あの日の思い出

那智

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落ちた

②鉄棒

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 何処にでもある公園の遊具の一つに鉄棒があった。
 
 上り棒や木登りのように上に登る遊びは苦手で嫌いだったが、鉄棒は好きで仲間と競いあっていた。

 大体は回転数を競ったり、技を競いあったり。鉄棒で遊ぶ子供はある程度の事は出来るので、独自の技を披露してお互いに真似しあったりした。
 
 学校では、休み時間に鉄棒を利用する生徒が多く、列が出来るので、一人で長い時間占領することは出来なかった。

 休みの日に、一つ下の幼馴染みと公園で鉄棒している時の事。

 彼女はまだ幼稚園児で、あまり沢山の事が出来なかったのだが、私が両膝を鉄棒に掛けて、両手を鉄棒の下から持ってきて、すねを押さえてくるくるまわる遊びをして一休みすると、
 「手を離してまわってよ」
と言ってきた。
 「手を離してまわったら背中から落ちるよ」
と言うと、
 「出来た人を知ってる」
と言い張り彼女もひかない。

 やめればいいのに、こちらも負けん気が強く、手を離してまわってみた。案の定、まわる途中で背中から落ちた。初めから落ちると思ってまわったせいか、痛みはさほど感じなかった。

 「ほら、落ちたでしょう」
と言うと、
 「出来た人を知ってるもん。下手なだけでしょ」
と言われて、腹が立った所までは覚えているが、その後の展開は覚えていない。

 ずっと、体育は得意と思ってきて、子供が小学生になった時、鉄棒が出来ない我が子に
 「逆上がりはこうやるんだよ」
と自信満々に見本を見せようとしたが、全く出来なかった。

 こうやって、出来ていた事が出来なくなるのを実感すると、無邪気に遊んでいたあの頃をとても愛おしく思う。

 

 

 
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