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ケアンズ観光 編
部屋での戯れ
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「無事にホテルに着きましたけど、どうします?」
「涼たち、荷物を置いたらこっちに来るって言ったから、もう少し待って相談するか。腹減ってるか?」
「んー、食べなくても大丈夫なんですが、お昼ですし現地飯行きたい気持ちもありますね」
「よし、分かった」
「いきなりワニじゃなくても大丈夫ですからね? お肉じゃなくても、他の何かで軽いジャブを……」
シュッシュッとパンチを打つ真似をすると、尊さんはクックック……と笑う。
「肉戦士だもんな。気遣わなくても、十分満足できるプランを練っておくよ。レストランに入っても、色んなメニューがある訳だし。一生に一度しか来られない訳じゃないけど、そう頻繁には来ないから、後悔しないように食っておけよ」
「ありがとうございます!」
お礼を言った私は、とりあえずスーツケースを開けて、洗面道具などを出しておく事にした。
**
「わ……」
スイートルームに入った途端、私――中村恵はポカンと口を開けて、室内を見回す。
角部屋のスイートは川に面していて、とても景色がいい。
「川の向こうは建物がないから、夜になってもカーテン全開で大丈夫だよ。夜景……とはいかないけど、別の綺麗さがあると思う」
「……ありがとうございます」
私はペコリと涼さんにお辞儀をしたあと、彼がスタッフから英語で説明を受けているのを見守る。
スタッフが去ったあと、私たちはスーツケースをベッドルームまで引きずっていった。
(……当然のようにキングサイズベッド)
ツインの慈悲はないのか、と思ったけれど、彼と行動を共にするようになってから、スイートルームにあるのは大体キングサイズベッドだと理解してきた。
「恵ちゃん」
「はい?」
呼ばれて振り向くと、涼さんが満面の笑みで両腕を広げている。
(……これは……、ハグを求められているのか)
理解しても、笑顔で「キャピピピ」と奇声を上げて抱きつくなどできない。
(嫌ではない。……でも、可愛い反応ができない)
悩みながらも、私はいぶかしげな表情をし、両腕を広げるとソロリソロリと近づき、彼の胸板に頬をつける代わりに、ゴッと頭突きをして抱きついた。
「はははははは! 本当に恵ちゃんって、懐かない猫みたいだよね。可愛い~!」
我ながら可愛くない反応をしてしまったけれど、涼さんは大喜びだ。
彼は「ん~」と私の頭に頬ずりをすると、ヒョッと抱き上げてベッドに座った。
「ちょちょちょちょちょまままままままま」
焦ってストップをかけると、彼は笑いだす。
「どうしたの!? バグった!? 可愛い~!」
「む、向こうの部屋に行くんですよね? 時間が……」
「ちょっとぐらい大丈夫だよ。向こうの二人も荷物を整えてると思うし。はい、ギュー」
ベッドに仰向けになった涼さんは、私を抱き締めてくる。
「……ぎゅ、……ぎゅう」
私は困惑と照れの混じった表情で、涼さんの腰を跨ぎ抱きついた。
「……あー……、恵ちゃん抱き締めてると安心する。守りたいものが腕の中にあるっていいね」
「はぁ……。……私も大木に止まったセミみたいな安心感があります」
「ぶっふぉ!」
涼さんはとっさに横を向き、腕で口元を押さえて噴き出す。
「恵ちゃんがセミになったら可愛い……! いつまでも大木でいたい」
「夏の終わりになったら、セミファイナルかましますね」
「嫌だ! 死なないで! コールドスリープを……」
「怖いですって」
「恵ちゃんが死ぬなんて、セミでも考えたくない……」
涼さんがメソメソと乙女になったので、私は上体を起こすと彼に床ドンした。
……いや、ベッドだからベドドンか?
「泣くな、涼子」
彼の顎をクイッとしてふざけると、涼さんは目を潤ませて胸の前で手を組んだ。
「……トゥンク……」
「いや! 駄目だ! 一瞬脳裏にバカ兄ーズがよぎった! 今のなし!」
私はパタパタと顔の前で手を振り、涼さんの腰の上から降りる。
「せっかくいい雰囲気だったのに~」
「涼さんも、ノリが良すぎるんですよ。せっかくイケメン御曹司なんだから、素材を生かさないと。今のあなたは生食用の海老が、誤ってエビチリになった状態です!」
「え~、エビチリ美味しいよ……」
「……何言ってるんだ私たちは……」
ガクリと項垂れた私は、ベッドから下りて荷物の整理を始めた。
「涼たち、荷物を置いたらこっちに来るって言ったから、もう少し待って相談するか。腹減ってるか?」
「んー、食べなくても大丈夫なんですが、お昼ですし現地飯行きたい気持ちもありますね」
「よし、分かった」
「いきなりワニじゃなくても大丈夫ですからね? お肉じゃなくても、他の何かで軽いジャブを……」
シュッシュッとパンチを打つ真似をすると、尊さんはクックック……と笑う。
「肉戦士だもんな。気遣わなくても、十分満足できるプランを練っておくよ。レストランに入っても、色んなメニューがある訳だし。一生に一度しか来られない訳じゃないけど、そう頻繁には来ないから、後悔しないように食っておけよ」
「ありがとうございます!」
お礼を言った私は、とりあえずスーツケースを開けて、洗面道具などを出しておく事にした。
**
「わ……」
スイートルームに入った途端、私――中村恵はポカンと口を開けて、室内を見回す。
角部屋のスイートは川に面していて、とても景色がいい。
「川の向こうは建物がないから、夜になってもカーテン全開で大丈夫だよ。夜景……とはいかないけど、別の綺麗さがあると思う」
「……ありがとうございます」
私はペコリと涼さんにお辞儀をしたあと、彼がスタッフから英語で説明を受けているのを見守る。
スタッフが去ったあと、私たちはスーツケースをベッドルームまで引きずっていった。
(……当然のようにキングサイズベッド)
ツインの慈悲はないのか、と思ったけれど、彼と行動を共にするようになってから、スイートルームにあるのは大体キングサイズベッドだと理解してきた。
「恵ちゃん」
「はい?」
呼ばれて振り向くと、涼さんが満面の笑みで両腕を広げている。
(……これは……、ハグを求められているのか)
理解しても、笑顔で「キャピピピ」と奇声を上げて抱きつくなどできない。
(嫌ではない。……でも、可愛い反応ができない)
悩みながらも、私はいぶかしげな表情をし、両腕を広げるとソロリソロリと近づき、彼の胸板に頬をつける代わりに、ゴッと頭突きをして抱きついた。
「はははははは! 本当に恵ちゃんって、懐かない猫みたいだよね。可愛い~!」
我ながら可愛くない反応をしてしまったけれど、涼さんは大喜びだ。
彼は「ん~」と私の頭に頬ずりをすると、ヒョッと抱き上げてベッドに座った。
「ちょちょちょちょちょまままままままま」
焦ってストップをかけると、彼は笑いだす。
「どうしたの!? バグった!? 可愛い~!」
「む、向こうの部屋に行くんですよね? 時間が……」
「ちょっとぐらい大丈夫だよ。向こうの二人も荷物を整えてると思うし。はい、ギュー」
ベッドに仰向けになった涼さんは、私を抱き締めてくる。
「……ぎゅ、……ぎゅう」
私は困惑と照れの混じった表情で、涼さんの腰を跨ぎ抱きついた。
「……あー……、恵ちゃん抱き締めてると安心する。守りたいものが腕の中にあるっていいね」
「はぁ……。……私も大木に止まったセミみたいな安心感があります」
「ぶっふぉ!」
涼さんはとっさに横を向き、腕で口元を押さえて噴き出す。
「恵ちゃんがセミになったら可愛い……! いつまでも大木でいたい」
「夏の終わりになったら、セミファイナルかましますね」
「嫌だ! 死なないで! コールドスリープを……」
「怖いですって」
「恵ちゃんが死ぬなんて、セミでも考えたくない……」
涼さんがメソメソと乙女になったので、私は上体を起こすと彼に床ドンした。
……いや、ベッドだからベドドンか?
「泣くな、涼子」
彼の顎をクイッとしてふざけると、涼さんは目を潤ませて胸の前で手を組んだ。
「……トゥンク……」
「いや! 駄目だ! 一瞬脳裏にバカ兄ーズがよぎった! 今のなし!」
私はパタパタと顔の前で手を振り、涼さんの腰の上から降りる。
「せっかくいい雰囲気だったのに~」
「涼さんも、ノリが良すぎるんですよ。せっかくイケメン御曹司なんだから、素材を生かさないと。今のあなたは生食用の海老が、誤ってエビチリになった状態です!」
「え~、エビチリ美味しいよ……」
「……何言ってるんだ私たちは……」
ガクリと項垂れた私は、ベッドから下りて荷物の整理を始めた。
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