タイムリミット

本音云海

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第1章:全ての始まりは東から

青龍の導き

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「ここは…森の中…?」


着いた先で目に入ったのは、一面緑一色の森だった。
木や草花が辺りに生い茂っていて、近くには大きな川もある。


「…おい、本当にここで合ってんのか?」

「酷いなあ。ちゃーんと場所は合ってるよ」


ズワートさんは疑いの目で見ていたが、ウイットさんが場所を間違えるなんてことは先ず有り得ない。


「ーここに、青龍はいます」


オレは断言する。


「……私も感じます。ここに…青龍が…」


続いて、セイラ姫もそう告げた。


「…どうやら姫様と守護者ガーディアンくんは僕のことを信用してくれてるみたいだよ?」

「・・・るせえ。じゃあ、居るなら何で姿を現せねえんだ?」

「ああ…それは多分ーー」


そう、ウイットさんが言葉を出そうと瞬間だった。


「ー来ますッ!!」


突然、姫が声を荒らげた。

そして、次の瞬間には思わず目を疑うような光景が広がっていた。

ーー長身の刀と刀が相まみえて、鋭い金属音が耳から伝わってくる。

あのズワートさんが、刀で抑え込まれるなんて。


「…てめぇは誰だ?」

「ほう…私の一撃を耐えるとは…なかなかの手練れと見える」

「質問に答えろ。…てめぇは誰だ?見たことねぇツラだが、ここの人間か?」

「私を見て人間だと問うか…貴様、よもやここがどこだか知らないとでも言うまいな?」


ズワートさんの気迫に相手は一切怯む様子もない。

いやむしろ…笑っているように見える。

姿形は本当に人間にしか見えない。

けど、この余裕のある立ち振る舞い。

まさか、この人はーー


「ーズワートさん!この人が、青龍です!」


セイラ姫の一声にズワートさんはすぐに体制を変えた。

一方で相手方の男も同様にすぐさま刀を鞘に納める。


「コイツがドラゴン…?」

「うんそういうわけだから、血の気の多い脳筋はちょっとだけ黙っててね~」

「何がそういうわけだッ!!大体、てめえは何にもしてねーだろうがッ!!」

「そりゃあしないでしょー。だって、あの一太刀…殺気がこもってなかったもん。アレ、わざわざ止めなくても寸止めのところで止めてたはずだよ。」

「…だからって向かってくる刀に対して見て見ぬふりしろっていうのかよ。てめえは」

「え~?」

「あ、あのここで言い争いをするのはやめた方がいいのでは…」


オレは慌てて二人の間に割って入る。


「・・・だってさ、どうする?」

「ちっ」


オレの言葉は説得というには程遠いけれど、どうやら二人は納得してくれたらしい。

とにかく今は、青龍と話をするのが先だ。

すかさずオレは声を掛けた。


「あの、突然で申し訳ないのですが…実は貴方にお話したいことがあります」

「・・・ふむ」


青龍はオレの顔をじっと見ていた。
何か気に触るようなことでも言ってしまったのかと不安になる。

けど、青龍はすぐに納得したような素振りを見せて、こう言った。


「話がしたいのだろう?ならば、私の国に案内する。着いてこい」


どうやら歓迎してくれるらしい。

少なくとも話は聞いてくれるみたいだ。


「国だと?そんなもんがどこにありやがる?」

「・・・多分だけど。結界なんか張ってあって、その中にあるんじゃないかな」

「何でてめーにそんなことが分かんだよ。その結界とやらが見えるとでもいういうのか?」

「・・・まさか。これは魔力なんかじゃない。もっと高貴な…僕なんかじゃ到底得られない力だよ」


ウイットさんは気付いているのだろう。

オレも微かだが、肌で感じる。

ピリピリとした強い何かがーーこの近くにある。


「ハ…ハルト、これって……」

「セイラ姫も…お気付きになられたのですね」


おそらくこれは青龍がここに来たことによって気付いたことだ。

もしあのまま青龍が来なければ、オレ達は永遠に気付かないままこの森を彷徨うことになっていたかもしれない。

だが、そうなると一つ不思議なことがある。

あの時、青龍とあんな至近距離で刀を交えたというのに…ズワートさん自身はこの強い気に微塵も当てられている様子がない。

まるで応えてないというか…まるで気にしてないといった感じだ。

ウイットさんでさえ、この強大さに当てられそうになっているというのにーーこの違いはなんなんだろうか。


「…あの、ズワートさん。」

「あ?なんだよ?」

「実はその…ちょっと聞きたいことがーー」


そう、尋ねようとした瞬間だった。

オレの言葉を遮るように青龍が、一際大きな声で言葉を発する。



「ー目を閉じろ。」



青龍の一声にオレ達はただただ圧倒された。
反射的に身体が動く。

言われるがまま、目を閉じる。

そして、目を開けた瞬間オレ達は驚きの光景を目にする。


「ーようこそ、そうの国へ。」


ここでようやくオレは青龍の言った言葉の意味を理解した。

ー国という言葉。
まさにこの場所は、一つの国のような所だった。

目の前に現れたのは、半球状の丸みを帯びた不思議な屋根のある一際大きな建造物。

それは、オレ達の王国のシンボルでもあるセイクリッドット城には比べ物にはならない大きさだった。


「…すごい」


セイラ姫もその大きさに圧巻されたようだった。

もちろんオレもその中の一人だ。

大きさだけでなく外壁や装飾品なども、どれもこれも見たことがない。


「確かに…この規模にはびっくりだね」

「つーかこんな馬鹿でけぇ建物があの森の中にどうやって潜んでたんだよ…そっちの方が驚きだっての」

「まぁ…そうだね。魔力でこの規模の建物を隠そうとすることも出来なくはないけど、少なくとも生半可な魔力では出来ないよ。それも膨大で強大な…それなりの力は持ってないと…ね」


…これもある意味、神だからこそ成せることなのだろうか。

分かってはいたことだけど、やはり神と人間とでは何もかもが違うんだ。


「…さあ、中へ」


青龍は手招きしてオレ達を呼ぶ。

…今更、迷っていても仕方がない。


「ー行きましょう」


こうして、青龍の導くままオレ達は巨大な建物の中へと足を踏み入れたのだった。

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