散華へのモラトリアム

一華

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第二章

月に導かれるなら 2

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「何?お母様」 
「瑞華ちゃん!それがとっても大変なのよ。でも素敵なお話しよ。今、九条家の方から連絡を頂いてね。うちの会社の援助がしたいってことなの」 

娘に答えてもらったことに安心したのか、ふんわり、にっこりと夢見るように笑い告げられた言葉は思いもよらぬ内容だ。
流石に寝ていたい気持ちは吹き飛び、は?と起き上がる。 

「九条家?」 
「そう。ふふっ、なんだか夢みたいね。幸運なことだわ。 
それでね、瑞華ちゃんにちょっと話を聞いてきて貰いたいの」 

・・・・・・はぁ? 

病気ということになっている娘に何を言うのかと固まる瑞華の表情に何を感じたのか、両手を胸の前で組み、お願い、と上目遣いで見られる。 

「急ぎのお話みたいだけど、お母様、会社のことはよく分からないし、お友達に誘われているお茶会にも行かなきゃいけないのよ。だから瑞華ちゃんに行ってもらうのが一番なの」 

何、それ? 

ぐらん、と頭が回る。 
もう瑞華が行くことは決まっているらしい。体調が悪いと言っている娘に対する言葉としては非常に勝手な言い分ではある。 

だが。 
だが、だ。

「瑞華ちゃんで大丈夫な話って九条家の次期様も言われててね。むしろ瑞華ちゃんが適任なんですって」

そう言葉が足されれば話は別だ。

次期様? 

その言葉には食らいつきたい気持ちになる。 
次期様。 
九条家の次期様と言えば。 

「お、お母様、その次期様って・・・まさか・・・」 

恐る恐る、まさかまさか、と伺うと、 

母はふふっと笑って告げた。 
「あらやだ、九条家の次期様っていったらね、九条月人さんのことよ?知らないの?」 

知ってます、知ってますとも。 

体に元気が注入される気がした。 
まるでドーピング後のようになんでもしたくなり、起き上がった。
夏風邪なんて嘘はもうどうでもいいではないか。
そんなものは存在したとしても霞む話だ。

次期様だ、九条月人さんだ。
瑞華が心酔しきっている相手である。

具合が悪かったなんて建前はうっかり忘れてしまえばいい。
どうせ母親である人も気にしていないのだ。
(それもどうかとは思うが)
力強く了承して出かける準備を始めた。
一刻も早く、九条家に向かわなくてはいけない。
念入りの準備を素早く、正確に行わなければならないのだ。
一秒たりとも無駄にできないのだ。



そうして。
すっかり瑞華は忘れてしまった。


九条月人さんは

ということを。 
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