fateful meeting(フェイトフル ミーティング)~職業【遊び人】になってしまった僕だけど幸せになります!~

星 陽月

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【第9話】

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 見事なバラに囲まれた、美しい庭園に、まったく似つかわしくない小屋が建っている。

 まさか、あれが家じゃないよな……。

 でも、森を抜けた草原に、ほかの建物はない。

「君も家って、あれなの?」

 違いますよ、と言ってほしかったが、

「んだ。とうちゃんとふたりで住んでるだ」

 期待は完全に裏切られてしまった。

「狭いけんど、堪忍してけろ」
「あ、う、うん……。ところでさ、君の名前は?」

 僕は気持ちを切り替えて訊いた。

「あ、オラの名前まだ言ってなかっただな。これは失礼すました。オラの名は、チェルシーといいます」
「チェルシーちゃんか、かわいい名前だね。僕はユート。よろしくね、チェルシーちゃん」
「あの、『ちゃん』づけはやめてけろ。チェルシーでいいだよ」
「そう、わかった。じゃあ改めて。よろしくね。チェルシー」
「はいー、よろしくです」

 チェルシーは顔を赤らめてうなずいた。

 子供ってかわいいなー……。

 僕は心が和んだ。
 しかし、こうして会話を交わしてみても、男の子なのか女の子なのか少しもわからない。
 どうやら母親がいないみたいだけど、デリケートなことなのでそこは触れないほうがいいだろう。

 それよりも、父親ってどんな人なんだろう。これからどうしたらいいのか、いいアドバイスをくれるやさし人ならいいけど、ムスッとしたイカツイひとだったら困る。

「とうちゃーん、帰ったよー!」

 小屋の中には誰もいなかった。

「きっと庭にいるんだべ、呼んでくるから、坐って待ててけろ」

 みっつある椅子のひとつを僕に勧めて、チェルシーは庭へ向かった。
 ひとり残された僕は、部屋の中を観察した。
 台所なのか、小さな竈に古びた鍋がひとつと壊れかけた樽がふたつ。
 そして、食器が収まった木製の棚のうえには、きれいな女性の肖像画が飾ってある。
 チェルシーの母親なのだろうか。
 チェルシーととてもよく似ていた。
 奥にもう一部屋あるようだが、きっと寝室だろう。

 いまの状況がどうにかなるまで止めてもらおうと思ったが、ちょっと無理だろうなー……。

 そのなことを考えていると、チェルシーが父親を連れてきた。

 って、えーーーー!!!

 チェルシーの父親に、僕は眼を瞠(みは)った。
 その姿は、長身で金髪。
 もの憂げの瞳と、すっと通った鼻梁(びりょう)

 ハリウッドにだっていないよ、こんなイケメン……。

 イケメンすぎるその顔に、僕はただただ見惚れてしまっていた。
 
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