歌わぬ鯨

高山奥地

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「コホラも二十歳になるんだな。自分用の魔力が供給されるんだろう?羨ましい限りだ」

一年に一度、『空降ろしの儀』があり、その時二十歳以上の魔法使いには一年分の魔力が配られる。

コホラはラエを見据える。淡く微笑むように唇が弧を作る。

「いや、俺には魔力は配られないだろうな」

コホラは言った。口元は微笑んで見えるが目は据わっている。ラエはムッとして言う。

「そんなこと……!……あってはならない……と思う」

ラエの怒った口調が段々と自信のない声色に変わる。ラエ自身、そういうこともありそうだと思ってしまったのだろう。

コホラはもともとよそ者であった。凍土の丘の塔から逃げてきた部外者で、公の場には行くことができない情勢事情がある。よそ者であるため、火山のふもとの塔が魔力の供給を拒む可能性は大いにあった。

「塔長に掛け合ってくるよ」

塔長とは塔の方針の最終決定を下す議会の長である。自室を出ようとするラエにコホラが言う。

「お前をお気に入りにしてた塔長はもういない。今の塔長がお前の言葉を聞いてくれるとは思えないけど」

ラエはそれに答えず、コホラの部屋から出ていく。仕方なしにコホラはラエを追いかけた。

ラエを追いかけて塔長の執務室に着く。塔長はちょうど部屋にいた。

ラエが塔長を説得しようとしているのが聞こえる。

「コホラに魔力の配給がないというのは公平ではないと思います」

「コホラの問題は公平かどうかという点ではないのですよ、ラエ。議会でも決定していることです。私一人の許可を得たところで覆せません」

「彼にも魔法使いとしての権利があるはずです」

「コホラへの扱い一つで凍土の丘の塔との関係が悪化する可能性があります。塔同士の争いにでもなってみなさい。どれだけの被害が出ることやら」

コホラは執務室へと入った。塔長は肘掛けのついた籐の椅子に座って机を挟んでラエと向かい合っている。コホラは塔長に挨拶してからラエに言う。

「ラエ、俺は魔力がなくても構わないから。戻ろう」

「コホラ……」

ラエは諦めがたい様子だったが、口を結んでコホラと部屋を後にした。
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