79 / 95
第六章
風雅公の企み 4
しおりを挟む
銀座百貨店、華屋。
老舗で銀座の顔とも言えるその店構えは、高級百貨店らしく堂々としている。
シニア向けのデザインは勿論だが、若者向けの本物の質にこだわった品揃えも定評がある。
名前通りの華やかさに、一倒産の危機が今あるとは誰も知るよしがない。
元々旧家と商売は無縁である。
得にこういった細々とした物を売ることをするなんて考えられない。
だが花宮の四代前の当主は、自分の愛人に商人の娘を迎えいれた。
本妻は早くに亡くし、立場上、内縁の妻としてしか置けなかったが、花宮では女主として愛されたその女性は、その手腕で華屋を高級百貨店として育て上げた。
――花宮を引き継いだ、息子は華屋を更にもり立て
ちょうど時代の変化も追いつき、類を見ない血筋の良い社長が経営する百貨店が出来上がった。
勿論、当時は妾の始めた商売だの、その成り上がりの息子だの僻みは大きかったらしいが、その当主の権限が強く。
最終的には黙らせた、と聞いてる。
昔話だ。
時が流れ今となっては社長は平和ボケしてしまった瑞華の両親。
それでも老舗としての品格は残っていると思う。
九条邸から瑞華は一旦帰宅して洋服を着替えた。
首からデコルテラインがしっかり隠れるようにまだ、残暑厳しい中と言うのに、すっぽりとタートルネックで隠し、更にスカーフを結んで蓋をしている。
鷹羽一王と約束していたが、これでは仕方ない。
夏バテにやられてしまったと、見え透いた嘘をついて断りを入れる。
この間の件の後で、すぐ約束をキャンセルしてしまうのは気がかりだったが、首元の紅い痕を見られた方が問題なことは間違いない。
今更一度断ったくらいで、華屋がどうこうなどないと願うしかなかった。
後は、銀座か新宿でばったり会う、というのが恐れてしまうパターンだが、今日は近畿からの出張帰りに会いたいとの話だったから、その話が本当でるならば大丈夫なはずである。
家に帰宅した際に、華屋グループ社長たる父に電話をして、店舗本部に連絡をしてもらう。
デートという名の名目で、一体どんな視察を行う気かは知らないが、その準備を整えるのは自分の仕事だろうと、言われてなくてもやる事はやるのだ。
一足先に銀座華屋に到着すると、社員通用口でIDパスを二つ受け取る。
これがなければ、華屋の事務所には入れない。
その後、到着したとの連絡を受け、瑞華は客用入口まで九条風人を迎えにいった。
折しも猛暑日。
室内にいたはずなのに、慌ただしく下準備をしていた瑞華はじわりと汗が浮かんでいて、見苦しくないようにハンカチで汗を抑えた。
それがちょうど風人の姿が見えた所で、瑞華の様子に、くすりと笑った王子はどこまでも甘い視線で毒を放つ。
「暑いんじゃない?堂々と見せちゃえばいいのに」
――この悪魔っ。
この暑苦しい惨事へと追いやった張本人に悪びれた様子はなかった。
老舗で銀座の顔とも言えるその店構えは、高級百貨店らしく堂々としている。
シニア向けのデザインは勿論だが、若者向けの本物の質にこだわった品揃えも定評がある。
名前通りの華やかさに、一倒産の危機が今あるとは誰も知るよしがない。
元々旧家と商売は無縁である。
得にこういった細々とした物を売ることをするなんて考えられない。
だが花宮の四代前の当主は、自分の愛人に商人の娘を迎えいれた。
本妻は早くに亡くし、立場上、内縁の妻としてしか置けなかったが、花宮では女主として愛されたその女性は、その手腕で華屋を高級百貨店として育て上げた。
――花宮を引き継いだ、息子は華屋を更にもり立て
ちょうど時代の変化も追いつき、類を見ない血筋の良い社長が経営する百貨店が出来上がった。
勿論、当時は妾の始めた商売だの、その成り上がりの息子だの僻みは大きかったらしいが、その当主の権限が強く。
最終的には黙らせた、と聞いてる。
昔話だ。
時が流れ今となっては社長は平和ボケしてしまった瑞華の両親。
それでも老舗としての品格は残っていると思う。
九条邸から瑞華は一旦帰宅して洋服を着替えた。
首からデコルテラインがしっかり隠れるようにまだ、残暑厳しい中と言うのに、すっぽりとタートルネックで隠し、更にスカーフを結んで蓋をしている。
鷹羽一王と約束していたが、これでは仕方ない。
夏バテにやられてしまったと、見え透いた嘘をついて断りを入れる。
この間の件の後で、すぐ約束をキャンセルしてしまうのは気がかりだったが、首元の紅い痕を見られた方が問題なことは間違いない。
今更一度断ったくらいで、華屋がどうこうなどないと願うしかなかった。
後は、銀座か新宿でばったり会う、というのが恐れてしまうパターンだが、今日は近畿からの出張帰りに会いたいとの話だったから、その話が本当でるならば大丈夫なはずである。
家に帰宅した際に、華屋グループ社長たる父に電話をして、店舗本部に連絡をしてもらう。
デートという名の名目で、一体どんな視察を行う気かは知らないが、その準備を整えるのは自分の仕事だろうと、言われてなくてもやる事はやるのだ。
一足先に銀座華屋に到着すると、社員通用口でIDパスを二つ受け取る。
これがなければ、華屋の事務所には入れない。
その後、到着したとの連絡を受け、瑞華は客用入口まで九条風人を迎えにいった。
折しも猛暑日。
室内にいたはずなのに、慌ただしく下準備をしていた瑞華はじわりと汗が浮かんでいて、見苦しくないようにハンカチで汗を抑えた。
それがちょうど風人の姿が見えた所で、瑞華の様子に、くすりと笑った王子はどこまでも甘い視線で毒を放つ。
「暑いんじゃない?堂々と見せちゃえばいいのに」
――この悪魔っ。
この暑苦しい惨事へと追いやった張本人に悪びれた様子はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる