大賢者居酒屋〜転生した大賢者の居酒屋は、看板娘と共に順調です〜

赤海 梓

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プロローグ:5 掃討。出迎えと新たな感情

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「一応私強いんだよ?そんな私が勝てない相手に、あなたは勝てるって言うの!?」

「こっちには法的措置があるしな」

「法的措置が通用する相手とは思えないよ…」

「…まあ見てろ」

 そして俺はドアを開ける。すると見えたのはフードで顔を隠した集団だった。もとから九尾がここに入ったことはバレていたようで、完全に包囲されている。

「…返しなさい」

「返すって、彼女はお前らの物ではないだろう」

「五月蝿い」

「法的措置を取らせてもらうぞ」

「いいから早くその九尾を渡せ。さもなくば…」

 フードの男は魔術を俺の影に対して展開した。

「待って、だめ!逃げて!!」

「貴様には死んでもらおうか」

 影魔術:暗殺影岩あんさつえいがん

 影から太く尖った紅黒い岩のようなものが胴体に向かってくる。

 グシュア

「いやぁっ!!」

「ふっ、だから素直に渡せ…と…?」

 紅い岩のようなものが貫いたのは、俺ではなくフードの男の胴体であった。

「なっ…!?」

「展開が遅すぎて話にならないな。しかも仕込み場所が俺の影だなんて、所有権を俺に譲っているようなものじゃないか」

「…バケモノ、が」

 そしてフードの男は倒れる。
 それを見ていた周りの連中は、一斉に俺に魔法陣を向ける。

「だから、展開が遅いって言ってるんだよ!」

 展開された魔法陣の所有権を全て俺のものにし、意図的に暴走させる。

 バァン!

 爆発した魔法陣は頭や身体を大きく破損させ、使用者の連中は全員死亡しただろう。

「まぁ、こんなもん…」

 いや、誰か来るな。

 その瞬間、上から大剣を振り下ろす何者かが俺を襲う。

「よっと」

「ほう?俺の剣を素手で止めるか、面白い」

「俺は全く面白そうに思わない。お前、弱いだろ」

「口先だけは良いようだ…なっ!!」

 降ってきたガタイのいい男は切りかかってくる。

「魔術師は基本近接戦闘に向いてない!貴様の命、ここで九尾と共に刈り取ってくれるわァ!!」


 格闘魔術:ヘビーウェイトインファイト


 パキィン

「俺の愛剣が…折れっ…」


 格闘魔術:ヘビーウェイトインファイト


 俺は鳩尾から内蔵ごと殴り潰す。

「ぐへぁっ…」

「…」

 俺は吹っ飛んでった男に歩いて少しずつ近づく。

「まっ…待てっ…こうしょ、交渉しよう…!!」

「…」

「その九尾の女を渡すんだ…!そしたらお前の願いをなんでも叶えてやる!金か?女か?この店か!いいだろう、俺たちならこの店をいくらでも繁盛させられ

「うるせえよ」


 格闘魔術:ヘビーウェイトインファイト


 俺は男の顔面に拳を振り下ろし、5センチほど凹むまでに殴りつけた。

「…がっ」

「この俺に低俗な提案を仕掛けてくるな。まあ法的措置なんかよりも、暴力こっちの方が得意なんだけどな」

 そこで男は絶命した。

「全く、この程度の実力で俺に襲いかかってくるんじゃ…」

 …しまった、やりすぎだ!絶対にこの狐の子を怖がらせてしまっただろう…。こんなんじゃ流石に九尾の子は従業員になんてなろうと思わないだろな…。

「す…」

「…」

 だめだ、目が虚ろだ。流石に俺が怖…

「すごい凄い!すっごーい!!」

「…え?」

「凄いよ本当に!ほんっとうにすごーい!!」

「…お前、俺が怖くないのか?」

「なんで命の恩人を怖がらなきゃならないのかわからないよ!それよりもあの男は幹部の中でもトップクラス…一番の剣の使い手だったのに!魔術の申し子である私でも勝てなかったあの男をああも簡単に倒せちゃうなんて!凄いよ!」

「…そうか」

「ね、名前教えてよ」

「名前か?俺の名前はオリスだ」

「オリス、いい名前だよ!…ん?オリス?」

「どうかしたか?」

「…オリスのお母さんとお父さんは、一体どんな人だったの?」

「…俺に両親はいない」

「え、あ…、ごめんなさい…。なんか、ホントに」

「そういう意味じゃない。俺は捨て子だ。気がつけば路地裏に倒れてたんだ」

「そうですか…」

「俺にとっての親は師匠だった。厳しく、妥協は無く、そして心の底から優しい人だった」

「…その人は?」

「一昨日に亡くなったよ」

 九尾の顔が一気に曇る。

「あ、逆にごめんな、急に話逸らして」

「いえ、大丈夫です」

 僅かな沈黙が流れる。そりゃそうだ。こんな重たい話をしてしまったのだから。
 俺はすかさず話題を変える。

「そうだ、俺もお前の名前聞いてもいいか?」

「あっ、そうでしたね。私の名前はクライア=ミアーレセルン。ミアーレセルンの森の長の娘です」

「クライアか。いい名前だな」

「ありがとうございます」

「それじゃあ改めてよろしくな、クライア」

「うん!」

 そして俺たちは固い握手を結ぶのだった。
 ふぅ、これで従業員はとりあえず確保だ。

「オリス、私敬語の方がいいのかな?それともタメ口の方がいい?」

「急にどうした」

「私タメ口の方が気楽だけど、そういうのってほら、雰囲気とかでるじゃん?だからどうなのかなぁ…って」

 そうか。だからちょくちょくタメ口だったり敬語だったりしていたのか。

「…まぁ、接客の時は敬語が望ましいが、それ以外の時は別にタメ口でいいんじゃないか?」

「…!わかった!ありがとね、オリス!」










 あのクライア誘拐未遂事件から2日後、俺たちは開店の準備をしていた。
 ちなみにあの男たちは裏社会の中でも上位の存在だったらしく、今は政府に任せている。処刑か拷問か、どう処罰されるかわからないが禁錮は免れないだろうな。

「そういえばオリスって、もしかしてあの大賢者様と関わりがあったりするのかな?」

「…は?」

 唐突なクライアの質問に、俺は言葉が詰まる。

「オリスってかつての大賢者様の名前だから気になったんだ。マイナーな書籍にたまに書かれてるくらいだから、今の時代知ってる人は少ないけど、オリスって名前この時代ではほぼ聞かないし、もしかしたら何か関係があるのかなって?」

「…ああ」

 俺は賭けに出ることにした。
 この子は、クライアは俺の実力を怖がらなかった。俺の実力を知っても尚、同じように…いや、全く同じく接してくれている。
 この子なら、俺がかつての大賢者と知っても、1人の人間として見てるれるんじゃないか…?

「俺はかつての大賢者、転生体の『オリス=ファームド=アラウスネス』だ」

「…やっぱり」

 俺の僅かな淡い希望は、

「やっぱり大賢者様だったんだね、オリスは!かっこいい!これからよろしくね!」

 彼女のその笑顔によって、叶えられることになった。

「…!」

 同時に、俺の中の何かが膨れ上がり、鼓動が早まるのが感じられた。
 なんだ、この気持ちは?家族でも友人でもない、何か特別な感情を俺は彼女に抱いてしまっている…?

「…あ、」

 俺は、どうかしてしまったのだろうか。
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