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結婚式が始まり、アリアナが入場するとあちらこちらから感嘆のため息が漏れ聞こえてきた。
つい先ほどまでは、アリアナの二度目の結婚を揶揄して、嘲り笑っていた者たちも、彼女の華やいだ美貌に完全に目を奪われている。

「アリアナ嬢、クレメント殿の時も美しいとは思ったが…」
「ああ。今日の姿を見れば、あの時の結婚式がいかにやる気がなかったか分かるというものだ」

アリアナの賛辞と同時にひそひそとクレメントを揶揄する声を聞いて、ベスとユージンは思わず顔を見合わせて笑い合わずにはいられなかった。

「さすがアリアナ様です。」
「まぁ、赤い髪であの色のドレス着られたらね」
「ケイビス様への深い愛情を感じます」

うっとりした表情でアリアナを見つめるベスにユージンは苦笑いした。


「それでは、誓いのキスを」

その言葉と共に二人が唇を重ねた瞬間、周りから温かな拍手が湧き起こった。
アリアナは微かに潤む瞳でケイビスを見上げた。その瞳に優しく微笑みかけた後ケイビスは一歩下がり、膝をついてアリアナの手を取りキスをする。
アリアナがびっくりするとともに割れんばかりの拍手が起こるのはほぼ同時だった。

「ケイビス様…素敵です」
「ベス、僕の横で言わないで」
「でも、あんな…生涯の愛だけでなく忠誠まで誓われるなんて…アリアナ様は本当に愛されておいでですのね」
「僕も結婚式でやろうか?」

冗談めかして尋ねたユージンにベスは生温かい視線を向けると、ふるふると頭を振った。

「結構です。」
「え、なんで」
「ユージン様がされると…わざとらしいので」
「ひどい…」

わざとらしく肩を落としたユージンを無視して、ベスは再び視線をアリアナの方へ向けた。

「今日はお集まりいただきありがとうございます。
ご存知の通り、妻のアリアナがハンゼ公爵領に嫁いで来るのは二度目です。」

予想もしなかったケイビスの挨拶の言葉に場が一瞬静まる。

「一度目はハンゼ公爵領を救う英雄として。二度目は私の恋心に応えてくれた美しい一人の女性として。
これからは二人で手を取り合って歩んで行きたいと思いますので、暖かく見守っていただけると幸いです。」

その挨拶が終わると、わっと再び会場は盛り上がった。

「なるほど、クレメント殿の代わりに領地を立て直されたと言うのは本当だったんだな。」
「形だけの結婚のつもりが、真実の愛を見つけられたのか」
「はは。ドレスや髪色だけでなく、芯の強さや領民思いなところはまるでクルーゼの女王だな」

そんな声が聞こえてきて、ユージンはにやりと笑った。

「さすがケイビス様。クレメントとの結婚は実態を伴わないものだったから、姉さんは不義理でも何でもないと印象づけたな」
「ええ、それどころか清廉な乙女と皆さんは思われたはずです。」
「うん、そうだね。」

二人は微笑みながら、幸せそうに互いを見つめ合うケイビスとアリアナに盛大な拍手を送った。
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