【R-18】やさしい手の記憶

臣桜

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養生

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 そのようにしてクロエがフリッツの世話係を任されるようになっての初日が過ぎ、やはり熱を出して寝込んでしまったフリッツは、見舞いに来たギルベルトの軽口に笑いながら、医師の診断に従って食事や薬、体を拭いたりなどのクロエの世話を受けていた。
 同じだと思えば、状況はあの小屋での生活と同じだ。
 自分は健康ではない状態で、側にしっとりとした森の香りをさせる彼女がいて。
 優しい手が額のタオルを取り替えてくれたり、お湯で濡らしたタオルで体を拭いてくれたりする度、ふわりとクロエの香りと記憶のなかのアメリアの香りが重なり、フリッツを混乱させる。
「なぁ、君は本当にアメリアなんじゃないのか?」
 ベッドの中からそう問い掛けても、クロエは月のようにひっそりと微笑んで静かに首を振るだけだった。
 そんな中もアレクサンドラの猛攻は収まらず、クロエは必死になって一人で彼女に立ち向かわなくてはならない。
「わたくしはフリッツ様が心配なの。あら、わたくしの言葉が分かるのかしら?」
 プンプンと香水の匂いをさせたアレクサンドラが柳眉を逆立て、ドレスの胸元でこれ見よがしに盛り上がったデコルテが、クロエをグイグイと押す。
 しかしクロエも負けていない。
 整った顔で怖い顔をし、首を振りながらアレクサンドラを押し返す。
 病床の主人に、この婦人の強烈過ぎる匂いとキャラは毒だと、クロエなりにも思う所があるのだろう。
 そんな押し問答があるうちに、フリッツもクロエに迷惑をかけてはいけないと、養生する事を第一に数日を過ごし、やっと五日後あたりには元気を取り戻していた。
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