19 / 95
第二章
猫の戯れ 3
しおりを挟む
ポーカーフェイスに笑顔を張り付けたまま出方を伺うべく言葉を待っていると、弥生はフフンと鼻で笑った。
「私ね。ちょうど育ちが良くて、頭が良くて、私のことを助けてくれる、とびきり可愛い子を探していたのよ」
「……?」
「やっぱりどうせなら関わるなら可愛くなくちゃ嫌じゃない?そしたらたまたま、珪くんがその子のことを思い出して。適任じゃないかって。調べてみたらものすごくちょうど良いのよね」
話が見えない。そこまで詳しく珪に瑞華のことを話してもいない。だが、ある程度把握しているという言い方だ。
流石に眉を顰めて疑問を表すと、弥生は悪い笑顔でニヤリと笑った。
「調べる…?」
「この家に出入りしたことがある家柄の子で、風人くんと同じ大学に通っている女子なんて限られるんでしょう?」
「まさか、その話だけで?」
確かにその話なら珪にも漏らしたが、そんな僅かな情報で…という驚きだ。
「あらいやだ。この家には、その話だけで十分に仕事が出来る人がいるじゃない?」
「つまり、兄貴が?」
「はい!ご名答」
大正解と見せられた笑顔に、風人はさすがに絶句した。
確かに弥生なら、九条次期当主たる月人を動かすのはさぞ容易いだろう。
そして、風人と同じ大学に通っている娘のいる、九条に出入りがあった家柄の人間くらい、その人ならばすぐに検討もつくはずだ。
個人さえ特定できれば、その後は人を使って調べることなんて容易い。
さぞや迅速にかつ正確に行われているはずである。
その口ぶりから、結果が既に弥生に渡っているのも分かる。
「それで私のお願いごとを花宮瑞華さんにすることに決定しました!というお知らせを風人くんにね。いやあ、写真を見たら、本当に美人で可愛くてびっくりしちゃった。風人くんの大学ミスコンとかしないわけ?あれはいいわあ。写真集つくりたいわぁ。うん、風人くんたら、良い素材を寄せてくれてるわ」
「お願いごとってなんですか?」
なるべくにこやかに話を聞き出そうとするが、弥生は風人の内心を透かしみるように笑っている。
「あら。瑞華ちゃんにとってもメリットのあるお願いよ」
「へえ」
こうなるとどうしようもないなと、どこか諦めつつ、調べられてるならいいかと雑な気持ちになる。
繋いだ言葉は少々投げやりになった。
「なら、嫌がってる結婚でもおじゃんにしてあげるんですか?」
「え?そんな話もあるの?」
驚いたように目を丸くした弥生に、しまったと口をつぐんだが、もう遅い。
下手に餌を与えてしまった気がする。
「私ね。ちょうど育ちが良くて、頭が良くて、私のことを助けてくれる、とびきり可愛い子を探していたのよ」
「……?」
「やっぱりどうせなら関わるなら可愛くなくちゃ嫌じゃない?そしたらたまたま、珪くんがその子のことを思い出して。適任じゃないかって。調べてみたらものすごくちょうど良いのよね」
話が見えない。そこまで詳しく珪に瑞華のことを話してもいない。だが、ある程度把握しているという言い方だ。
流石に眉を顰めて疑問を表すと、弥生は悪い笑顔でニヤリと笑った。
「調べる…?」
「この家に出入りしたことがある家柄の子で、風人くんと同じ大学に通っている女子なんて限られるんでしょう?」
「まさか、その話だけで?」
確かにその話なら珪にも漏らしたが、そんな僅かな情報で…という驚きだ。
「あらいやだ。この家には、その話だけで十分に仕事が出来る人がいるじゃない?」
「つまり、兄貴が?」
「はい!ご名答」
大正解と見せられた笑顔に、風人はさすがに絶句した。
確かに弥生なら、九条次期当主たる月人を動かすのはさぞ容易いだろう。
そして、風人と同じ大学に通っている娘のいる、九条に出入りがあった家柄の人間くらい、その人ならばすぐに検討もつくはずだ。
個人さえ特定できれば、その後は人を使って調べることなんて容易い。
さぞや迅速にかつ正確に行われているはずである。
その口ぶりから、結果が既に弥生に渡っているのも分かる。
「それで私のお願いごとを花宮瑞華さんにすることに決定しました!というお知らせを風人くんにね。いやあ、写真を見たら、本当に美人で可愛くてびっくりしちゃった。風人くんの大学ミスコンとかしないわけ?あれはいいわあ。写真集つくりたいわぁ。うん、風人くんたら、良い素材を寄せてくれてるわ」
「お願いごとってなんですか?」
なるべくにこやかに話を聞き出そうとするが、弥生は風人の内心を透かしみるように笑っている。
「あら。瑞華ちゃんにとってもメリットのあるお願いよ」
「へえ」
こうなるとどうしようもないなと、どこか諦めつつ、調べられてるならいいかと雑な気持ちになる。
繋いだ言葉は少々投げやりになった。
「なら、嫌がってる結婚でもおじゃんにしてあげるんですか?」
「え?そんな話もあるの?」
驚いたように目を丸くした弥生に、しまったと口をつぐんだが、もう遅い。
下手に餌を与えてしまった気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる