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【チャプター 30】
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「クソッ、わかった。答えるよ」
中沢は吐き棄てるように言った。
〈では訊くが、おまえはいま、現実の中にいるのか? それとも夢の中か?〉
声が問う。
「その質問はやめてくれ。答えようがない。なにがどうなっているのかも、僕にはわからないんだ」
〈そうか。現実と夢の区別がつかなくなっているのか〉
「区別とかそういうことじゃない。いま僕に起きていることは、現実ではありえないことだ。だけど、夢の中にいるとは、とても思えない。夢はいつだって、なにもかもがぼんやりとした不確かなものだ。しかしここは、礼子が生き返ってくる以外は現実そのものだ。不確かなものはない。それに僕は眠るし、夢だって観る。そして夢なら必ず目醒める。はっきりと言えるのは、いま僕は、目醒めている」
〈なるほど、現実か夢かがわからず、それでおまえは、自分を罠に陥れている何者かの存在がいると妄想したのだな〉
「なんとでも言え」
〈なんだ。怒ったのか?〉
「いや、いまの僕には怒る気力もない。僕はきっと、狂ってしまったんだな。そうとしか思えない。わけのわからぬおまえと、こうして会話をしていること自体がその証拠だ」
〈クク、俺は幻聴ではなかったのか?〉
「幻聴も妄想とおなじようなものだ。僕が正気なら、おまえなど存在しない」
〈フン、まあいいだろう。ならばもうひとつ訊こう。おまえがいまいるのが、夢の中の現実だとしたらどうする。醒めることない夢なのだとしたら〉
「なに? 夢の中の現実? 醒めることのない夢だと? そんなこと信じられるか」
〈またも信じられぬか〉
「当然じゃないか」
〈それも、おまえの自由だ〉
「自由? さっきもおまえはそう言ったが、この僕のどこに自由があるんだ」
〈選択の自由〉
「そんなもの、なんの役にもたちやしない。いや、なにもわからない僕に、選択の余地さえあるものか」
〈おまえはいったいなにを聞いているんだ。俺はおまえの知りたいことを話したばかりだぞ〉
「ああ、確かに聞いたよ。いま僕がいるのは夢の中の現実で、それも醒めることのない夢だって言うんだろ? そうだな。どうやら僕は、ぐっすりと眠りすぎていて、目覚まし時計が鳴っているのに起きないのかもしれないな」
〈それは冗談か? それとも厭味か〉
「その両方だよ」
〈おまえは混乱しているようだな〉
「混乱しないほうがおかしいだろう。とにかく、おまえの言うことがもしほんとうだとするなら、僕はどうすれば、醒めることのない夢から醒めることができるんだ」
〈ほう、初めてまともなことを言ったな〉
「そんなことはどうだっていい。この夢から目醒める方法を知っているのか、知らないのか」
〈知っているとも言えるが、知らないとも言える〉
「いったい、どっちなんだよ!」
〈そう怒鳴り立てるな。怒鳴らなくとも、おまえの声はよく聴こえる。少し冷静になったらどうだ〉
「冷静になれだって? よくもそんなことが言えたものだ。僕の身にもなってみろ」
〈なっているさ。俺はおまえだからな〉
「そうか、すっかり忘れていたよ。だったら、この夢から目醒める方法なんて知っているはずもないよな。なんたって、おまえは僕なんだから」
中沢は投げやりに言い棄てた。
中沢は吐き棄てるように言った。
〈では訊くが、おまえはいま、現実の中にいるのか? それとも夢の中か?〉
声が問う。
「その質問はやめてくれ。答えようがない。なにがどうなっているのかも、僕にはわからないんだ」
〈そうか。現実と夢の区別がつかなくなっているのか〉
「区別とかそういうことじゃない。いま僕に起きていることは、現実ではありえないことだ。だけど、夢の中にいるとは、とても思えない。夢はいつだって、なにもかもがぼんやりとした不確かなものだ。しかしここは、礼子が生き返ってくる以外は現実そのものだ。不確かなものはない。それに僕は眠るし、夢だって観る。そして夢なら必ず目醒める。はっきりと言えるのは、いま僕は、目醒めている」
〈なるほど、現実か夢かがわからず、それでおまえは、自分を罠に陥れている何者かの存在がいると妄想したのだな〉
「なんとでも言え」
〈なんだ。怒ったのか?〉
「いや、いまの僕には怒る気力もない。僕はきっと、狂ってしまったんだな。そうとしか思えない。わけのわからぬおまえと、こうして会話をしていること自体がその証拠だ」
〈クク、俺は幻聴ではなかったのか?〉
「幻聴も妄想とおなじようなものだ。僕が正気なら、おまえなど存在しない」
〈フン、まあいいだろう。ならばもうひとつ訊こう。おまえがいまいるのが、夢の中の現実だとしたらどうする。醒めることない夢なのだとしたら〉
「なに? 夢の中の現実? 醒めることのない夢だと? そんなこと信じられるか」
〈またも信じられぬか〉
「当然じゃないか」
〈それも、おまえの自由だ〉
「自由? さっきもおまえはそう言ったが、この僕のどこに自由があるんだ」
〈選択の自由〉
「そんなもの、なんの役にもたちやしない。いや、なにもわからない僕に、選択の余地さえあるものか」
〈おまえはいったいなにを聞いているんだ。俺はおまえの知りたいことを話したばかりだぞ〉
「ああ、確かに聞いたよ。いま僕がいるのは夢の中の現実で、それも醒めることのない夢だって言うんだろ? そうだな。どうやら僕は、ぐっすりと眠りすぎていて、目覚まし時計が鳴っているのに起きないのかもしれないな」
〈それは冗談か? それとも厭味か〉
「その両方だよ」
〈おまえは混乱しているようだな〉
「混乱しないほうがおかしいだろう。とにかく、おまえの言うことがもしほんとうだとするなら、僕はどうすれば、醒めることのない夢から醒めることができるんだ」
〈ほう、初めてまともなことを言ったな〉
「そんなことはどうだっていい。この夢から目醒める方法を知っているのか、知らないのか」
〈知っているとも言えるが、知らないとも言える〉
「いったい、どっちなんだよ!」
〈そう怒鳴り立てるな。怒鳴らなくとも、おまえの声はよく聴こえる。少し冷静になったらどうだ〉
「冷静になれだって? よくもそんなことが言えたものだ。僕の身にもなってみろ」
〈なっているさ。俺はおまえだからな〉
「そうか、すっかり忘れていたよ。だったら、この夢から目醒める方法なんて知っているはずもないよな。なんたって、おまえは僕なんだから」
中沢は投げやりに言い棄てた。
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