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【チャプター 35】
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美しかった妻の肉体からは四肢のすべてが切り放され、そして中沢は、血の滴る鋸を、今度は首ではなく腹部へとあてた。
どれほど狂気に身をゆだねようとも、首を切り落とすとなればさすがにためらいが生じてしまう。
少しでもためらってしまえばもうそこからは、ほんのわずかものこぎりを挽くことはできなくなってしまうだろう。
腹部にあてた鋸を挽く。
ぐちゅ、
ぐちゅ、
ぐちゅり、
鮫の刃が腹部の肉を、そしてはらわたを喰い破っていく。
ぐちゅり、
ぐちゅる、
ぐちゅ、
はらわたが刃に粘りつき、動きを阻むかのようにまとわりついてくる。
「しゅう、しゅう、しゅう」
狂鬼と化した中沢の口許からは、声ともつかない息づかいが洩れていた。
と、そのとき、その息づかいに絡みついて声が聴こえてきた。
中沢は鋸を持つ手を止め、耳をすませた。
その声はわずかな間をおいて、また聴こえてくる。
「痛い……」
かすかだが、声はそう言っていた。
中沢はハッとして妻の顔へと眼をやった。
「痛い……。痛い……」
確かにその声は、妻の口からこぼれ出ている声だった。
「痛い……。どうして……」
とつぜん、眼を剥いた妻の眼が、ぎろん、と動いて中沢を睨んだ。
「ひッ!」
中沢は慄きに凍りついた。
「あなた、痛いわ……。腕も足も動かないのよ……。私、どうなってしまったの?」
妻は頭を上げて自分の身体を見た。
「え、私の腕と足がないわ! あなた、これはどういうこと? お腹からもすごく血が出てる。どうして?」
驚愕に中沢の顔が蒼ざめていく。
「あなた、どういうことなのよ! ねえ、答えてよ!」
中沢は眼を瞑り、かぶりをふった。
と――
「おい、答えろよ!」
妻の口調がとつぜん変わった。
「私の腕と足はどうしたんだよ、このやろう! おい、なんとか言え!」
その声までが野太くしわがれたものへと変わり、腕と足のない身体をばたばたとばたつかせた。
「痛えよ、痛えんだよ、ちきしょう。腹から腸が飛び出してるじゃねえかよ。なんとかしろよ、このブタやろう!」
切断された箇所から血を噴き出させながら、妻は罵声した。
「痛えよう、痛えんだよう。どうにかしやがれ、腐れやろうが!」
中沢はどうすることもできずに、鋸を床に落として後ずさった。
「痛いよう、苦しいよう、うーん、うーん」
妻は悶絶の声を上げる。
たまらず中沢は両手で耳を塞ぐ。
「許してくれ、礼子。僕が悪かった。だから許してくれ……」
懇願するように呟いた。
悶絶の声はしばらくつづき、そしてふいに静かになった。
中沢はそろりと顔を上げると、妻の様子を窺い見た。
どれほど狂気に身をゆだねようとも、首を切り落とすとなればさすがにためらいが生じてしまう。
少しでもためらってしまえばもうそこからは、ほんのわずかものこぎりを挽くことはできなくなってしまうだろう。
腹部にあてた鋸を挽く。
ぐちゅ、
ぐちゅ、
ぐちゅり、
鮫の刃が腹部の肉を、そしてはらわたを喰い破っていく。
ぐちゅり、
ぐちゅる、
ぐちゅ、
はらわたが刃に粘りつき、動きを阻むかのようにまとわりついてくる。
「しゅう、しゅう、しゅう」
狂鬼と化した中沢の口許からは、声ともつかない息づかいが洩れていた。
と、そのとき、その息づかいに絡みついて声が聴こえてきた。
中沢は鋸を持つ手を止め、耳をすませた。
その声はわずかな間をおいて、また聴こえてくる。
「痛い……」
かすかだが、声はそう言っていた。
中沢はハッとして妻の顔へと眼をやった。
「痛い……。痛い……」
確かにその声は、妻の口からこぼれ出ている声だった。
「痛い……。どうして……」
とつぜん、眼を剥いた妻の眼が、ぎろん、と動いて中沢を睨んだ。
「ひッ!」
中沢は慄きに凍りついた。
「あなた、痛いわ……。腕も足も動かないのよ……。私、どうなってしまったの?」
妻は頭を上げて自分の身体を見た。
「え、私の腕と足がないわ! あなた、これはどういうこと? お腹からもすごく血が出てる。どうして?」
驚愕に中沢の顔が蒼ざめていく。
「あなた、どういうことなのよ! ねえ、答えてよ!」
中沢は眼を瞑り、かぶりをふった。
と――
「おい、答えろよ!」
妻の口調がとつぜん変わった。
「私の腕と足はどうしたんだよ、このやろう! おい、なんとか言え!」
その声までが野太くしわがれたものへと変わり、腕と足のない身体をばたばたとばたつかせた。
「痛えよ、痛えんだよ、ちきしょう。腹から腸が飛び出してるじゃねえかよ。なんとかしろよ、このブタやろう!」
切断された箇所から血を噴き出させながら、妻は罵声した。
「痛えよう、痛えんだよう。どうにかしやがれ、腐れやろうが!」
中沢はどうすることもできずに、鋸を床に落として後ずさった。
「痛いよう、苦しいよう、うーん、うーん」
妻は悶絶の声を上げる。
たまらず中沢は両手で耳を塞ぐ。
「許してくれ、礼子。僕が悪かった。だから許してくれ……」
懇願するように呟いた。
悶絶の声はしばらくつづき、そしてふいに静かになった。
中沢はそろりと顔を上げると、妻の様子を窺い見た。
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