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第二章
猫の戯れ 2
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静まり返った九条邸は、時間も時間だから静まり返っている。
朝帰ると思われていても、気づかれれば誰かしら世話を焼きにくる人間もいる。
それも申し訳なく、家人を起こすまいと明かりも付けずに自室を目指して広い廊下を歩くことにする。
だが。
風人の希望は叶わなかったらしい。
パッと急に灯りがついた。
「あれぇ?今日は朝帰りの予定じゃなかったの?風人くん」
カラッと明るい声が掛けられ、視線の先には細身のすらりとしたショートカットの女性が立っていた。
どこかネコ科の生き物を想像させる美人。
夜中だと言うのに、その姿に良く似合う動きやすそうなパンツスーツに身を包んでいて、まるで風人を待っていたようなタイミングだった。
「弥生さん」
流石に驚いたような顔を見せる。
夕凪弥生。風人より一つ歳は上で、シティ情報誌の編集部に勤めている。
過去には女性誌の読者モデルをやっていたというだけあって、高身長でスタイルも良い。
にっこり笑って大概相手の反応を楽しんでいるという、些か面倒なタイプでもあった。
親戚でもなんでもないのだが、この九条邸での自由な出入りを許されている特別な女性だ。
風人は軽く笑って、肩を竦めた。
「確かに。大学の連中と朝までの予定だったんですが。明日も昼から講義もあるし、自重してきましたよ」
にっこり笑ってみせれば、弥生はその笑顔をじぃっと見て、クスクスと笑った。
「何か?」
「だってー。なんかいつもより輪を掛けていい笑顔なんだもん。胡散臭い」
ニヤニヤと返事をした弥生に、風人は澄ました表情だ。
「飲んでますからね。ちょっと酔ってるんでしょ」
「ああ、そう。ふうん」
弥生は自分から胡散臭いと言いつつ、ことの真偽はどっちでもいいと言わんばかりの様子だ。
それが何か含みを持たせていて、何が言いたいのかと風人は疑問に思った。
ただ絡みたいだけで、わざわざこんな夜中に捕まえてくる相手ではない。
「で、何の御用で?」
「うんうん。あのね」
実に楽しそうに軽快なステップで距離を詰めると、弥生は目をキラキラさせてわざとらしく首を傾げた。
「風人くんにストーカーがいるって聞いたんだけどさあ」
「…珪ですか?…」
口が軽いとも思わなかったが、その話ならば出どころは疑いようがなかった。
男同士の雑談が、こうして弥生に伝わっているというのは、些か珪らしくもない。何か理由があるんだろうか。呆れるというよりも単純に不思議で眉を顰めた。
弥生は軽く頷いた。
「情報の出どころはそうね」
「あいつにも言いましたけど、ストーカーじゃないですよ。どっちかと言えば嫌われてるんですから」
「でも可愛いんでしょ?」
にっこり笑った弥生に、風人は言葉に詰まった。
弥生は心底『可愛い女子好き』だ。
結婚まで誓った最上の恋人を持ちながら、趣味の一つは『可愛い女子鑑賞』
九条邸でも、紅一点の雪乃嬢の傍にご満悦で鎮座するのは常だ。
風人のストーカーだろうが、風人を嫌ってようが、可愛いは正義!
見てみたい話してみたい、の主張はお手の物の筈だ。
しかしその願いを叶えてほしいというのが、要件だとすれば如何ともしがたい。
朝帰ると思われていても、気づかれれば誰かしら世話を焼きにくる人間もいる。
それも申し訳なく、家人を起こすまいと明かりも付けずに自室を目指して広い廊下を歩くことにする。
だが。
風人の希望は叶わなかったらしい。
パッと急に灯りがついた。
「あれぇ?今日は朝帰りの予定じゃなかったの?風人くん」
カラッと明るい声が掛けられ、視線の先には細身のすらりとしたショートカットの女性が立っていた。
どこかネコ科の生き物を想像させる美人。
夜中だと言うのに、その姿に良く似合う動きやすそうなパンツスーツに身を包んでいて、まるで風人を待っていたようなタイミングだった。
「弥生さん」
流石に驚いたような顔を見せる。
夕凪弥生。風人より一つ歳は上で、シティ情報誌の編集部に勤めている。
過去には女性誌の読者モデルをやっていたというだけあって、高身長でスタイルも良い。
にっこり笑って大概相手の反応を楽しんでいるという、些か面倒なタイプでもあった。
親戚でもなんでもないのだが、この九条邸での自由な出入りを許されている特別な女性だ。
風人は軽く笑って、肩を竦めた。
「確かに。大学の連中と朝までの予定だったんですが。明日も昼から講義もあるし、自重してきましたよ」
にっこり笑ってみせれば、弥生はその笑顔をじぃっと見て、クスクスと笑った。
「何か?」
「だってー。なんかいつもより輪を掛けていい笑顔なんだもん。胡散臭い」
ニヤニヤと返事をした弥生に、風人は澄ました表情だ。
「飲んでますからね。ちょっと酔ってるんでしょ」
「ああ、そう。ふうん」
弥生は自分から胡散臭いと言いつつ、ことの真偽はどっちでもいいと言わんばかりの様子だ。
それが何か含みを持たせていて、何が言いたいのかと風人は疑問に思った。
ただ絡みたいだけで、わざわざこんな夜中に捕まえてくる相手ではない。
「で、何の御用で?」
「うんうん。あのね」
実に楽しそうに軽快なステップで距離を詰めると、弥生は目をキラキラさせてわざとらしく首を傾げた。
「風人くんにストーカーがいるって聞いたんだけどさあ」
「…珪ですか?…」
口が軽いとも思わなかったが、その話ならば出どころは疑いようがなかった。
男同士の雑談が、こうして弥生に伝わっているというのは、些か珪らしくもない。何か理由があるんだろうか。呆れるというよりも単純に不思議で眉を顰めた。
弥生は軽く頷いた。
「情報の出どころはそうね」
「あいつにも言いましたけど、ストーカーじゃないですよ。どっちかと言えば嫌われてるんですから」
「でも可愛いんでしょ?」
にっこり笑った弥生に、風人は言葉に詰まった。
弥生は心底『可愛い女子好き』だ。
結婚まで誓った最上の恋人を持ちながら、趣味の一つは『可愛い女子鑑賞』
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