あの日の思い出

那智

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カタルシス

①だれ?

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 自宅にお風呂はあったのだが、物心がついた頃には銭湯に行っていた。母と一緒に女湯に入ったり、父と一緒に男風呂に入ったり。

 小学生になると、親の保護なく友達同士だけで行くようになった。低学年だと男女の差など大したことはなく、男の子と二人で女湯に入ったりもしていた。

 今はどうか知らないが、当時は男の子に「男湯に入るよう」明記されていたのは、10歳以上ではなかったかと思う。

 銭湯に行くのは夜のイメージだが、小学生の頃は親と一緒ではない限り、明るいうちに行っていた。

 中学になると、明るいうちに行くのは休みの日くらいしかなく、夜になるのが当たり前だった。一人では怖かったかもしれないが、隣に住む同級生と一緒だったのでむしろ楽しいくらいだった。

 夜ともなると、いろんな人が来ていて、先生とも会ったりした。裸の付き合いは多少恥ずかしいので、挨拶は交わすが後はなるべく知らんぷり。

 ある日の事、いつも通り友達と脱衣所で準備をしようとしていると、少し離れたところから何やらヒソヒソ声がする。

 見ると小学生らしき女子二人。どうもこちらをチラチラ見ながら話しているので、気になって顔を向けるとフルネームで呼ばれてビックリ。

 反射的に、
 「はい」
と答えると、どんどん近付いて来て、
 「私たち◯◯先生のクラスなんです」
こちらが「クラス担任が一緒か」と理解するかしないうちに、

 「先生に◯◯さんの事聞いたら、真面目だって言ってました」
 「真面目?と言われる程じゃない……」
こちらの言葉に被せるように、
 「握手して下さい」
こちらも思わず手を出すと、握手をして足取り早く帰っていった。

 残されたこちらは、「ハテ、ハテ、ハテ?」。いわゆる「目が点」状態で、ただただ、呆然とするばかり。

着替えもせずに成り行きを見守っていた友に、
 「それほど真面目じゃないよね」
と言うと、
 「うん」
という返事が返ってきた。
 「先生もいい加減だよね。私の事、覚えてないんじゃない!?」
と言いながらお風呂場に向かった。

 あまりにも衝撃的な出来事で、何かの度に思い出す事の一つだが、なぜ彼女たちは私の事を知っていたのか、特にフルネームまで。

 未だに聞かなかった事、いや聞けなかった事が悔やまれて仕方がない。

 「なぜぇー~?」
 「教えてぇー~!」
 「モヤモヤするゥー!」
そして、
 「貴女たちは誰ぇー~?」
 「教えてぇー~?」
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