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第五章
空に咲く華 光は堕ちて 1
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どれだけ歩いたか。
縁日の喧騒に逆らうように、人気のない場所を歩く。
人が探したりしないような場所を選ぶために。
なんでこんなに悲しい気持ちになるのか。
…その資格があるのか。
自己嫌悪の波に揉まれてしまう。
巾着に入れた携帯が鳴っているが、どうすればいいのか分からない。
勿論、心配を掛けてはいけないとは思う。ならば出るのが正解だと言うのも分かっているけど。
着信音が途切れた所で、少し考えてから巾着から携帯を取り出した。
心配を掛けないために、出来ること。
出来ることをしよう。
そう言い聞かせて、着信履歴は確認せずに電話帳を開いた。
夕凪弥生の電話番号を選ぶと、電話を掛ける。
何コールかしてから、繋がった先にいつも通りの明るい声が響いた。
『はいはい。どうしたの?瑞華ちゃん』
「あ、弥生さん。あの…」
『ん?』
瑞華の声の暗さに何か察したのだろうか、弥生は様子を伺うように沈黙した。
何と言ったものかと、言葉を選んでいると、弥生から少しトーンが落ちた、だが優しい声が響く
『瑞華ちゃんたら、随分静かなところにいるのね。どこ?』
「えっと…」
どこかと聞かれて、辺りを見回す。通りの角に住所と番地が書かれていることに気付いて、素直にそれを伝えた。
『ふむ。風人くんは?』
「その…置いてきちゃいました」
『あらま』
弥生は軽く言ってから、クスクスと笑った。
楽しそうに、深く突っ込んだりはしない。
『それで、落ち込んでいるの?』
「……」
なんとも返す言葉がなく、瑞華は一瞬だまりこんだ。
落ち込みました、とは言ってはいけない気がして、話を切り替えた。
「多分、風人さんが探していると思うんですけど。…一人で帰ろうと思って。心配しないように伝えてほしいんです」
『ああ、なるほどねえ』
聞きたくなる状況だろうに、さして気にしないという様子で、弥生はうんうんと頷いた。それからはっきりと言った。
『伝えるのはいいけど、迎えに行くわ』
「え」
『瑞華ちゃんは今すぐ、最寄り駅まで行きなさい。女の子一人で帰るなんて大反対。良い?すぐに最寄り駅に行くの。じゃなきゃ、今すぐその場所、風人くんに連絡しちゃうから』
「そ、それは困ります!」
『じゃあ、約束。いいわね?』
断固とした物言いの弥生は誤魔化しても通用しなさそうだった。
迎えに来てもらうことは承諾しなければ、余計ことが大きくなりそうでもあった。
瑞華は観念して頷いた。
「…はい、分かりました」
『よろしい。何かあったら電話して?とりあえず駅で。どうせ近くにいるんだもの、すぐよ。じゃあ、またあとでね』
電話が切れて、ため息をついた。
思いもよらない展開になってしまっただが、そうすると言うのだから、逆らえないだろう。
今のこの心境で、九条風人と会うことは考えられないからずっといい。
我ながら卑怯な気もして、苦笑しつつ。
瑞華は駅に向かって歩きだした。
縁日の喧騒に逆らうように、人気のない場所を歩く。
人が探したりしないような場所を選ぶために。
なんでこんなに悲しい気持ちになるのか。
…その資格があるのか。
自己嫌悪の波に揉まれてしまう。
巾着に入れた携帯が鳴っているが、どうすればいいのか分からない。
勿論、心配を掛けてはいけないとは思う。ならば出るのが正解だと言うのも分かっているけど。
着信音が途切れた所で、少し考えてから巾着から携帯を取り出した。
心配を掛けないために、出来ること。
出来ることをしよう。
そう言い聞かせて、着信履歴は確認せずに電話帳を開いた。
夕凪弥生の電話番号を選ぶと、電話を掛ける。
何コールかしてから、繋がった先にいつも通りの明るい声が響いた。
『はいはい。どうしたの?瑞華ちゃん』
「あ、弥生さん。あの…」
『ん?』
瑞華の声の暗さに何か察したのだろうか、弥生は様子を伺うように沈黙した。
何と言ったものかと、言葉を選んでいると、弥生から少しトーンが落ちた、だが優しい声が響く
『瑞華ちゃんたら、随分静かなところにいるのね。どこ?』
「えっと…」
どこかと聞かれて、辺りを見回す。通りの角に住所と番地が書かれていることに気付いて、素直にそれを伝えた。
『ふむ。風人くんは?』
「その…置いてきちゃいました」
『あらま』
弥生は軽く言ってから、クスクスと笑った。
楽しそうに、深く突っ込んだりはしない。
『それで、落ち込んでいるの?』
「……」
なんとも返す言葉がなく、瑞華は一瞬だまりこんだ。
落ち込みました、とは言ってはいけない気がして、話を切り替えた。
「多分、風人さんが探していると思うんですけど。…一人で帰ろうと思って。心配しないように伝えてほしいんです」
『ああ、なるほどねえ』
聞きたくなる状況だろうに、さして気にしないという様子で、弥生はうんうんと頷いた。それからはっきりと言った。
『伝えるのはいいけど、迎えに行くわ』
「え」
『瑞華ちゃんは今すぐ、最寄り駅まで行きなさい。女の子一人で帰るなんて大反対。良い?すぐに最寄り駅に行くの。じゃなきゃ、今すぐその場所、風人くんに連絡しちゃうから』
「そ、それは困ります!」
『じゃあ、約束。いいわね?』
断固とした物言いの弥生は誤魔化しても通用しなさそうだった。
迎えに来てもらうことは承諾しなければ、余計ことが大きくなりそうでもあった。
瑞華は観念して頷いた。
「…はい、分かりました」
『よろしい。何かあったら電話して?とりあえず駅で。どうせ近くにいるんだもの、すぐよ。じゃあ、またあとでね』
電話が切れて、ため息をついた。
思いもよらない展開になってしまっただが、そうすると言うのだから、逆らえないだろう。
今のこの心境で、九条風人と会うことは考えられないからずっといい。
我ながら卑怯な気もして、苦笑しつつ。
瑞華は駅に向かって歩きだした。
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