散華へのモラトリアム

一華

文字の大きさ
33 / 95
第三章

風雅なる訪れ 2

しおりを挟む
いざ口にしようとした時、初めてそのことに気付いて、瑞華の顔は急激に赤面してしまったのだ。
却ってそれは真実味を増したようだが、本当に本当に恥ずかしすぎて死にそうだった。
「九条風人さんが…その、そのですね」
言い出した言葉の一言一句を、両親が聞き逃すまいと待ち受けるあの表情。
もしかしたら一生忘れられないかもしれない。

どうにか一生懸命に説明して、当然の話ながら。
「それで瑞華ちゃんはどう思っているの?」
「まだ…急すぎて」
もう何も思いつかず、赤面した表情のまま伏せてしまった。
結果的にそれはもう都合よく理解してくださって。
良かったのか、何なのか分からない。

結局、九条家からの援助の話、風人さんがその陣頭指揮をする話をすれば、両親は思い通りの反応を示したのだ。
『鷹羽さんには悪いけれど、瑞華の幸せが一番だ』
『九条様の「風雅公」と呼ばれる方が力を試してほしいと言われるなら、お断りするなんてとんでもないわ。そのようにしましょう』
『まあ、表立ってどうこうするわけでもないし。こっそり招くなら良いだろう』

鷹揚な反応が、想像通りすぎて良かったのか何なのか。
しかし予想外の言葉も足された。
『瑞華ちゃんは、鷹羽さんのことも気になってきた所だもの。ゆっくり考えさせた方がいいわ』
『そうだな。娘の大切な将来だからな』

これには正直、絶句した。
いつ、一体いつ!?誰が??鷹羽氏に好意を見せた瞬間があったというのだ!?
しかも、いまでは九条風人にも気を寄せていることになっているのだから、どれだけ気が多い娘だと思っているのかと。そこはちょっとはたしめるところだろう、と。
言いそうになって辞めた。
どこを言い直しても、何か均衡が崩れてまずい気がしたのだ。
下手に突いて、じゃあ九条風人に決めるか?と言われても、困る。

そんな一通りの話が終わって、どっと疲れてから自室に戻ると携帯に風人からのメールが着信していることに気付いた。

『話ついた?どんな顔で報告してるのか見たかったよ』
……くっ。
見ているのは携帯の画面だというのに、何故か黒い笑いの風人の顔を思い出し、怒りで震えたのも、もしかしてお見通しだろうか。

瑞華は華屋本社の通路を風人と並んで歩きながら、その時のことを思い出して密かにもう一度怒りに震えた。
そしてそれをエネルギーにしようと、隣に並んだ風人にとびきり柔らかく愛らしく見えるように微笑んだ。

「来て頂けて、嬉しく思っています」
「良いねえ」
ククッと愉しそうに、しかし人前だからかどこか華やかな笑顔で笑われる。

「その澄ました顔もだけど、さっき俺に見惚れてただろ?気分がいい」

その言葉に、思わず瑞華の笑顔は引き攣った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...