22 / 95
第二章
月に導かれるなら 2
しおりを挟む
「何?お母様」
「瑞華ちゃん!それがとっても大変なのよ。でも素敵なお話しよ。今、九条家の方から連絡を頂いてね。うちの会社の援助がしたいってことなの」
娘に答えてもらったことに安心したのか、ふんわり、にっこりと夢見るように笑い告げられた言葉は思いもよらぬ内容だ。
流石に寝ていたい気持ちは吹き飛び、は?と起き上がる。
「九条家?」
「そう。ふふっ、なんだか夢みたいね。幸運なことだわ。
それでね、瑞華ちゃんにちょっと話を聞いてきて貰いたいの」
・・・・・・はぁ?
病気ということになっている娘に何を言うのかと固まる瑞華の表情に何を感じたのか、両手を胸の前で組み、お願い、と上目遣いで見られる。
「急ぎのお話みたいだけど、お母様、会社のことはよく分からないし、お友達に誘われているお茶会にも行かなきゃいけないのよ。だから瑞華ちゃんに行ってもらうのが一番なの」
何、それ?
ぐらん、と頭が回る。
もう瑞華が行くことは決まっているらしい。体調が悪いと言っている娘に対する言葉としては非常に勝手な言い分ではある。
だが。
だが、だ。
「瑞華ちゃんで大丈夫な話って九条家の次期様も言われててね。むしろ瑞華ちゃんが適任なんですって」
そう言葉が足されれば話は別だ。
次期様?
その言葉には食らいつきたい気持ちになる。
次期様。
九条家の次期様と言えば。
「お、お母様、その次期様って・・・まさか・・・」
恐る恐る、まさかまさか、と伺うと、
母はふふっと笑って告げた。
「あらやだ、九条家の次期様っていったらね、九条月人さんのことよ?知らないの?」
知ってます、知ってますとも。
体に元気が注入される気がした。
まるでドーピング後のようになんでもしたくなり、起き上がった。
夏風邪なんて嘘はもうどうでもいいではないか。
そんなものは存在したとしても霞む話だ。
次期様だ、九条月人さんだ。
瑞華が心酔しきっている相手である。
具合が悪かったなんて建前はうっかり忘れてしまえばいい。
どうせ母親である人も気にしていないのだ。
(それもどうかとは思うが)
力強く了承して出かける準備を始めた。
一刻も早く、九条家に向かわなくてはいけない。
念入りの準備を素早く、正確に行わなければならないのだ。
一秒たりとも無駄にできないのだ。
そうして。
すっかり瑞華は忘れてしまった。
九条月人さんは
九条風人のお兄さんであるということを。
「瑞華ちゃん!それがとっても大変なのよ。でも素敵なお話しよ。今、九条家の方から連絡を頂いてね。うちの会社の援助がしたいってことなの」
娘に答えてもらったことに安心したのか、ふんわり、にっこりと夢見るように笑い告げられた言葉は思いもよらぬ内容だ。
流石に寝ていたい気持ちは吹き飛び、は?と起き上がる。
「九条家?」
「そう。ふふっ、なんだか夢みたいね。幸運なことだわ。
それでね、瑞華ちゃんにちょっと話を聞いてきて貰いたいの」
・・・・・・はぁ?
病気ということになっている娘に何を言うのかと固まる瑞華の表情に何を感じたのか、両手を胸の前で組み、お願い、と上目遣いで見られる。
「急ぎのお話みたいだけど、お母様、会社のことはよく分からないし、お友達に誘われているお茶会にも行かなきゃいけないのよ。だから瑞華ちゃんに行ってもらうのが一番なの」
何、それ?
ぐらん、と頭が回る。
もう瑞華が行くことは決まっているらしい。体調が悪いと言っている娘に対する言葉としては非常に勝手な言い分ではある。
だが。
だが、だ。
「瑞華ちゃんで大丈夫な話って九条家の次期様も言われててね。むしろ瑞華ちゃんが適任なんですって」
そう言葉が足されれば話は別だ。
次期様?
その言葉には食らいつきたい気持ちになる。
次期様。
九条家の次期様と言えば。
「お、お母様、その次期様って・・・まさか・・・」
恐る恐る、まさかまさか、と伺うと、
母はふふっと笑って告げた。
「あらやだ、九条家の次期様っていったらね、九条月人さんのことよ?知らないの?」
知ってます、知ってますとも。
体に元気が注入される気がした。
まるでドーピング後のようになんでもしたくなり、起き上がった。
夏風邪なんて嘘はもうどうでもいいではないか。
そんなものは存在したとしても霞む話だ。
次期様だ、九条月人さんだ。
瑞華が心酔しきっている相手である。
具合が悪かったなんて建前はうっかり忘れてしまえばいい。
どうせ母親である人も気にしていないのだ。
(それもどうかとは思うが)
力強く了承して出かける準備を始めた。
一刻も早く、九条家に向かわなくてはいけない。
念入りの準備を素早く、正確に行わなければならないのだ。
一秒たりとも無駄にできないのだ。
そうして。
すっかり瑞華は忘れてしまった。
九条月人さんは
九条風人のお兄さんであるということを。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる