【R-18】やさしい手の記憶

臣桜

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熱に浮かされた体

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「ただいま……」
 ぐっしょりと濡れたマントは馬屋で脱ぎ、そのままフリッツは自分の部屋へと上がってきた。
 ギルベルトが心配した通り、雨に当たってまた少し風邪を引いてしまったらしく、帰り道から寒気がしている。
 部屋に控えていたクロエは、フリッツの赤い顔を見てびっくりしたように大きな目を見開き、慌てて駆け寄って来た。
「ああ、大丈夫」
 ドサリとベッドに倒れ込んだフリッツの目の前で、クロエが心配そうな顔で食事のジェスチャーをする。
「ん? 食事かい? ……あまり食欲はないんだが……」
 力のない笑顔を浮かべたフリッツに、クロエは怖い顔をして首を左右に振ってみせる。
「駄目かい? でもあまり食べたくない」
 子供のようにごねるフリッツを見てクロエは息をつき、着替えさせようとクローゼットから寝巻きを出し、それをベッドに置いてフリッツのシャツのボタンに手をかけた。
 目を閉じて熱い息を吐いているフリッツはクロエに身を任せ、やがて体温の上がった肌に遠慮がちにクロエの指が触れて、世話係の仕事を手伝おうとシャツから腕を抜く。
「……はぁ、君の指、少し冷たくて気持ちいいね」
 クロエの飴色の目がフリッツを心配そうに見下ろし、主人を着替えさせてからまた控えめに小さな手がフリッツの額に当たった。
(あれ……)
 熱に浮かされた意識の中、優しく触れてくれるこの手。
『あの時』は目を開けてもその目に映るのは黒い視界だったが、今は新しい世話係が飴色の目を心配そうにさせてこちらを見下ろしている。
 フリッツに布団をかけてから、クロエはすぐに盥に水を張って戻ってきた。
 固く絞られたタオルが額に乗せられ、フリッツはまた既視感を感じる。
 次の仕事をしようとベッドを離れようとしたクロエに、フリッツは思わず声をかけていた。
「クロエ、待って」
 その場を立ち去ろうとした気配が、ぴたりと止まる。
「手を出して俺の手を握って」
「……」
 クロエの反応がないので、フリッツは額に乗せられたタオルを少し手で除けて世話係の様子を盗み見し、チャーミングに笑ってみせた。
「大丈夫、変な真似はしないよ。ただ君の手は何だか安心するから、落ち着くまで手を握っていて欲しいんだ。ベッドに座って」
 美しい異国の娘は暫く躊躇ってから、一礼をしてフリッツのベッドに腰掛ける。
 そしてそっと小さな手がフリッツの手を握り、まるで母親のように優しくその手を撫でてくれた。
「あぁ、安心する……。ありがとう」
 吐息を漏らすフリッツにクロエは月のように優しく微笑み、ほっそりとした指をそっと唇に当てる。
「俺がいつも世話係にこういう事を求めていると思わないでくれ。君が特別なんだ」
 メイド長の話でフリッツが今までの世話係を、結果的に解雇してきた事を知っただろうクロエが、自分の事を女好きとか思ってしまう事を避けようとしたのだ。
 新しい主人が女好きだと思えば、クロエも気持ちよく仕事ができないと思っての事からの、フリッツなりの配慮だった。
 苦しそうに話しながら笑ってみせるフリッツに、クロエは「喋らないで下さい」と言うようにゆるりと首を振り、優しくフリッツの金髪を撫でてやる。
「君は彼女に似ているね」
 強い雨が窓を叩くなか、優しい手の記憶が蘇る。
「……笑わないで聴いてくれるか? もしくは俺の寝言だと思って聴いてくれてもいい」
 フリッツの声にクロエは何も言わず、優しい手が「いいですよ」と言っているような気がする。
「君によく似た女性がいるんだ……。いや、似ているというのも変な言い方だな。君の……気配が似ている。雨に溶けてしまいそうで、手が少し冷たいのも、優しいのも……」
 けれども、とフリッツは心の中で思う。
 アメリアはフース読みの名前だ。
 このクロエという娘は明らかに隣国ロシェ読みの名前で、目の色も髪の色もロシェそのものだ。
 フースの国民でもロシェ寄りの場所にいればそういう色の者はいるが、この娘の出自はどうなのだろう?
「……君は純粋のロシェ人? フースの言葉は本当に喋ることはできないの?」
「……」
 雷は遠くなり、それでも夜が近くなって暗くなった室内でクロエはゆっくりと首を振る。
「さるお方からの推薦って誰かな。俺の知っている人だろうか?」
 クロエに話しかけてもフースの言葉は話せないとわかっているのだが、それでもクロエにはなぜか話しかけてしまいたくなる魅力がある。
 世話係という立場もあるが、自分のやる事を受け入れてくれて、どんな言葉でも優しく受け止めてくれる、そんな雰囲気があった。
「明日にでも……君のことをハンナに聴いてみようかな」
 苦しいながらもうとうととし、そんな自分がやけに安らいでいる原因として、クロエからいい香りがしているからだという事に気付く。
「君、いい匂いがするね。……香料をつけている?」
 折角眠りの淵につこうとしていた意識がまたふわりと戻り、フリッツの目が薄く開かれた。
 クロエは相変わらず静かな微笑を湛えたままそこにいて、「いけません」というようにゆるりと首を振って優しい手が目蓋の上にそっと重なる。

 似ている。
 アメリアのあの森の中の清涼な香りに似た、心地いい匂いに似ている。

 試して、みようか。

 ふとそんな思いがフリッツの心の中で頭をもたげ、フリッツは熱い手で額の上のクロエの手を力なく握り、それを自分の熱くなった唇に触れさせてみた。
「……」
 フリッツの熱くなった吐息をかけられた手にびっくりし、クロエは目を見開いて主人を凝視している。
「……熱を出した男の戯言だと思ってくれていい……。もし君さえ嫌でなければ、……俺を満足させてくれないか? 性的に」
 我ながらなんて一方的なことを言っているのかと思う。
 王子という立場をふりかざし、今日が初日の世話係に性処理をしろと言っている。
 まるで暴君だ。
 それでもこれは色んな意味での『試し』でもあった。
 クロエが世話係としてどこまでしてくれるのかとか、
 本当にクロエの手は自分が想像している通りの快楽を与えてくれるのか、
 この手は自分を介護してくれた、あの優しい手なのか、という『試し』だ。

 暫く雨が窓を叩く音がしてフリッツはクロエの反応を待っていた。
 軽蔑をした目で見られるのか、
 ここでこのクロエという大人しい少女も、権力を持つ王子に求められて雌の顔を見せるのだろうか?

 やがてそっとクロエの手が動き、フリッツの頬の輪郭に触れるように手が下りて、フリッツの首筋から鎖骨をそっと撫でてゆく。
 彼女を見ると、変わらない穏やかな微笑を浮かべたまま、猫のように体をベッドに乗り上げてフリッツに跨ってきた。
 そこでフリッツはあの小屋でのシーンを思い出して、目を閉じる事にする。
 額に乗せられているタオルを目元までずらし、暗闇の中で彼女の肉体を求めた。
 少しひやりとした手が主人に着せたばかりの寝巻きをはだけさせ、フリッツは手の感覚だけでクロエの体のラインを探る。
 いつもどのメイドを見ても同じだと思っていたのに、衣装の下には一人一人の素顔がある。
 快楽一つでその人間の素顔が暴かれ、本性が分かるのだ。
 メイド服の構造を思い出し、エプロンの腰紐を引くとクロエが自らワンピースの背中のファスナーを下げるのが、音と気配でわかった。
 クロエがどんな姿をしているのかというのが気になるので、そっとタオルの下から覗き見ると、薄闇の中でクロエがワンピースの袖から腕を抜き、その下に着ている白いスリップから豊かな胸がこぼれるのを確認し、つい視覚的に興奮してしまった。
 タオルをまた元に戻して腕を伸ばすと、掌にたっぷりとした双丘を包む。
「ぁ……」
 クロエが微かに声を漏らし、甘い雌の声を耳にしたフリッツは、そこからは一匹の雄となってしまった。
 下からこねまわすようにたっぷりとした肉を練り上げ、円を描く。

 ――似ている。
 アメリアの胸のサイズもこんな大きさで、こんな柔らかさだった。
 掌に吸い付くような肌理の細かい肌も、硬くなった乳首の尖り方も。
 ――もっと。

 女を求めた男は自らの欲望のまま、柔らかい体を押し倒してスカートを跳ね上げ、その下にあるスリップも跳ね除ける。
 バサリと布が空気を含む音がし、豪奢なベッドの上には胸元と下半身を露出させたクロエが、不安そうな顔でじっとフリッツを見詰めていた。
「大丈夫、優しくする」
 内心、好色な王子と思われても仕方がないと思いながら、フリッツはクロエの白い下着を下げ、なだらかな腹部や魅力的な太腿を撫で回し始める。
「ぁ……、は、……ぁ」
 薄闇に甘い吐息が漏れ、熱でぼうっとしたフリッツの頭は、いよいよ目の前の新しい世話係を愛しい女と混同しつつあった。
『あの時』もこんな風にアメリアの表情や、肌の色を確認しながら体を重ねることができれば良かったのに。
「男に抱かれるのは初めて?」
 声を忍ばせて訊ねると、クロエは少しフリッツの目の奥を覗いたあとに、そっと指を三本立ててみせた。
「三人目?」
 内心、処女ではないのかとガッカリしつつそう訊ねると、クロエは少し不満そうな顔で首を振る。
「……じゃあ、三回目?」
 コクリ、とクロエが頷いた。
 それを見てフリッツはクロエに少し興味を持つ。
「どんな相手だったの? 恋人?」
 ゆるり、とクロエが首を振って曖昧な表情を浮かべてから、ほっそりとした指を立てて唇に当ててみせた。
「なんだ、秘密か」
 フリッツが笑うとクロエも少し笑い、頬を染めながらそっと脚を開く。
「……俺を受け入れてくれるのか?」
 その声にクロエはそっと頷き、それでもその目の奥にはハッキリとした雌の熱がある。
「だが、その……君を特別扱いするとかじゃないんだ。君を好きとかでもない。ただ、君の手が異様に気になって……」
 我ながら最低な事を言っているな、と思いつつも、こういう事はハッキリとさせておかないとならない。
 だが、クロエは変わらない穏やかな顔のままで、大きく一つ頷いてみせた。
「俺が君の体だけを求めていてもいいのか?」
 コクリ、とまた頷いてから、クロエはそっと手を伸ばしてフリッツの頬を両手で挟んだ。そして、優しく彼の顔を愛撫し、綺麗な色の金髪を撫でる。

 ――あぁ、本当に……。
 ――彼女の手みたいだ。

 その手にうっとりとしたフリッツは、雨が窓を叩くなか熱の勢いに押されて、新任の世話係の体を貪った。
 花芯にそっと触れると、ぴくっとクロエの体が震えて体が緊張を帯びる。
 これが人生で三度目の交わりなら、初めてと二回目はどんな男だったのだろう?
 そんな事を思いながらフリッツは世話係に、変態と思われても仕方のない注文をつけた。
「君の手が好きなんだ。している間、ずっと俺を撫でてくれないか?」
 頬を紅潮させたクロエが頷き、フリッツが求めていた手が優しく髪を撫でてくれる。
 ほっそりとした指が金髪を掻き分け、スルリと通ってゆくのに性的興奮すら覚えながら、フリッツはお返しと言わんばかりにクロエの秘部にそっと指を差し入れた。
 くちゅ……
 優しい愛撫で濡れていた秘部はすんなりと男の指を迎え入れ、柔らかい肉がぬるぬるとフリッツの指を締め付ける。
 体の緊張の仕方で、クロエが本当に男に慣れていないのが分かり、少しでも緊張を和らげようとフリッツは豊かな胸に手を掛けようとして、ふと胸元に小さな跡があるのに気付いた。
 丁度心臓の上あたりの場所に、まるで所有印のような跡がある。
「これは君の男につけられたの?」
 そこをそっと指先でなぞると、クロエがハッと体を起こそうとしてフリッツに押さえつけられた。
「君は……もしかして、……アメリア?」
 この場所は、二度目にアメリアを抱いた時に果てる際思い切り噛み付いた場所だ。
 一つそう思うきっかけがあると、次々に符号が合ってくる。
 王宮へ召し抱えられると言っていた事。
 肌から香る匂い。
 優しい手。
「アメリアだろう?」
 ここで彼女が頷いてくれれば、探していた女性を手にすることができる。
 手元において愛でて、何とか両親を説得して……。
 フリッツがそこまで考えていた時、組み敷いていたクロエは険しい顔で首を振った。
 違う、と。
「どうしてだ? この所有印は俺がつけたものだろう? 君の香りだって、この優しい手も、俺はこの体で覚えている」
 声を荒げてもクロエは首を縦に振らず、そっぽを向いてしまった。
 思い出した。
 この女がもしアメリアなら、彼女は相当強情な性格をしている。
 ――なら。
 スッと目を細めさせ、フリッツは再びクロエの胎内に指を差し入れて、アメリアが悦んだ場所を探り始めた。
「あっ……! ……ぁ」
 すぐにクロエが反応して甘い声を漏らし、膝頭が閉じてしまいそうになったのを、フリッツは空いた手で広げてしまう。
 この体があの時愛した体なら、彼女はフリッツという男一人しか知らない。
 クロエの柔らかい胸を掴み、そっと円を描くようにこね回す。
 右手は充血してさやから顔を出した真珠をそっと撫でてから、入り口付近を指の腹でそっと刺激した。
「っひ……、ぁ、――あぁっ」
 ビクンッとクロエの体が跳ね上がり、ピンクの唇が空気を求めて魚のようにパクパクと小さく喘ぐ。
「彼女はここを擦られるのが好きだったっけ」
 惚けてそう言うと、クロエが顔を真っ赤にしてこちらを睨んでくる。
 その表情にフリッツは手応えを感じていた。
「おや、君はアメリアじゃないんだろう? 俺が君を愛していなくても構わないと頷いた。俺が誰を思い出して君を抱こうが、君には関係ないじゃないか」
 笑いを押し殺して更に指の腹でクロエの胎内をトントン、と叩くと、クロエは苦しそうな声を漏らしながら体をねじらせる。
 そんな反応を見せるクロエに、フリッツは確信を深めつつも嗜虐的な気持ちをくすぐられ、このまま少し意地悪をしてやろうという気持ちになった。
「君は俺の世話係なんだろう? そんな風に主人を睨まないで、一時の恋人らしく甘えてくれてもいいんじゃないか?」
 くちゅくちゅと小さな音をさせながらフリッツが笑うと、今度はクロエが困ったような顔をする。
 快楽に加えてフリッツに主人としての命令をされ、ほとほと困りきった表情だ。
「ほら、彼女の代わりに啼いてくれ」
 く、とフリッツが中で指を曲げ、クロエが大きく息を吸い込んで悶えた。
「っっぁあああんっ」
 ここは当たりか、とフリッツがほくそ笑み、尚もそこを指先で撫で、刺激する。
「ぅあっ、やぁっ、あ、ぁあっ、ぁあんっ」
 じわじわと体を蝕む快楽にクロエが悶え、飴色の瞳を涙に潤ませてフリッツに許しを請う。
 だが、フリッツはその視線をわかっていながら、クロエを許そうとしなかった。
 彼女がアメリアだという確信はかなり高まっている。
 もしそうだとしたら、何の事情があって黙っているのか?
 自分は彼女の姿がわからなくても、彼女は自分の顔を覚えているはずだ。
 世話係になったからという理由や、こういう関係で再開する前に体の関係があったという事以外にも、もしかしたら理由があるのかもしれない。
「手はどうしたんだ? 俺を撫でてくれと言ったじゃないか」
「あ……、ぅ」
 言われて思い出したのか、クロエが弱々しく手を伸ばしてフリッツの金髪を探り、変わらない優しい手つきで撫でてくれる。
 そんな風にクロエを自由に操縦できる事に、フリッツは快感を覚えていた。
「いい子だ」
 まるで主人が愛玩動物を可愛がるような口ぶりでフリッツは鷹揚に頷き、ご褒美だといわんばかりにクロエに新しい快楽を与える。
 指先でクロエの胎内に小さな円を描くイメージをし、指を動かすと、またクロエが啼く。
「いやぁぁぁんっっ」
 開いた口から白い歯が見え、ピンクの舌と口蓋との間に透明な糸が引いた。
 それを何ともエロティックな気分で見、喉元をごくっと鳴らしてからフリッツはクロエに唇を重ねる。
「むっ、――ぅ、ぅぅぅんっ、むぅっ……」
 クロエが苦しそうに呻り、それでも手は主人に命じられた通りにフリッツの頭を撫で、もう片方の手は上質な筋肉に覆われた背中を撫でる。
 彼女がアメリアなら、あの時と同じくしっとりと汗ばんだ肌をフリッツは再び貪り、自分しか知らない場所を指で蹂躙した。
「むぅぅぅぅんっ、むーっ、ぅぅっ、ぅ、……っっ」
 女の一番弱い場所を巧みに刺激され、クロエがくぐもった声を上げながら達した。
 ちゅぴ……
 少し舌を出したフリッツがクロエの唇から顔を離し、二人の間に糸が引き、切れる。
 くたりと脱力してしまったクロエの脚を開き、フリッツは欲望にまみれた目で女を見下ろして、これ以上ないまで膨張したペニスを自分の手で数度しごく。
 クロエの白い腿を上げ、先端を宛がってからゆっくりと腰を進め――、入れた。
「っぁあ!」
 異物が侵入してくる感覚にクロエが声をあげ、まだ慣れていないその行為に綺麗な顔が不安に歪む。
「アメリア……」
 クロエを見てフリッツがそう囁き、腕の中の世話係は今にも泣き出しそうな表情で、今日からの主人を見上げている。
「酷い事をしないで下さい」と言わんばかりのその顔に、フリッツは憐憫にも似た笑みを浮かべ――腰を動かし始めた。
「ぅっ……、あ、ぁっ、あっ、あっ」
 体の一番奥にあるやわい部分を突かれてクロエが泣き出しそうな声で喘ぎ、必死になってフリッツにしがみつく。
 雨が窓を叩き、暗い部屋の中で若い男女の息遣いが絡み合い、女の嬌声が漏れる。
 二人の下腹で粘液質な音がして、じょりじょりと金色と黒が擦れた。
「君は……っ、アメリア、だろう?」
 尚もそう問うフリッツに、クロエは透明な涙を流して首を振る。
「嘘だ。この香りも、体の感触も、アメリアのものだ」
 断言し、クロエを責めるように腰を打ちつけるフリッツを、クロエは泣きながら押し退けようとする。
「うーっ、ぅ、……ぅあっ、ぅ、うーっ」
 ぐいぐいと両手でフリッツの肩を押し、それまでの従順な態度から一変、彼の体の下から逃げ出そうと試みる。
「駄目だよ。もう逃がさない」
 だが興奮しているフリッツはこの体をアメリアだと思い込み、いよいよ熱が上がって熱くなった頭がボウッとしているのを自覚しつつも、一心不乱に彼女の体を穿つ。
 クロエの髪は乱れ、シニヨンカバーはクシャクシャになって中から黒髪が出てしまっていた。
 悲しそうな、それとも感じているのか、何とも言えない表情でクロエが泣きながら喘ぎ、国中の女性から憧れられている王子を拒む。
 その態度がまた、フリッツを興奮させた。
 拒んでいる癖にクロエの肉はフリッツを飲み込み、締め付ける。
 男の跡を刻んだ胸元が大きく上下し、それと連動して白い肉と先端の桜色がふるふると揺れた。
 それを見て、フリッツは思う。
 女の体はふざけてる。
 こうやって拒む態度を取っていても、ペニスを包む淫靡な肉は誘い込むように、ヌルヌルと奥へ奥へと緩急をつけて飲み込もうとし、目にしただけで眼福と思える美しい体は、その柔らかさを見せ付けるようにして男を誘う。
 こんな艶姿を晒しておきながら、今更自分を拒もうなど正にふざけているとしか思えない。
「ぅああ、ぁーっ、やあぁっ、ぁっ、あぁっ……、ぁーっ」
 汗を浮かべたクロエが苦しそうに呻り、襲い来る快楽から逃れようと必死になって暴れ出す。
「わかってるよ。気持ちいいんだろ? そのままでいい……から」
 酷薄に笑ったフリッツがグッと腰を押し込むとクロエの体が跳ね、形のいい唇の端から透明な雫を垂らしながら、渾身の力でフリッツを抱き締めた。
「いきそうなのか?」
 不安に戦いたクロエがコクコクとうなずき、両腕と両脚とでフリッツにしがみつく。
「そのまま……っ、しがみついているんだ」
 息を荒くしたフリッツがいよいよ律動を激しくさせ、クロエが泣く。
「こわいっ……」
 果てる寸前にクロエが高く掠れた声を吐き、それがフースの言葉だとフリッツが理解した瞬間、彼も濡れそぼった蜜壷の中で欲望を吐き出した。

 堕ちてゆく意識の中、クロエは温かく優しいものに包まれて、自分が深い安堵を感じるのを自覚していた――。

 気を失ったクロエを隣に、彼女との繋がりを解いたフリッツは考え始める。
 このクロエというロシェの少女と、アメリアという謎の少女を繋げる確かな符号は何なのか。
 彼女をアメリアだと言うには、アメリアの外見がわからない。
 そして彼女自身の口から、自分はアメリアだという言葉を聴けていない。
 どうしたらこれが解決するのか……。
 溜息をついてそう言えば風邪を引きかけていることを思い出し、フリッツはクロエもろとも羽根布団のなかにしっかりとくるまってから、アメリアの捜索を続けながらこのクロエという少女についても注意しておこうと思い、だるくなってボウッとした意識を手放した。
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