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第四章
波打ち際の風に 5
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「やっぱり、私に対するご褒美なんでしょうか?」
「どっちのご褒美にしろ、誘った女の子が来てるのに、迎えに来ないなんてあり得ないわね」
瑞華の独り言のような言葉に、弥生はふふんっと笑って、握りこぶしを作ってみせた。
その様子に瑞華は苦笑する。
「まあ、風人さんとは実際そういう関係ではないですから当然だと思います」
「あら、そう?」
ふふん、と笑ってから、弥生は瑞華を覗き込んだ。
じいっと探るような目線に、ドキドキしてしまう。
弥生の視線はまるで猫のように、何か含みを持つように感じてしまうのだ。
「な、なんですか?」
「瑞華ちゃん、本当に可愛いなあと」
「はぃい…?」
「ほら、好きの反対は無関心っていうじゃない?」
「はあ…」
弥生が、ニッと笑う意味がさっぱり分からなかった。
困惑する瑞華をしり目にわざとらしく弥生はため息をつく。
「ああ、でもダメねえ。チャンスはありそうなのに、我が義弟クンじゃあ頼りないわあ」
弥生は海に向かって仁王立ちしてから、挑戦的に笑ってから瑞華を振り返る。
「と、言うわけで」
そういってがっしり腕を掴んできた。
「私が瑞華ちゃんを楽しませないとね」
「…なんですか?この手は」
嫌な予感に振り払おうとするものの、逆にしっかりと抱き寄せられる。
「この場所はね、下の海に飛び込みも出来る場所なのよ」
「ぇ…?」
そうにっこり笑われて、瑞華の顔は引きつった。
この場所ということは、この岩場の先から海の中に、ということだろう。勿論。
見晴らしがいいだけあって、中々の高さがある。
そこから飛び込みをするというのは歓迎出来る事態ではない。
「しませんよ!?飛び込みませんよ!?」
「大丈夫、一緒にいきましょう」
「や、無理です!!」
慌てる瑞華をしっかり抱え込む弥生の力は想像以上に強い。
ずりずりと引きずられて、瑞華は慌てた。
「なんで弥生さん、そんなに力強いんですか!?」
「なんでって…合気道なら段持ちだけど、あれは関係ないか」
「あるでしょう!?絶対あります」
「あら、合気道って強さは存在しないのよ。合気道の”あい”は愛とも言うってね」
瑞華には訳の分からない理屈をこねつつ、弥生さんは楽しそうに崖っぷちに立つ。
「ほら瑞華ちゃん、このまま落ちたら危ないから、いい加減覚悟きめて」
「なんて勝手な人なんですか!」
「ほら、いくわよ。せーの」
タイミングを取られて、必死で瑞華は変に落ちたりしないように体形を整えた。
無情にもふわりと宙を滑るような感触があってから、ざぶんと水を潜る衝撃。
しっかりと沈み込み、ブクブクと周りに泡を感じて、水の中で視界が慣れると、海の天上がきらきらと輝いていた。
なんでこんなことになってるんだろうと思いつつ、瑞華は全身に海の感触を感じた。
「どっちのご褒美にしろ、誘った女の子が来てるのに、迎えに来ないなんてあり得ないわね」
瑞華の独り言のような言葉に、弥生はふふんっと笑って、握りこぶしを作ってみせた。
その様子に瑞華は苦笑する。
「まあ、風人さんとは実際そういう関係ではないですから当然だと思います」
「あら、そう?」
ふふん、と笑ってから、弥生は瑞華を覗き込んだ。
じいっと探るような目線に、ドキドキしてしまう。
弥生の視線はまるで猫のように、何か含みを持つように感じてしまうのだ。
「な、なんですか?」
「瑞華ちゃん、本当に可愛いなあと」
「はぃい…?」
「ほら、好きの反対は無関心っていうじゃない?」
「はあ…」
弥生が、ニッと笑う意味がさっぱり分からなかった。
困惑する瑞華をしり目にわざとらしく弥生はため息をつく。
「ああ、でもダメねえ。チャンスはありそうなのに、我が義弟クンじゃあ頼りないわあ」
弥生は海に向かって仁王立ちしてから、挑戦的に笑ってから瑞華を振り返る。
「と、言うわけで」
そういってがっしり腕を掴んできた。
「私が瑞華ちゃんを楽しませないとね」
「…なんですか?この手は」
嫌な予感に振り払おうとするものの、逆にしっかりと抱き寄せられる。
「この場所はね、下の海に飛び込みも出来る場所なのよ」
「ぇ…?」
そうにっこり笑われて、瑞華の顔は引きつった。
この場所ということは、この岩場の先から海の中に、ということだろう。勿論。
見晴らしがいいだけあって、中々の高さがある。
そこから飛び込みをするというのは歓迎出来る事態ではない。
「しませんよ!?飛び込みませんよ!?」
「大丈夫、一緒にいきましょう」
「や、無理です!!」
慌てる瑞華をしっかり抱え込む弥生の力は想像以上に強い。
ずりずりと引きずられて、瑞華は慌てた。
「なんで弥生さん、そんなに力強いんですか!?」
「なんでって…合気道なら段持ちだけど、あれは関係ないか」
「あるでしょう!?絶対あります」
「あら、合気道って強さは存在しないのよ。合気道の”あい”は愛とも言うってね」
瑞華には訳の分からない理屈をこねつつ、弥生さんは楽しそうに崖っぷちに立つ。
「ほら瑞華ちゃん、このまま落ちたら危ないから、いい加減覚悟きめて」
「なんて勝手な人なんですか!」
「ほら、いくわよ。せーの」
タイミングを取られて、必死で瑞華は変に落ちたりしないように体形を整えた。
無情にもふわりと宙を滑るような感触があってから、ざぶんと水を潜る衝撃。
しっかりと沈み込み、ブクブクと周りに泡を感じて、水の中で視界が慣れると、海の天上がきらきらと輝いていた。
なんでこんなことになってるんだろうと思いつつ、瑞華は全身に海の感触を感じた。
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