をしていたのでしょう。
・・・・・・いえ、 武器屋のバルトと 既に知り合いだったから、 何度もお住まいの 場所から抜け出してるって事ですよね。
でも、リゼの 心から嬉しそうな表情を 眼にしたら、 なんだかこっちまで気分が良くなってきますよ。
さあ、意を決してホテルの中に参りましょうか。
「・・・・・・ 悪いが俺は 、 別行動をさせてもらう」
ちょっと、ガルヴァス!? せっかく私が覚悟を決めたのに、それはないじゃないですか!
リゼが 可愛らしく首をかしげます。
「 どうかしたのかの?」
「あっ、いや・・・・・・ 冒険者の店の方が 稽古をできるからな」
ガルヴァスが 言っていることはおそらく本当のことでしょう。
アシュトンも訓練を欠かさないために、わざと冒険者の店に好んで泊まっていました。
でも、狡くないですか!
神殿の生活のお陰で行儀よく食事をする ことを心がけることはできても、 貴族の専門的な礼儀作法は全く知らないのですよ。 私だって肩が凝るような場所にはいたくありません。
いや、 冒険者の店もまずいかもしれません。 アシュトンは様々な冒険者たちと 実践訓練をするために、 毎日宿を変えてるんですよね。 ヘタをすればぱったりと鉢合わせする可能性があります。
くうっ。
消去法で セレブリティなホテルに泊まるしかなさそうです・・・・・・。
正面玄関を抜けると、光沢のある真っ白な大理石の床が眼に飛び込んで来ました。天井には無数の、【ライト】の魔法を発動する魔道具が備え付けられています。
さすが高級ホテルは違いますね。
宿の木の温もりのホッと落ち着く和やかさが好きですけど、派手すぎない華美なる高貴さも安らぎます。
白を基調とした建物は、神殿に似た印象を与えるから、思ったよりかは 緊張せずにすんでいるのかもしれませんね。
冒険で汚れてしまった靴で足を踏み入れていいものか躊躇ってしまうところですが、 私は思い切って最初の一歩を 床に乗せました。
「おおっ! 私、入れましたよ」
涙が出るほど感動していますよ。 人間、やればできるものなんですね。
「 何を当たり前のことを・・・・・・ん? あれは!」
呆れたように 苦笑いを浮かべたリゼは、 途中で何かに気づいて走り出してしまいました。
目線を向けると、マチルダとその仲間たちがソファーに座っていました。
リゼは 瞳をキラキラと輝かせて、 マチルダにサイン色紙とペンを渡しています。
「 サインを頼むのじゃ!」
「はい。 これでいいかしら」
マチルダはスラスラとペンを走らせて、 笑顔でリゼに サイン色紙を渡しました。 嫌な顔ひとつせずファンサービスを実行するとは、勇者の鏡ですね。
・・・・・・ガルヴァスが 別行動を したがる理由が わかりました。 私がアシュトンと顔を合わせたくないように、ガルヴァスは マチルダの視界に入る場所にいたくなかったのですね。
マチルダは、リゼの頭を撫でました。
「 こんなに小さな 女の子にも、私のファンがいてくれるのね。嬉しいわ。 おいくつ?」
ああー、 なるほど。 そういうことですか。
神殿では 外界のことを教えてくれないから、 私はドワーフの事を知らなくて、エイミアに からかわれたことがありました。
きっと、 マチルダも以前の私のようにドワーフの存在を知らないのでしょう。
「 14なのじゃ」
それ、 頭に「永遠」のがつくやつですよね。
リゼ 一人だと暴走する可能性があります。 普段はしっかりとした印象なのに、聖女や 勇者関係のことになると目の色が変わるようですからね。
私がフォローに入ることにしましょう。
あれ?
なんだか不思議な臭いがします。香水の香りでしょうか。 マチルダから独特の香りが漂ってきます。
冒険の後は汗で臭うから、 おそらくエチケット として香水をふりかけているのでしょう。
「 マチルダさん、こんばんは」
私が 軽く会釈をすると、 マチルダは目を細めて喜びました。
「 聖女のルナマリアさんに名前を覚えてもらえてるなんて、とっても嬉しいわ」
いえ、ガルヴァスとの やり取りがなければ全く知りませんでした。 なんて言えるはずがないですよね。
「 私も有名なマチルダさんに気にかけてもらえるなんて光栄ですよ」
これで社交辞令はバッチリですね。
「 有名どころの 騒ぎではないのじゃぞ」
リゼが マチルダについて力説してくれました。
最近は魔物が活発化していて、馬車の移動が難しいようです。すると、 他国との貿易がままならなくなります。 旅行などはもってのほかです。
そんな困った人たちを見かねたのか、 マチルダは積極的に馬車の護衛を行っているようです。 しかも 貧しい者からは 報酬を一切いただかずに、 それどころか逆に施しを与えているようです。
やはり勇者はこうでなければいけませんね。
私が知らなかっただけで、ガルヴァスは 戦力外通告による離脱のようでしたから、 きっと彼とマチルダは個人的ないざこざで揉めていたのでしょう。
どこかの猪突猛進な馬鹿勇者とは大違いですよ。
アシュトンは、わざわざ眠っているドラゴンに 戦いを挑むようなことばかりしていました。
その点、 マチルダは襲われている人たちを 颯爽と助け出しています。
「 私もマチルダさんのような 勇者の仲間になりたかったですよ」
「 私は大歓迎よ。いつでもおいで」
「 待つのじゃ。 ルナマリアはわしの護衛があるじゃろ」
せっかくマチルダさんがパーティー勧誘をしてくれているというのに、リゼが 邪魔をしてくれます。
私に何か恨みでもあるんですか!
あわわ。
門番が二人もいるじゃないですか。 ひょっとして、貴族御用達のホテルということですか。
一般庶民の私には敷居が高すぎますよ!
「 何を萎縮しているのじゃ?」
リゼは 余裕たっぷりで、雰囲気に飲まれることはありません。 私と違って、高級感あふれる場所には慣れているのでしょう。
「 お楽しみで何よりですね」
「 外泊は初めてじゃからの。 こんな機会を心待ちにしておったのじゃ」
素敵な笑顔をしていらっしゃいますね。 まるで無邪気な子供のようです。
リゼの 身分なら仕方がないのかもしれません。 きっと今までは、箱入り娘のような生活をしていたのでしょう。
・・・・・・いえ、 武器屋のバルトと 既に知り合いだったから、 何度もお住まいの 場所から抜け出してるって事ですよね。
でも、リゼの 心から嬉しそうな表情を 眼にしたら、 なんだかこっちまで気分が良くなってきますよ。
さあ、意を決してホテルの中に参りましょうか。
「・・・・・・ 悪いが俺は 、 別行動をさせてもらう」
ちょっと、ガルヴァス!? せっかく私が覚悟を決めたのに、それはないじゃないですか!
リゼが 可愛らしく首をかしげます。
「 どうかしたのかの?」
「あっ、いや・・・・・・ 冒険者の店の方が 稽古をできるからな」
ガルヴァスが 言っていることはおそらく本当のことでしょう。
アシュトンも訓練を欠かさないために、わざと冒険者の店に好んで泊まっていました。
でも、狡くないですか!
神殿の生活のお陰で行儀よく食事をする ことを心がけることはできても、 貴族の専門的な礼儀作法は全く知らないのですよ。 私だって肩が凝るような場所にはいたくありません。
いや、 冒険者の店もまずいかもしれません。 アシュトンは様々な冒険者たちと 実践訓練をするために、 毎日宿を変えてるんですよね。 ヘタをすればぱったりと鉢合わせする可能性があります。
くうっ。
消去法で セレブリティなホテルに泊まるしかなさそうです・・・・・・。
正面玄関を抜けると、光沢のある真っ白な大理石の床が眼に飛び込んで来ました。天井には無数の、【ライト】の魔法を発動する魔道具が備え付けられています。
さすが高級ホテルは違いますね。
宿の木の温もりのホッと落ち着く和やかさが好きですけど、派手すぎない華美なる高貴さも安らぎます。
白を基調とした建物は、神殿に似た印象を与えるから、思ったよりかは 緊張せずにすんでいるのかもしれませんね。
冒険で汚れてしまった靴で足を踏み入れていいものか躊躇ってしまうところですが、 私は思い切って最初の一歩を 床に乗せました。
「おおっ! 私、入れましたよ」
涙が出るほど感動していますよ。 人間、やればできるものなんですね。
「 何を当たり前のことを・・・・・・ん? あれは!」
呆れたように 苦笑いを浮かべたリゼは、 途中で何かに気づいて走り出してしまいました。
目線を向けると、マチルダとその仲間たちがソファーに座っていました。
リゼは 瞳をキラキラと輝かせて、 マチルダにサイン色紙とペンを渡しています。
「 サインを頼むのじゃ!」
「はい。 これでいいかしら」
マチルダはスラスラとペンを走らせて、 笑顔でリゼに サイン色紙を渡しました。 嫌な顔ひとつせずファンサービスを実行するとは、勇者の鏡ですね。
・・・・・・ガルヴァスが 別行動を したがる理由が わかりました。 私がアシュトンと顔を合わせたくないように、ガルヴァスは マチルダの視界に入る場所にいたくなかったのですね。
マチルダは、リゼの頭を撫でました。
「 こんなに小さな 女の子にも、私のファンがいてくれるのね。嬉しいわ。 おいくつ?」
ああー、 なるほど。 そういうことですか。
神殿では 外界のことを教えてくれないから、 私はドワーフの事を知らなくて、エイミアに からかわれたことがありました。
きっと、 マチルダも以前の私のようにドワーフの存在を知らないのでしょう。
「 14なのじゃ」
それ、 頭に「永遠」のがつくやつですよね。
リゼ 一人だと暴走する可能性があります。 普段はしっかりとした印象なのに、聖女や 勇者関係のことになると目の色が変わるようですからね。
私がフォローに入ることにしましょう。
あれ?
なんだか不思議な臭いがします。香水の香りでしょうか。 マチルダから独特の香りが漂ってきます。
冒険の後は汗で臭うから、 おそらくエチケット として香水をふりかけているのでしょう。
「 マチルダさん、こんばんは」
私が 軽く会釈をすると、 マチルダは目を細めて喜びました。
「 聖女のルナマリアさんに名前を覚えてもらえてるなんて、とっても嬉しいわ」
いえ、ガルヴァスとの やり取りがなければ全く知りませんでした。 なんて言えるはずがないですよね。
「 私も有名なマチルダさんに気にかけてもらえるなんて光栄ですよ」
これで社交辞令はバッチリですね。
「 有名どころの 騒ぎではないのじゃぞ」
リゼが マチルダについて力説してくれました。
最近は魔物が活発化していて、馬車の移動が難しいようです。すると、 他国との貿易がままならなくなります。 旅行などはもってのほかです。
そんな困った人たちを見かねたのか、 マチルダは積極的に馬車の護衛を行っているようです。 しかも 貧しい者からは 報酬を一切いただかずに、 それどころか逆に施しを与えているようです。
やはり勇者はこうでなければいけませんね。
私が知らなかっただけで、ガルヴァスは 戦力外通告による離脱のようでしたから、 きっと彼とマチルダは個人的ないざこざで揉めていたのでしょう。
どこかの猪突猛進な馬鹿勇者とは大違いですよ。
アシュトンは、わざわざ眠っているドラゴンに 戦いを挑むようなことばかりしていました。
その点、 マチルダは襲われている人たちを 颯爽と助け出しています。
「 私もマチルダさんのような 勇者の仲間になりたかったですよ」
「 私は大歓迎よ。いつでもおいで」
「 待つのじゃ。 ルナマリアはわしの護衛があるじゃろ」
せっかくマチルダさんがパーティー勧誘をしてくれているというのに、リゼが 邪魔をしてくれます。
私に何か恨みでもあるんですか!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,029
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる