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第0章:姫と守護者と剣豪と魔術士と
預言者の予言
しおりを挟む「セイラ姫…!?」
預言者シン・プロフェットに呼び出されたオレは、セイクリッドット城の地下にある預言の間を訪れた。
だが、そこにいたのは預言者シン・プロフェットだけでなくセイクリッドット王国の王女セイラ姫がそこにいた。
「ハルト…」
セイラ姫は不安そうな顔でオレを見る。
すかさず姫にお声がけしようと思ったが、それを遮るかのように預言者シン・プロフェットが部屋の奥から現れた。
「…お待ちしておりましたよ。姫の守護者…いや、ハルト・ブワールン」
「プロフェットさん…何故セイラ姫がここにいるんですか?呼び出したのはオレだけのはずでは…」
「…いいえ、貴方にはまだ伝えていませんでしたが…ここにはもう御二方、ゲストをお招きしております」
プロフェットの言葉によって、先程と同じように部屋の奥から見慣れた二人が現れた。
「…たくっただでさえ魔術師がいるってだけでも納得いかねーってのによ…」
「…それは僕の台詞でもあるなぁ。こんな脳筋野郎なんかと一緒にいたくないんだけど」
「あァ?!喧嘩売ってんのかテメェ!!」
「さぁねー」
「ズ、ズワートさんにウイットさん…!?」
ただでさえ驚きの連続だというのに、まさかこの二人まで呼ばれていたなんて。
セイクリッドット国では武闘隊と魔術隊という二つの隊が、国を守る兵隊として備えられていた。
特にこの武闘隊きっての剣豪ズワート・シッドと魔術隊きっての魔術師ウイット・ワイナミョイネンはセイクリッドット王国の中でも最強と言われている。
…ただまぁだからなのか、理由は定かではないけどこの二人は異様に仲が悪い…らしい。
オレはずっと姫の守護者としてお側にいたから実際に見たことはなかったけど、こうしていざ目の前にして見ると…どうやらその噂は本当のようだ。
「…さて、雑談はそれくらいにして。そろそろ本題に入りましょうか」
ここに来て空気が変わる。
プロフェットの一声に皆が皆が、一斉に視線を向けた。
「単刀直入に言います。これから話す予言は我が国きっての最大の危機であるということ、そしてその危機から国を救うためにはあなた方のお力が必要なのです」
プロフェットは続けてこう言った。
女神の恩恵が悪しき者の手によって、失われる。
さすれば国は滅び、人は死にゆく定めである。
「そんな、ことって…ッ」
「セイラ姫…」
姫は絶句していた。
無理もない、今の今ままでこんな予言は一度もなかったのだから。
そう、セイクリッドット王国に纏わる歴史上の中でも女神の恩恵が失われたことなんて一度たりともないのだ。
「けど、間違いないんですよね」
「…ええ、間違いありません。」
預言者は予言の通り言葉を伝えるだけだ。
そこに憶測や私情は挟まない。
だからこそこれは揺るぎない真実であり、いつか必ず起こる現実なんだ。
「で、結局俺達はどーすりゃいいんだ?いきなり力を貸せなんざ言われても、具体的に言ってくんねーと対策のしようがないだろ」
ズワートは口を挟む。
確かに…ズワートさんの言う通りだ。
姫の守護者としてセイラ姫をお守りすることは出来るけど、国を救うだなんて…そんな大それたことオレなんかが到底出来るとは思えない。
「…プロフェットさんのことだから、何か考えはありそうだけど。だからこその、この四人なんじゃないの?まぁ一部、要らない人もいるけどね」
「ああ?それは俺のことを言ってんのか?」
「んー?」
「と、とにかくウイットさんの言う通りです。何か考えがあるからこそ、オレ達を呼んだんですよね?プロフェットさん」
すかさず割って入る。ああ、危ない危ない。
放っておくとこの二人は本気で殴り合いの喧嘩でもしそうだ。
「そうです。お察しの通り…手立てはあります。姫と共に旅をし、神に出会い、そして、神の恩恵を授かるのです」
預言者は言う。
女神の恩恵は、女神によって選ばれた娘に与えられる高貴なる力。
その力に対抗するには、それと同等の力でもある神の恩恵を授かるほか為す術はない。
「…なるほどね。要するに僕たちは旅の同行者としてプロフェットさんに選ばれたというわけか」
「さすがウイットは話が早いですね。なにぶん神は気まぐれですから…セイラ姫の護衛の為、あなた方をお呼びした次第です」
「へッそりゃあいいな。運が良けりゃあ神と戦うことも出来るってわけか」
ズワートさんは嬉しそうに笑う。
さすが武闘隊の中でも一番血の気が多いと言われるだけのことはあるな…。
オレとしてはなるべく穏便に済ませたいところではあるけれど…神が人間相手に素直に応じてくれるとは到底思えない。
「…なるべく穏便には済ませたいところですが、場合によっては戦いも避けられないでしょうね」
どうやらプロフェットさんもオレと同じ考えのようだ。
なるべく争いは避けたい。
が、国の危機とあれば手段を選んでる場合ではないのだろう。
「…分かりました。セイラ姫と共に旅をし、神に会ってきます」
「・・・覚悟を決められたのですね」
「はい」
オレは頷く。
いくら国のためとはいえ神と戦うなんてあまりにも畏れ多い。
正直言って、荷が重すぎる。
けど、この旅にはセイラ姫の護衛も兼ねている。
ならば、ただいつものように姫をお守りするだけだ。
ーーオレはセイラ姫の守護者なのだから。
「…では、ズワートにウイット…あなた方はどうなのですか」
「俺はいいぜ。なんせ神と戦えるんだろ?それが国と姫を守ることに繋がるっていうなら尚のこと文句はねえよ」
「あれれ~、さっきまで僕がここにいることに散々文句言ってたくせに?」
「うるせーな。確かにテメーは気に食わねえ。けど、国と姫のこともあるんだ。いくら俺でもこれ以上の私情は挟まねえよ」
「・・・ふう~~ん…脳筋野郎のくせに物分かりはいいんだ」
「…ンのやろう。後で覚えてろ」
「・・・では、ウイット。あなたは同行してくださいますか?」
「まぁ国の危機なんて言われちゃあねえ…。神と戦うことになるかもなんて言われたら魔術隊の長として嫌とは言えないでしょ」
「ズワートさん…!ウイットさん…!」
ホッと安堵する。
…良かった。
この二人のことだからもしかしたら断られるかもなんて思ったりしたけど、さすがは武闘隊と魔術隊のリーダーだ。
オレだけなら到底出来ないこともこの二人が居るなら、なんとかなるかもしれない。
「ありがとうございます。ハルト、ズワート、ウイット…心より感謝を申し上げます。…それでは最後にセイラ姫。あなたの覚悟を聞かせてはもらえないでしょうか」
「え…わたし…ですか」
姫は濁すように答える。
「わ、わたしは…ただ、形だけの姫だから…女神の恩恵なければ…本当にただの人形みたいなものなんです…っ」
これは幼い頃から姫が言っていた言葉でもあった。
セイラ姫はいつも小言のように言う。
「父様も国の人達もみんな優しいけど、それは私が女神の恩恵に選ばれた娘だから。ただの私には何の価値もないの」
オレはそれをずっと否定してきたけれども、セイラ姫の心は未だ変わらない。
だからこそ、姫は不安なんだ。
オレ達の誰よりも不安で、ただただ怖いんだ。
「ー安心してください、セイラ姫」
「え…」
「オレが、セイラ姫を守ります。女神の恩恵を失わずに済むように…必ず、姫を神に会わせてみせます」
「でも…戦うかもしれないって…神相手に戦うなんて危ないよ…!わたし…ハルトが危険な目に合うのも怖いの…。」
「大丈夫です。確かに…オレ一人じゃ無理かもしれない。けど、ズワートさんやウイットさんだっているんです。この二人の強さは姫もご存知のはずですよ」
「ズワートさん…ウイットさん…わたしは…っ」
セイラ姫は訴えかけるようにズワートさんとウイットさんの顔を見る。
「ま、なんだ…色々と不安だとは思うが、とりあえずは安心しろ。俺は少なくともこの魔術師なんかよりは頼りになると思うぜ」
「酷いなー、僕の力なんて知りもしないくせに適当なこと言わないでよ。姫様への印象悪くしないで欲しいなあ」
「うるせえ、だったらテメーは先ずその減らず口をなんとかしろ」
「……そんな怖い顔で睨むと姫様は余計に不安になると思うよ。こんな脳筋野郎なんかより僕を頼ったほうが全然いいと思うよー」
「ズワートさん…ウイットさん…ありがとうございます…っ」
ぎこちなくも笑みを浮かべる姫。
この二人は相変わらずだけど、根っからの悪い人ではないようだ。
ちゃんと、セイラ姫のことを考えてくれている。
「…セイラ姫。あなたも、よろしいのですね」
プロフェットさんはそんな様子を静かに見守っていた。
既にもう姫の答えは分かっているのだろう。
「・・はい。私は…ハルトやズワートさん、ウイットさんみたいに戦えないし足手まといにしかならないけど…国の王女として改めてお願い申し上げます。皆さんの力を貸してください。私を…神に会わせてください。どうか…よろしくお願いします…っ」
深々と頭を下げるセイラ様。
もちろんオレの答えも、言うまでもない。
「ーこちらこそ、よろしくお願いします。セイラ姫」
「ヘッこの俺がいるんだ。大船に乗った気でいろ」
「へー、それって泥船の間違いなんじゃない?」
「ああン!?」
「ま、まあまあ…とにかくこれで話はまとまりましたよね。プロフェットさん」
話は決まった。
後は、その先の話をプロフェットさんに聞くだけだ。
「ええ、それでは次にお伝えするのは…あなた方が最初にお会いすべき神はどこにいるのか…その話をしましょうか」
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