2 / 13
2
しおりを挟む
「コホラも二十歳になるんだな。自分用の魔力が供給されるんだろう?羨ましい限りだ」
一年に一度、『空降ろしの儀』があり、その時二十歳以上の魔法使いには一年分の魔力が配られる。
コホラはラエを見据える。淡く微笑むように唇が弧を作る。
「いや、俺には魔力は配られないだろうな」
コホラは言った。口元は微笑んで見えるが目は据わっている。ラエはムッとして言う。
「そんなこと……!……あってはならない……と思う」
ラエの怒った口調が段々と自信のない声色に変わる。ラエ自身、そういうこともありそうだと思ってしまったのだろう。
コホラはもともとよそ者であった。凍土の丘の塔から逃げてきた部外者で、公の場には行くことができない情勢事情がある。よそ者であるため、火山のふもとの塔が魔力の供給を拒む可能性は大いにあった。
「塔長に掛け合ってくるよ」
塔長とは塔の方針の最終決定を下す議会の長である。自室を出ようとするラエにコホラが言う。
「お前をお気に入りにしてた塔長はもういない。今の塔長がお前の言葉を聞いてくれるとは思えないけど」
ラエはそれに答えず、コホラの部屋から出ていく。仕方なしにコホラはラエを追いかけた。
ラエを追いかけて塔長の執務室に着く。塔長はちょうど部屋にいた。
ラエが塔長を説得しようとしているのが聞こえる。
「コホラに魔力の配給がないというのは公平ではないと思います」
「コホラの問題は公平かどうかという点ではないのですよ、ラエ。議会でも決定していることです。私一人の許可を得たところで覆せません」
「彼にも魔法使いとしての権利があるはずです」
「コホラへの扱い一つで凍土の丘の塔との関係が悪化する可能性があります。塔同士の争いにでもなってみなさい。どれだけの被害が出ることやら」
コホラは執務室へと入った。塔長は肘掛けのついた籐の椅子に座って机を挟んでラエと向かい合っている。コホラは塔長に挨拶してからラエに言う。
「ラエ、俺は魔力がなくても構わないから。戻ろう」
「コホラ……」
ラエは諦めがたい様子だったが、口を結んでコホラと部屋を後にした。
一年に一度、『空降ろしの儀』があり、その時二十歳以上の魔法使いには一年分の魔力が配られる。
コホラはラエを見据える。淡く微笑むように唇が弧を作る。
「いや、俺には魔力は配られないだろうな」
コホラは言った。口元は微笑んで見えるが目は据わっている。ラエはムッとして言う。
「そんなこと……!……あってはならない……と思う」
ラエの怒った口調が段々と自信のない声色に変わる。ラエ自身、そういうこともありそうだと思ってしまったのだろう。
コホラはもともとよそ者であった。凍土の丘の塔から逃げてきた部外者で、公の場には行くことができない情勢事情がある。よそ者であるため、火山のふもとの塔が魔力の供給を拒む可能性は大いにあった。
「塔長に掛け合ってくるよ」
塔長とは塔の方針の最終決定を下す議会の長である。自室を出ようとするラエにコホラが言う。
「お前をお気に入りにしてた塔長はもういない。今の塔長がお前の言葉を聞いてくれるとは思えないけど」
ラエはそれに答えず、コホラの部屋から出ていく。仕方なしにコホラはラエを追いかけた。
ラエを追いかけて塔長の執務室に着く。塔長はちょうど部屋にいた。
ラエが塔長を説得しようとしているのが聞こえる。
「コホラに魔力の配給がないというのは公平ではないと思います」
「コホラの問題は公平かどうかという点ではないのですよ、ラエ。議会でも決定していることです。私一人の許可を得たところで覆せません」
「彼にも魔法使いとしての権利があるはずです」
「コホラへの扱い一つで凍土の丘の塔との関係が悪化する可能性があります。塔同士の争いにでもなってみなさい。どれだけの被害が出ることやら」
コホラは執務室へと入った。塔長は肘掛けのついた籐の椅子に座って机を挟んでラエと向かい合っている。コホラは塔長に挨拶してからラエに言う。
「ラエ、俺は魔力がなくても構わないから。戻ろう」
「コホラ……」
ラエは諦めがたい様子だったが、口を結んでコホラと部屋を後にした。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる