乙女ゲームの余り物たちと結婚させられるために異世界から召喚されました

そいみるくてぃー

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今日の朝食のあと出発するのが事前に決まっていたので、昨日はホテル泊だった。公爵だからとスイートを案内してもらえたが、離れたところにあるもうひとつのスイートルームに彼女と夫達は宿泊したようだった。なぜなら

「何故、建物の端と端なんだ…しかもここは転移が使えない」

そう、このホテルは転移の術を使えない。本来ならばあちらが来るものだと思っていたが、時間になっても来る気配がないのでこちらから出向くことにしたのだ。

「では殿下お待ちください」

ミシェルが彼女達の宿泊する客室の扉をノックする。数分待ったが出てこない。痺れを切らしたロランが先程より強めに扉を叩くと扉が開いた。

「なんですか?こんな朝っぱらから」

まさか全裸だとは思わなかったジョエルが気だるそうに出てきた。

「おい、服を着ろ」
「今起きたばかりなんですよ…」
「待ち合わせの時間は過ぎていると思いますが」
「あぁ、そうですね、殿下申し訳ありません。結婚式から間もなかったので疲れがでてるんですよ。これから二人を起こして支度をしますのでお部屋でお待ちいただけたら。支度が出来次第お部屋に参ります」

またこの広いホテルの端から端まで戻れと?

「こちらで待たせていただいてもよろしいですか?ミズキの支度でしたら私も手伝えることがあるかもしれませんし、殿下もロランも少しお茶さえ出せばおとなしくしてくれますので」
「…わかりました。殿下、ミズキの着替え覗かないでくださいね」
「なっ…!そんなことはしないっ!!」

なにが楽しくて朝からいけすかない男の全裸なんて見せつけられなきゃならないんだ。






『ミシェルー髪やってー、あと着替えも手伝ってー』

お茶を飲みながら時間を潰している最中にバスルームから聞こえたのは彼女の甘い声、給仕をしていた男は嬉しそうにそちらへ向かった。軽い舌打ちが目の前の男に聞こえたのかニヤニヤしながら

「殿下も素直になればいいのに」

自分はほぼ事故で彼女を恋人にしたというのに上から言われるから苛立つ。

「お前だって無理矢理だと聞いたが?」
「無理矢理ではなくちゃんと本人がいいと言ってくれましたから。まぁジョエル殿には散々嫌味を言われましたが」

ジョエルが彼女の夫候補を増やしたくないのはなんとなくわかっていた。次期宰相は確実なのに、自分は国の当たり前を受け入れたくないとはなんという男なのだろう。
ノアールはジョエルとは正反対、出来ることなら自分とロラン、ミシェルも彼女の夫となってほしいと純粋に願っているのだ。学生時代からノアールと交流があるが、理不尽な扱いをうけていた彼に対して差別もせず普通に接していたからか、同じ人を好きになったのなら一緒に夫になりたいと純粋に思ってくれているのた。自分だけがミズキに良く思われていないこともあってか常に心配されている。年下のやつに心配されることも心外だがこればかりは仕方ない。

ティーポットに入っていたお茶も尽き、暇を持て余していた時に不意に彼女が目の前に現れた。淡い紫のデイドレスを身に纏った彼女は花のようだ。

「ねぇロラン、変なところない?」
「あぁない。」
「ほんと?じゃあ仕上げしてリップ塗っておしまい。ジョエルー、リップの箱はー?」
『部屋に置いてきてますからノアにとってきてもらいましょう』

寝室もとい支度部屋に戻った彼女は夫達と楽しそうにしている声が聞こえる。待て、この転移が使えないホテルでノアールは城の貴賓室、あちらも転移ができないはずなのにするというのか?ノアールだけ対策できていないのか…クーデターでも起こされたら城はあっという間に陥落させられるだろうな…それより目の前の男に一言言わねばならない

「なんだ先程のは?『あぁない』だと?他にも言うことがあるだろう」
「…あなたにだけは言われたくないですよ」
「はぁ?」
「好きな女の前で素直になれない男に何を言われたって」
「なっ!なにをっ!」

一言言わねばと思って言ったのに、言い返されるとは思わなかった。昔からだが忠臣というものは自分には存在していない。兄達にはいたのに。幼馴染みだから仕方がないといえばそれまでだが、兄達についている侍従や護衛は幼馴染みであろうと兄達をたてていた。それに比べ自分はどうだろうか?三男だからか?舐められているのか?
上手いことやって彼女の恋人として収まった二人には正直苛立つ部分もある。しかしそれも自分のためなのだとわかってはいる。わかってはいるが、正直厳しい。




「え?4人しか乗れないの?」

ホテルに用意された馬車は大人4人乗り。そうだ、この国の王子である自分と異世界の花嫁である彼女がいい関係を築いているとアピールするために用意されたものなのだから人数は最低限だろう。ロランは元より外で馬に乗る予定だったから1人どうするかだ。

「ロランが外なので私は殿下から離れることができません。」
「でしょうね。ノアも異世界の花嫁としてのミズキの護衛として離れることができませんし私が外ですね」

この男が珍しく自分から外でいいと言うことに驚いた。『殿下が外でいいんじゃないんですか?』などと言い出しそうなのに。

「新婚旅行なのにジョエルは別なの?」

彼女の一言で夫2人の目の色がかわった。なんとかジョエルを同じ馬車に乗せようと導きだした答えは想像を越えていた。
御者に大人4人に子どもがならいいかと聞き、小さいお子さんでしたらと言われて「2歳?3歳?」「2歳はまだ言葉が拙かったから3歳でしょうね」で小さくなった。ノアールの魔術たるや…そんな微妙な年齢の調整まで出来るのか?
目の前には先程まで目の前にいた男が小さくなっている。ノアールの魔術だと服まで小さく出来るのかと関心している男が横にいるが、そこじゃないだろと言ってやりたい。

「やぁ~ん!かぁわいいーーー!!!!!」

しゃがみこんで夫である幼児の頭を撫でて顔を撫でてかわいいかわいいと連呼している。中身はアレだぞアレ。結婚指輪がブカブカだから持っててあげるとか、ピアスもおっきいねとかノアールと二人で楽しそうにしている。

「幸せそうな家族ですね。中身は子どもではありませんけど」
「あ、あぁ…」
「殿下のお守りがなければ私がアレになりたかったですよ」
「お前執事だろ」

ロランが馬を引いて戻ってきたときの顔はとんでもなかった。この場にいる人間はジョエルより年下だから、ジョエルの子ども時代を見たことがない。自分には物心ついたときから偉そうなヤツだった印象しかない。それがあんなに子どもらしい笑みを浮かべながらミズキとノアールに構われているのを見ることになるなんて…天変地異の前触れとしか思えないが、愛する女を見つけると皆あぁなるのだろう。現に横の二人は恋人となった彼女が子どもに構う姿を見て思考が飛んでいる。子どもができたらなどと考えているのだろう、幸せなことだ。

「じゃあジョエルはあたしの隣ね。あとノアも。」

進行方向側は彼女達へ譲ろうとしたが「でんかのほうがゆうしぇんでちゅよ」と、さしすせそがろくに発音できない舌ったらずになっているジョエルに言われたので甘えることにした。
最初は彼女の隣に座っていたジョエル(もはや別人としか思えない)も彼女の膝の上、こちらには完全に背を向けて彼女と向かい合っている。

「ミズキは年下がタイプなんですか?」

ミシェルが遂に聞いてくれた。自分からは聞けなかったからようやくだ。気にはなっていた。ノアールをすぐ気に入ったこともあってか、彼女の恋愛対象は基本的には年下なんじゃないかと

「別に。むしろこのジョエルは犯罪でしょ」
「えぇ。まぁでも少なからず少年を好む女性はいらっしゃいますから」
「でもこのジョエルはダメー。むしろあたしとジョエルに子どもできたらこんなかんじだろなって思ったらもうかわいくてかわいくて、ねぇ?」
「えぇ」
「やだー、子どもなんだからさ、『うん』とか『そーだね』とかにしてよ。ねー、ジョエルくん」
「…うん」
「きゃー!かわいー!」

ジョエルと子どもをつくるつもりなのか、と。残念に思ってしまった自分に嫌気がさす。国の発展、子孫繁栄のためにわざわざ異世界から呼びつけているくせに、彼女が望んでいないなら今からでもその役目を無視してでも好きに過ごしてほしいと思ってしまった自分は王族としては失格だ。国の要であるノアールの魔術をかなり使ってまで呼び出しておいて、自分以外を好きになって子孫を残されるくらいなら異世界の花嫁としての役割なんて放棄してしまえなんて…

「このまま街を回って昼食、殿下と共に商会の方と会ってから宿までは予定がとくにありませんがそちらでなにか考えていたことはありますか?」
「あたし娼館行きたい!キャバクラ遊び!」

斜め上の提案がきて馬車内は一瞬で静まり返った。




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