散華へのモラトリアム

一華

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第三章

華はどこを向かされるのか 3

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「一年は長い」
ポツリと外の夜景を眺めつつ、鷹羽氏は言葉を吐き出す。
「…?」
何を言い出したのかと不思議に思い様子を伺うと、まるでそうすると分かっていたように笑う。

「勿論お待ちしますが、婚約を少々早めてほしいとは以前から花宮の社長にはお願いしています」
「…それは、大学卒業までと…」
「結婚を卒業後にすれば、問題ないはずかと。何か変わることがありますか?」
「……」
「何も変わらない。そういう風に動いている。だから待ちくたびれそうですよ」
じっと瑞華を流し見るその目に含まれた思いを感じて、ぞっとしたものを感じる。気付かない振りももはや難しい。
どうやら鷹羽のこの様子のおかしさは、華屋援助の代償をいい加減寄越せと言いたいらしい。
もしかしたら今まで瑞華の父が、それとなく今まで取り成していたものが、九条風人の登場によってなくなり、痺れを切らしかけているのかもしれない。
しかし、その代償と言えば、この場合。
言わずもがな、瑞華自身ということにならないだろうか。

「瑞華さん」
「はい…」
「ご存じですか?このホテルの部屋からの景色は、とても美しい」
鷹羽は、唇だけで笑って瑞華の動きを一つも見過ごすまいとするような目線だ。

「宜しければ今日、一緒に見ていくというのはどうです?」
「……」
いけないと思いつつ、瑞華は鷹羽の目から目線を外せない。
その目を欲に満ちていて、怖かった。

どうにかぎこちなく視線を外して、無理やり食事を一口運ぶ。
味も感じないまま、咀嚼して飲み込んでから、曖昧にほほ笑む。
「…困ります」
「そう、お困りになるでしょうね。私たちはまだ

それが理由ではないことは分かっているくせに、取って付けたような言い方をされる。
これは誘導だろうか、と瑞華は疑った。
婚約を早めるためのものか、もしくは瑞華を帰さないためのものか。
どちらにせよ、お断りだと思っている。
かと言って席を立つというのも良策な気はしない。

「瑞華さん」
「…はい」
「良い断り方を教えてあげましょうか」

そうして何気なくと言った様子で、自分の手を瑞華の方に突き出し、反対側の手でテーブルに頬杖をついた鷹羽から出た指示の言葉。
それを全て聞いてから、瑞華は一瞬固まった。
を撤回する気など、鼻からないに違いない。
楽しそうに瑞華の様子を眺めている姿に、ようやく分かった。
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