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世話係
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数日後、医師から開放されたフリッツは疲れきった表情をして、目の前にいる従兄の顔をぼんやりと見ていた。
「お疲れさん、フリッツ。やっと爺さんから開放されたか」
陽に焼けた顔で笑うのはギルベルト。
騎士団に所属するフリッツの従兄で、フース国王の弟の長男だ。
政治関連に関わるのは嫌だからと、騎士団に所属して大きすぎない役職で毎日を過ごしている。性格は竹を割ったようで、二人の関係は本物の兄弟以上に仲がいい。
「ああ、体中に先生の指紋がついてるんじゃないかって思うよ。それより、依頼した件はどうだった?」
メイドがギルベルトのお茶を注ぎ、彼はそれを王族らしい上品な所作で飲む。
ふぅ、と紅茶の香りのする吐息をついてから、ギルベルトは長い脚を組んでフリッツによく似た綺麗なブルーアイを細めた。
「残念ながら、お前が行っていた辺りに人が住んでいた気配のある小屋は見つけたが、今は誰も住んでいない様子だ。近くにある小さな町で聞き込みもしたが、普段からあまり人付き合いのない娘らしく、彼女がいなくなった日付も町の者は知らないらしい」
「……そうか」
広々とした部屋一面にある格子ガラスの窓から十字の光が差し込み、それを上品なレースのカーテンが柔らかな光へと変えている。
あれからフリッツは近隣の町や村を捜索していた警備隊にすぐに保護され、アメリアの小屋をすぐにでも突き止めたい気持ちはあったが、それをしてしまっては彼女に申し訳ないという気持ちがあり、一度王宮へ戻って両親に無事を報告してから、改めてアメリアを探す事にしたのだ。
だが、思ったよりも両親は心配しており、医師による診察で怪我や打撲跡が見付かり、一日がかりで医師の世話になった後、更に二日を部屋に閉じ込められてフリッツの周りを医師と看護婦が囲むという時間になってしまう。
その間、アメリアがいなくなってしまっては敵わないと、フリッツは見舞いに来た従兄にアメリアの小屋の大体の場所を伝え、彼女の捜索を願ったのだ。
「で、そのアメリアという娘が……どうなんだ?」
長い指でティーカップを弄びながらギルベルトがニヤニヤと笑い、脚を組みなおした。
「……その」
従兄であり親友の揶揄した表情にフリッツは鼻の頭をこすり、目を泳がせる。
「恋でもしたのか? 国中の女の憧れの王子様が」
完全に面白がっている従兄を睨みつけてから視線を逸らし、豪奢なソファの肘掛けに頬杖をついたフリッツが、ボソッと呟いた。
「……悪いか」
「ほぉぉ」
ギルベルトが湖の色の目を丸くし、大きな手をパンパンと鳴らしながら喜んだ。
「そうかそうか、お前は適当な所でアリー嬢と結婚するのかと思っていたが……、そうかそうか」
やたらと「そうかそうか」を大声で連呼するギルベルトは、素直に従弟の恋愛を喜んでいる。
フリッツが長い間貴族の令嬢相手に辟易としていたのは承知しているし、婚約者候補と名高い名家の令嬢アレクサンドラが、フリッツを見つけさえすれば過剰なまでの愛情を注いでいるのも知っている。
それにフリッツが尚更辟易として、ギルベルトの所で剣の練習をするのを口実に逃げ出すのはギルベルトを筆頭とする騎士団メンバーには筒抜けで、尚且つ『男の約束』という堅い約束で、時々ギルベルトは仲のいい部下と一緒にフリッツを高級娼館へと連れて行っているのだ。
「よしてくれ……。アリーは貴族の女性としては申し分のない人かもしれないが、彼女を生涯の伴侶とするのなら話はまた別だ」
豪奢な金髪を持つ彼女を思い出してフリッツは顔をしかめ、大きな手で顔を覆ってゆるりと頭を振る。
アレクサンドラという名前を聞いて、反射的に思い出すのがあの匂いだ。
流行りの香水だと言って、いつも何かしらの匂いをプンプンとさせていて、彼女がフリッツを驚かそうと忍び足で近付いてきても、フリッツはすぐに気がついてしまう。
それを彼女は「愛する者の直感だ」と勘違いをして、どうやら一人で気持ちを高ぶらせているらしい。
確かに彼女は美しい。
豪奢な巻き毛の金髪に、エメラルドグリーンの瞳。
美容にいいというものを片っ端に試しているという噂や、それに伴う努力に見合って、なかなかお目にかかれない美女だというのは、フリッツも認める。
だが、それだけだ。
中身がないと言ってしまうのは、名家の令嬢である彼女に決していう事はないが、フリッツはアレクサンドラと共有する時間で、有益だと感じたり、もっと一緒にいたいと思った事は一度もなかった。
「そのアリー嬢は?」
「あぁ、俺が帰ってきた日に診察中の部屋を襲撃して、看護婦に追い返されたよ。流石に俺もあの時は状況に便乗して、『また後日』と言っておいた」
「ふはは! 俺はいつもお前がそうやってアリー嬢から逃げ回るのを、影で腹を抱えて笑わせてもらっているよ」
「っくそ……」
午後の麗らかな日差しが差し込むフリッツの部屋にギルベルトの快活な笑い声が響き、悄然としたフリッツが子供の様に頬を膨らませ、従兄が笑い止むのを待つ。
「……あぁ、笑った。……で? そのアメリアっていう子はどんな子なんだ? お前が惚れるぐらいなんだから、相当の美人か?」
たっぷり五分後ぐらいにギルベルトが指先で涙を拭い、元の話題へと戻した。
「それなんだ……。俺はアメリアの姿を知らないんだ」
「じゃあ、どうして惚れたんだ? 性格か? 体か?」
ギルベルトが金茶色の眉を上げ、大仰に驚いてみせる。
「……両方だよ」
ぶすっとしたフリッツに笑い上戸のギルベルトがまた笑い出し、ひぃひぃと言いながら「どこでそんな美味しい出会い方をしたんだ」と声にならない声で言い、フリッツはつまらなくて仕方がない。
「ギル、いい加減に――」
眉間にしわを寄せたフリッツが呻りかけた時、部屋のドアをノックする音がした。
「……入れ」
ギルベルトを指差していた指が天井を向いてから下げられ、フリッツはギルベルトの前だけで見せる顔から、いつもの『王子』としての顔へと変えてしまう。
「フリッツ様、お加減は如何ですか?」
控え目にドアが開かれ、入って来たのはフリッツが子供の頃からメイドとして働いている、今は恰幅のいい中年女性だ。
「ハンナ、どうした?」
「本日よりフリッツ様の新しいお世話係になる者を、お連れしました」
メイド長のハンナの隣には、彼女と似たメイド服を着ている若い女性がいる。
「おや」
新人の顔を見て、フリッツの向かいでギルベルトが小さく声を出したのが聞こえた。
フースの人間は金髪碧眼かそれに準じた色の者が多いなか、新人のメイドは黒髪に赤茶色の目をしている。
珍しい色の新人だな、と男性二人が思っているのが顔に出ていたのか、ハンナが訳あり顔で鷹揚に頷いた。
「この子は事情がありまして、さるお方からの推薦でフリッツ様のお世話係となりました。ロシェの生まれらしく、フースの言葉は話せません。代わりにこちらのいう事はちゃんと通じるという事です」
「へぇ……」
それまでギルベルトに言葉をぶつけようとしていたのが中断されてしまったフリッツだが、それも新しい世話係の登場でどうでも良くなってしまったらしい。
新しい世話係というのも、つい最近今までの世話係を解雇したばかりだからだ。
どうにもフリッツはその地位やルックス、優しい性格からか異様なまでに女性にもて、そしてそれは世話係に至っても同じだった。
二人きりになれば少しずつ世間話や個人的な話もするようになり、それが今までの世話係にはフリッツが自分に好意を抱いているように思い込む要因となってしまったらしいのだ。
結果、フリッツの世話係は季節の変わり目ぐらいのペースで入れ替わりが続き、それが他の者にどう思われているのかとか、フリッツには少し悩みの種でもあった。
この変り種の新人はどうなのか……。
「こんにちは。俺はフリッツ。君の名前は?」
フリッツが立ち上がって新人の世話係に近付き、爽やかな笑顔を浮かべて握手を求める。
世話係は零れ落ちそうな大きな目を瞬かせてから、チラリとフリッツの手を見、その手には触れずに、エプロンスカートを摘まんで深く礼をしてみせた。
軽く膝を曲げて目を伏せ、それが終わってから一言だけ「クロエ」と名乗る。
「これ、クロエさん。フリッツ様のお手を断るだなんて」
「いや、いいんだ。ハンナ」
そういう謙虚な姿勢は嫌いではない。
人として初対面の相手に、しかも自分の世話をしてくれる相手に挨拶をするのは当たり前だが、今までの世話係は若くも熟年でもそれに勘違いをしてしまう節があった。
クロエと名乗った新人の目を真っ直ぐに見ると、彼女も不思議そうな表情でこちらを真っ直ぐに見詰め返す。
おどおどと目線を泳がせたり、顔を赤らめる事もない。
(上手くやっていけそう……かな)
「いい女じゃないか、フリッツ」
「ギルベルト様」
脚を組んで愉快そうに笑っているギルベルトをハンナがたしなめ、「まぁ、宜しいでしょう」とにっこりと丸い頬を緩ませてから、クロエの背中をさすった。
「クロエさんには、フリッツ様のお世話で必要な事は全て教えてあります。飲み込みの早い子ですし、寡黙なので今度こそフリッツ様のお気に入るかと」
「ハンナ、俺は今まで気に入らなかった訳でないよ。少し困ってしまっただけだ」
苦笑したフリッツの背後でギルベルトがニヤニヤし、今まで世話係の色香で困っていた従弟の愚痴を思い出しているのだろうか。
「それでは私は仕事が御座いますので、失礼致します。クロエさん、しっかり頼みますよ」
最後にハンナがクロエの肩を叩き、部屋から出て行った。
クロエは黙礼してからいつも世話係が控えている部屋の隅へと移動し、フリッツの声が掛かるのを待機する姿勢を取る。
「楽にしていていいよ」
フリッツが声をかけてもクロエは真面目な顔で前を向き、小さく一つ頷いただけだった。
広々とした部屋を横切ってフリッツはまたギルベルトが座っているソファまで戻り、お茶の続きに取り掛かる。
「それにしてもロシェの女か。でも美人だな」
「よせよ、ギル。世話係をそういう目で見るものじゃない」
「そう言えば俺が追っていた国境の件だが――」
焼き菓子を一つ口に放り込んでギルベルトがそう切り出した時、部屋のドアを再びノックする音がした。
フリッツが返事をするとクロエがすぐに動き、来客を迎え入れるためにドアを開く。
「フリッツ様、ご機嫌よう」
むわっ……、と濃厚な花畑の香りがした。
ギルベルトが横を向いて手で口元を覆い、フリッツの笑顔が強張る。
クロエだけは表情を変えないまま、自分の初仕事に徹そうとしていた。
眩いまでの金髪を綺麗に巻いた女性が優雅に微笑みながら部屋に入り、世話係が代わったことなど気付かない様子で、まるでそうするのが当たり前のようにフリッツとギルベルトの元へと歩み寄る。
「やぁ、アリー嬢」
「こんにちは、アリー嬢」
フリッツは少し強張った笑顔だが平素の態度で令嬢に挨拶をし、ギルベルトは鼻で呼吸をするのを諦めたのか、鼻が詰まった声で挨拶をする。
「あら、ギルベルト様はまだ鼻炎が治ってらっしゃらないのね。お大事に」
「どうも」
「フリッツ様、その後お加減は如何ですの? わたくし、心配で堪らなくて水も喉を通りませんでしたわ」
それを聴いてギルベルトは内心「嘘をつけ」と毒づく。
この腹黒いお嬢様が、フリッツに気に入られようと妖しい小瓶に入った水を、薬のように飲んでいるという噂は耳に入っている。
彼女が美容にいいという事を何でもやっているのは有名な噂で、美に対しての努力家だという賞賛がある傍ら、フリッツを射止めたいがために媚薬や魔女の薬や、ありとあらゆるものに手を出しているという話も、スパイ行動に長けた部下の情報で知っていた。
「アリー嬢、心配をありがとう。俺はまだ少し休養が必要な体だから、もう少し会いに来るのは控えてくれないかな」
「そうですか……?」
にっこりと笑ったアレクサンドラのエメラルドグリーンの瞳がギルベルトを捉え、蛇のように細められる。
それは明らかに、フリッツからの無償の信頼を得ているギルベルトへの嫉妬だった。
そしてをそれをギルベルトも承知している。
だからこの腹に一物ありそうな毒婦を、大切な従弟で王位継承者第一位にいるフリッツに宛がう気にはなっていないのだ。
「それでは……また後日改めて窺いますわ」
アレクサンドラが優雅に貴婦人の礼をし、豪奢なドレスのトレーンを引きずってゆったりとドアへと向かう。
ドアの前で静かに控えているクロエを見て、一言。
「新しいお世話係は、随分と汚らしい色なんですのね」
自分の要望が叶えられなかった不満を、せめて使用人の悪口をいう事で発散させようとしたのだろうか。勝ち誇ったような顔と高慢なもの言いがクロエに謂れのない攻撃をし、そして噎せかえる悪臭を残して華麗なる毒婦は去って行った。
「換気! 換気だ!」
咳き込みながらすぐにギルベルトが声をあげ、クロエが急いで窓へ向かう。
開け放たれた大きな窓から爽やかな風が入り込み、高級なレースのカーテンをふわりと持ち上げてゆく。
「ぁっ」
それに煽られたクロエが小さな悲鳴を上げ、思わず後ろに一歩踏み出した。
「大丈夫かい?」
空気を吸いに来たフリッツがそれを支え、大きな手がパフスリーブの肩を掴む。
と、ビクッとクロエが身を震わせて、弾かれたようにフリッツから体を離した。
「えっ?」
世話係の過敏な反応にフリッツは虚を突かれて驚き、そこで初めてクロエという世話係の顔を改めて見る事となる。
柳眉の下の目は満天の星空を映したかのような煌きを湛えた、きらきらと潤んだ目。それを黒々とした長い睫毛が縁取り、肌は白く抜けそうなのに頬と耳は真っ赤になっていた。
睫毛と同じ色の髪はきっちりと結われて白いシニヨンカバーに覆われ、首筋にほんの少しほつれた後れ毛が、窓からの風に吹かれてそよぐ。
「はは、酷い匂いだろう。君も俺の世話係になったのなら、あれに慣れなきゃな」
翻るレースのカーテンの向こうでフリッツが笑い、クロエも静かに微笑を落とした。
「フリッツ、今日はこれからどうする? あぁ、臭い」
テラスに出たギルベルトが大仰に深呼吸をし、短い茶金髪をなびかせて笑う。
テラスの向こうには左右対称の美しい庭園が広がり、その向こうに王宮をぐるりと囲む白い壁、更に奥にはオレンジの屋根の街並みと森が広がっていた。
「俺はもう一度あの森に行こうと思うよ。自分の目で確かめないと気が済まない」
クロエを綺麗な子だな、と思いながらフリッツは強い風と悪臭、そして彼女が新しい世話係という事で、特に彼女を気にする事はなかった。
ましてやその香りに気付く訳もない。
「風が強い。森の方にある雲もあまりいい色じゃないが」
「馬を走らせればいい」
簡単な会話をして二人はもう一度アメリアがいた小屋へ行く事を決め、その後の部屋の管理をクロエに任せる事にした。
「じゃあクロエ、部屋の換気が終わったら片づけをしておいて。俺たちは少し出かけるから」
主人の声にクロエは頷いて丁寧に礼をする。
「あの新しい世話係、いい体してるな」
部屋を出る際にギルベルトが笑い、フリッツがその後ろ頭を叩いた。
それを聴いて部屋に残されたクロエは溜息をつき、「デリカシーのない男性ね」と呟くのだった。
「お疲れさん、フリッツ。やっと爺さんから開放されたか」
陽に焼けた顔で笑うのはギルベルト。
騎士団に所属するフリッツの従兄で、フース国王の弟の長男だ。
政治関連に関わるのは嫌だからと、騎士団に所属して大きすぎない役職で毎日を過ごしている。性格は竹を割ったようで、二人の関係は本物の兄弟以上に仲がいい。
「ああ、体中に先生の指紋がついてるんじゃないかって思うよ。それより、依頼した件はどうだった?」
メイドがギルベルトのお茶を注ぎ、彼はそれを王族らしい上品な所作で飲む。
ふぅ、と紅茶の香りのする吐息をついてから、ギルベルトは長い脚を組んでフリッツによく似た綺麗なブルーアイを細めた。
「残念ながら、お前が行っていた辺りに人が住んでいた気配のある小屋は見つけたが、今は誰も住んでいない様子だ。近くにある小さな町で聞き込みもしたが、普段からあまり人付き合いのない娘らしく、彼女がいなくなった日付も町の者は知らないらしい」
「……そうか」
広々とした部屋一面にある格子ガラスの窓から十字の光が差し込み、それを上品なレースのカーテンが柔らかな光へと変えている。
あれからフリッツは近隣の町や村を捜索していた警備隊にすぐに保護され、アメリアの小屋をすぐにでも突き止めたい気持ちはあったが、それをしてしまっては彼女に申し訳ないという気持ちがあり、一度王宮へ戻って両親に無事を報告してから、改めてアメリアを探す事にしたのだ。
だが、思ったよりも両親は心配しており、医師による診察で怪我や打撲跡が見付かり、一日がかりで医師の世話になった後、更に二日を部屋に閉じ込められてフリッツの周りを医師と看護婦が囲むという時間になってしまう。
その間、アメリアがいなくなってしまっては敵わないと、フリッツは見舞いに来た従兄にアメリアの小屋の大体の場所を伝え、彼女の捜索を願ったのだ。
「で、そのアメリアという娘が……どうなんだ?」
長い指でティーカップを弄びながらギルベルトがニヤニヤと笑い、脚を組みなおした。
「……その」
従兄であり親友の揶揄した表情にフリッツは鼻の頭をこすり、目を泳がせる。
「恋でもしたのか? 国中の女の憧れの王子様が」
完全に面白がっている従兄を睨みつけてから視線を逸らし、豪奢なソファの肘掛けに頬杖をついたフリッツが、ボソッと呟いた。
「……悪いか」
「ほぉぉ」
ギルベルトが湖の色の目を丸くし、大きな手をパンパンと鳴らしながら喜んだ。
「そうかそうか、お前は適当な所でアリー嬢と結婚するのかと思っていたが……、そうかそうか」
やたらと「そうかそうか」を大声で連呼するギルベルトは、素直に従弟の恋愛を喜んでいる。
フリッツが長い間貴族の令嬢相手に辟易としていたのは承知しているし、婚約者候補と名高い名家の令嬢アレクサンドラが、フリッツを見つけさえすれば過剰なまでの愛情を注いでいるのも知っている。
それにフリッツが尚更辟易として、ギルベルトの所で剣の練習をするのを口実に逃げ出すのはギルベルトを筆頭とする騎士団メンバーには筒抜けで、尚且つ『男の約束』という堅い約束で、時々ギルベルトは仲のいい部下と一緒にフリッツを高級娼館へと連れて行っているのだ。
「よしてくれ……。アリーは貴族の女性としては申し分のない人かもしれないが、彼女を生涯の伴侶とするのなら話はまた別だ」
豪奢な金髪を持つ彼女を思い出してフリッツは顔をしかめ、大きな手で顔を覆ってゆるりと頭を振る。
アレクサンドラという名前を聞いて、反射的に思い出すのがあの匂いだ。
流行りの香水だと言って、いつも何かしらの匂いをプンプンとさせていて、彼女がフリッツを驚かそうと忍び足で近付いてきても、フリッツはすぐに気がついてしまう。
それを彼女は「愛する者の直感だ」と勘違いをして、どうやら一人で気持ちを高ぶらせているらしい。
確かに彼女は美しい。
豪奢な巻き毛の金髪に、エメラルドグリーンの瞳。
美容にいいというものを片っ端に試しているという噂や、それに伴う努力に見合って、なかなかお目にかかれない美女だというのは、フリッツも認める。
だが、それだけだ。
中身がないと言ってしまうのは、名家の令嬢である彼女に決していう事はないが、フリッツはアレクサンドラと共有する時間で、有益だと感じたり、もっと一緒にいたいと思った事は一度もなかった。
「そのアリー嬢は?」
「あぁ、俺が帰ってきた日に診察中の部屋を襲撃して、看護婦に追い返されたよ。流石に俺もあの時は状況に便乗して、『また後日』と言っておいた」
「ふはは! 俺はいつもお前がそうやってアリー嬢から逃げ回るのを、影で腹を抱えて笑わせてもらっているよ」
「っくそ……」
午後の麗らかな日差しが差し込むフリッツの部屋にギルベルトの快活な笑い声が響き、悄然としたフリッツが子供の様に頬を膨らませ、従兄が笑い止むのを待つ。
「……あぁ、笑った。……で? そのアメリアっていう子はどんな子なんだ? お前が惚れるぐらいなんだから、相当の美人か?」
たっぷり五分後ぐらいにギルベルトが指先で涙を拭い、元の話題へと戻した。
「それなんだ……。俺はアメリアの姿を知らないんだ」
「じゃあ、どうして惚れたんだ? 性格か? 体か?」
ギルベルトが金茶色の眉を上げ、大仰に驚いてみせる。
「……両方だよ」
ぶすっとしたフリッツに笑い上戸のギルベルトがまた笑い出し、ひぃひぃと言いながら「どこでそんな美味しい出会い方をしたんだ」と声にならない声で言い、フリッツはつまらなくて仕方がない。
「ギル、いい加減に――」
眉間にしわを寄せたフリッツが呻りかけた時、部屋のドアをノックする音がした。
「……入れ」
ギルベルトを指差していた指が天井を向いてから下げられ、フリッツはギルベルトの前だけで見せる顔から、いつもの『王子』としての顔へと変えてしまう。
「フリッツ様、お加減は如何ですか?」
控え目にドアが開かれ、入って来たのはフリッツが子供の頃からメイドとして働いている、今は恰幅のいい中年女性だ。
「ハンナ、どうした?」
「本日よりフリッツ様の新しいお世話係になる者を、お連れしました」
メイド長のハンナの隣には、彼女と似たメイド服を着ている若い女性がいる。
「おや」
新人の顔を見て、フリッツの向かいでギルベルトが小さく声を出したのが聞こえた。
フースの人間は金髪碧眼かそれに準じた色の者が多いなか、新人のメイドは黒髪に赤茶色の目をしている。
珍しい色の新人だな、と男性二人が思っているのが顔に出ていたのか、ハンナが訳あり顔で鷹揚に頷いた。
「この子は事情がありまして、さるお方からの推薦でフリッツ様のお世話係となりました。ロシェの生まれらしく、フースの言葉は話せません。代わりにこちらのいう事はちゃんと通じるという事です」
「へぇ……」
それまでギルベルトに言葉をぶつけようとしていたのが中断されてしまったフリッツだが、それも新しい世話係の登場でどうでも良くなってしまったらしい。
新しい世話係というのも、つい最近今までの世話係を解雇したばかりだからだ。
どうにもフリッツはその地位やルックス、優しい性格からか異様なまでに女性にもて、そしてそれは世話係に至っても同じだった。
二人きりになれば少しずつ世間話や個人的な話もするようになり、それが今までの世話係にはフリッツが自分に好意を抱いているように思い込む要因となってしまったらしいのだ。
結果、フリッツの世話係は季節の変わり目ぐらいのペースで入れ替わりが続き、それが他の者にどう思われているのかとか、フリッツには少し悩みの種でもあった。
この変り種の新人はどうなのか……。
「こんにちは。俺はフリッツ。君の名前は?」
フリッツが立ち上がって新人の世話係に近付き、爽やかな笑顔を浮かべて握手を求める。
世話係は零れ落ちそうな大きな目を瞬かせてから、チラリとフリッツの手を見、その手には触れずに、エプロンスカートを摘まんで深く礼をしてみせた。
軽く膝を曲げて目を伏せ、それが終わってから一言だけ「クロエ」と名乗る。
「これ、クロエさん。フリッツ様のお手を断るだなんて」
「いや、いいんだ。ハンナ」
そういう謙虚な姿勢は嫌いではない。
人として初対面の相手に、しかも自分の世話をしてくれる相手に挨拶をするのは当たり前だが、今までの世話係は若くも熟年でもそれに勘違いをしてしまう節があった。
クロエと名乗った新人の目を真っ直ぐに見ると、彼女も不思議そうな表情でこちらを真っ直ぐに見詰め返す。
おどおどと目線を泳がせたり、顔を赤らめる事もない。
(上手くやっていけそう……かな)
「いい女じゃないか、フリッツ」
「ギルベルト様」
脚を組んで愉快そうに笑っているギルベルトをハンナがたしなめ、「まぁ、宜しいでしょう」とにっこりと丸い頬を緩ませてから、クロエの背中をさすった。
「クロエさんには、フリッツ様のお世話で必要な事は全て教えてあります。飲み込みの早い子ですし、寡黙なので今度こそフリッツ様のお気に入るかと」
「ハンナ、俺は今まで気に入らなかった訳でないよ。少し困ってしまっただけだ」
苦笑したフリッツの背後でギルベルトがニヤニヤし、今まで世話係の色香で困っていた従弟の愚痴を思い出しているのだろうか。
「それでは私は仕事が御座いますので、失礼致します。クロエさん、しっかり頼みますよ」
最後にハンナがクロエの肩を叩き、部屋から出て行った。
クロエは黙礼してからいつも世話係が控えている部屋の隅へと移動し、フリッツの声が掛かるのを待機する姿勢を取る。
「楽にしていていいよ」
フリッツが声をかけてもクロエは真面目な顔で前を向き、小さく一つ頷いただけだった。
広々とした部屋を横切ってフリッツはまたギルベルトが座っているソファまで戻り、お茶の続きに取り掛かる。
「それにしてもロシェの女か。でも美人だな」
「よせよ、ギル。世話係をそういう目で見るものじゃない」
「そう言えば俺が追っていた国境の件だが――」
焼き菓子を一つ口に放り込んでギルベルトがそう切り出した時、部屋のドアを再びノックする音がした。
フリッツが返事をするとクロエがすぐに動き、来客を迎え入れるためにドアを開く。
「フリッツ様、ご機嫌よう」
むわっ……、と濃厚な花畑の香りがした。
ギルベルトが横を向いて手で口元を覆い、フリッツの笑顔が強張る。
クロエだけは表情を変えないまま、自分の初仕事に徹そうとしていた。
眩いまでの金髪を綺麗に巻いた女性が優雅に微笑みながら部屋に入り、世話係が代わったことなど気付かない様子で、まるでそうするのが当たり前のようにフリッツとギルベルトの元へと歩み寄る。
「やぁ、アリー嬢」
「こんにちは、アリー嬢」
フリッツは少し強張った笑顔だが平素の態度で令嬢に挨拶をし、ギルベルトは鼻で呼吸をするのを諦めたのか、鼻が詰まった声で挨拶をする。
「あら、ギルベルト様はまだ鼻炎が治ってらっしゃらないのね。お大事に」
「どうも」
「フリッツ様、その後お加減は如何ですの? わたくし、心配で堪らなくて水も喉を通りませんでしたわ」
それを聴いてギルベルトは内心「嘘をつけ」と毒づく。
この腹黒いお嬢様が、フリッツに気に入られようと妖しい小瓶に入った水を、薬のように飲んでいるという噂は耳に入っている。
彼女が美容にいいという事を何でもやっているのは有名な噂で、美に対しての努力家だという賞賛がある傍ら、フリッツを射止めたいがために媚薬や魔女の薬や、ありとあらゆるものに手を出しているという話も、スパイ行動に長けた部下の情報で知っていた。
「アリー嬢、心配をありがとう。俺はまだ少し休養が必要な体だから、もう少し会いに来るのは控えてくれないかな」
「そうですか……?」
にっこりと笑ったアレクサンドラのエメラルドグリーンの瞳がギルベルトを捉え、蛇のように細められる。
それは明らかに、フリッツからの無償の信頼を得ているギルベルトへの嫉妬だった。
そしてをそれをギルベルトも承知している。
だからこの腹に一物ありそうな毒婦を、大切な従弟で王位継承者第一位にいるフリッツに宛がう気にはなっていないのだ。
「それでは……また後日改めて窺いますわ」
アレクサンドラが優雅に貴婦人の礼をし、豪奢なドレスのトレーンを引きずってゆったりとドアへと向かう。
ドアの前で静かに控えているクロエを見て、一言。
「新しいお世話係は、随分と汚らしい色なんですのね」
自分の要望が叶えられなかった不満を、せめて使用人の悪口をいう事で発散させようとしたのだろうか。勝ち誇ったような顔と高慢なもの言いがクロエに謂れのない攻撃をし、そして噎せかえる悪臭を残して華麗なる毒婦は去って行った。
「換気! 換気だ!」
咳き込みながらすぐにギルベルトが声をあげ、クロエが急いで窓へ向かう。
開け放たれた大きな窓から爽やかな風が入り込み、高級なレースのカーテンをふわりと持ち上げてゆく。
「ぁっ」
それに煽られたクロエが小さな悲鳴を上げ、思わず後ろに一歩踏み出した。
「大丈夫かい?」
空気を吸いに来たフリッツがそれを支え、大きな手がパフスリーブの肩を掴む。
と、ビクッとクロエが身を震わせて、弾かれたようにフリッツから体を離した。
「えっ?」
世話係の過敏な反応にフリッツは虚を突かれて驚き、そこで初めてクロエという世話係の顔を改めて見る事となる。
柳眉の下の目は満天の星空を映したかのような煌きを湛えた、きらきらと潤んだ目。それを黒々とした長い睫毛が縁取り、肌は白く抜けそうなのに頬と耳は真っ赤になっていた。
睫毛と同じ色の髪はきっちりと結われて白いシニヨンカバーに覆われ、首筋にほんの少しほつれた後れ毛が、窓からの風に吹かれてそよぐ。
「はは、酷い匂いだろう。君も俺の世話係になったのなら、あれに慣れなきゃな」
翻るレースのカーテンの向こうでフリッツが笑い、クロエも静かに微笑を落とした。
「フリッツ、今日はこれからどうする? あぁ、臭い」
テラスに出たギルベルトが大仰に深呼吸をし、短い茶金髪をなびかせて笑う。
テラスの向こうには左右対称の美しい庭園が広がり、その向こうに王宮をぐるりと囲む白い壁、更に奥にはオレンジの屋根の街並みと森が広がっていた。
「俺はもう一度あの森に行こうと思うよ。自分の目で確かめないと気が済まない」
クロエを綺麗な子だな、と思いながらフリッツは強い風と悪臭、そして彼女が新しい世話係という事で、特に彼女を気にする事はなかった。
ましてやその香りに気付く訳もない。
「風が強い。森の方にある雲もあまりいい色じゃないが」
「馬を走らせればいい」
簡単な会話をして二人はもう一度アメリアがいた小屋へ行く事を決め、その後の部屋の管理をクロエに任せる事にした。
「じゃあクロエ、部屋の換気が終わったら片づけをしておいて。俺たちは少し出かけるから」
主人の声にクロエは頷いて丁寧に礼をする。
「あの新しい世話係、いい体してるな」
部屋を出る際にギルベルトが笑い、フリッツがその後ろ頭を叩いた。
それを聴いて部屋に残されたクロエは溜息をつき、「デリカシーのない男性ね」と呟くのだった。
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