【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
794 / 812
ケアンズ観光2日目 編

ユリシスとクレープ

しおりを挟む
「恵ちゃんの女教師コス、想像したら燃える~!」

「ゾワッとするからやめてください」

「どんどん言葉を選ばなくなったね? でも燃える!」

 こんなに塩対応する女性は初めてだからか、涼さんも新しい性癖をこじ開けられているんじゃないだろうか。

 冷たくされるほど、喜んでいるように思える。

 チラッと尊さんを見ると、親友の新たな一面を見て気の毒そうな顔をしていた。





 そんな感じでワチャワチャ話しているとあっという間で、私たちは最初の駅レッドピークで降りた。

 降りた先は熱帯雨林に囲まれた木道があり、大きな木の横には解説の看板があり、二人に訳してもらった。

 この地点でまだ2.7キロで、キュランダまではさらにロープウェーに乗って4.8キロあるらしい。

 また景色を見ながらたわいのない話をしていた時――。

「尊さん、あれ見て!」

 私は鬱蒼とした森の中に、チラチラとする鮮やかな青を見つけて指さす。

「あー、よく見つけたね、朱里ちゃん。あれはユリシスだよ」

「ユリシス?」

 首を傾げると、尊さんが教えてくれる。

「日本名はオオルリアゲハ。こっちではユリシスと呼ばれる蝶だ。一回見ると幸せになる、体に留まったらさらに幸運に、三回見たら金持ちになるらしい」

「えっ? マジですか!? あと二匹見つけないと!」

 そのあと、恵と二人で窓の外に釘付けになりながら会話を進めていると、眼下に川が見えてきた。

 ――と思ったら、なんだか物凄い規模の滝がある。

「すごーい!」

 滝の種類としては段瀑なのだろうか。

 山の上のほうにある、剥き出しの荒々しい岩肌に沿って幾筋もの滝が流れていて、とても迫力がある。

「すっごいなぁ……」

 恵も口をポカンと開けて感動している。

「恵ちゃんのその可愛い顔を見られただけで、俺はユリシス百匹分ぐらい幸せだよ」

「ケアンズ来ないと分からないネタっすね」

 そうこうしているうちに、バロン・フォールズ駅に下り、滝を間近で見られるとの事なので、ずんずん進んで行く。

 遊歩道の一部や展望スポットには、床がガラスになっている部分があって、大丈夫と分かっていても脚がガクガクしてしまう。

 展望スポットと言っても、バロン滝から十分な距離があるけれど、ドウドウとした轟音や飛沫を上げる水の流れは物凄い迫力がある。

「よく分からないけど、マイナスイオン浴びておこう」

 私が両手をパタパタさせると、恵も真似をする。

 近くにいた観光客にお願いし、四人で記念撮影、そのあとはペアで撮影したあと、またロープウェーに乗って、十分もせずキュランダ駅に着いた。





「おお~、賑やか!」

 キュランダは山の上にあると思えないほど、お店が連なっている。

 山の上はバロン滝に通じる、広くて大きなバロン川が蛇行して流れていて、それに沿うようにキュランダがある。

 住んでいる人もいて、三千人ぐらいはいるそうだ。

「クレープ屋さんあるけど、ランチする?」

「はい!」

 涼さんに言われ、私はいい返事をする。

 恵は「また食べ物につられて……」という顔をしているけれど、彼女もクレープが好きなのは知っている……。

 メインストリートを歩いていくと、当たり前のものなのに海外補正で格好良く見える道路標識がある。

『不思議の国のアリス』に出てきそうな標識は、ヒョロッとしたポールに横長で先端が尖った看板が幾つもついている。

 それも、フォントが手描きっぽく見えるので、余計に雰囲気がある。

 現地の人にとっては、道路標識の前で写真を撮るなんておかしいかもしれないけれど、私は恵と並んで、両手であちこちを指さすポーズをとって記念撮影してもらった。

 赤い屋根のお店は背の高いヤシの木に囲まれていて、左右二箇所から入り口がある。

 私たちは右手にある赤い看板側から、階段を下りて店内に入った。

 店内にはカラフルなクレープの写真が載ったメニューが壁に貼られ、壁際にはロートレックを思わせるベージュを主体にしたポスターが幾つもあった。

 ペパーミントグリーンのカウンターの奥では、髭を生やした店員さんが忙しくクレープを焼いていた。

「凄いね」

 周りのテーブルを見た恵は、コソッと囁いてくる。

 確かに、私たちの知るクレープではない。

 クルッと巻いて手持ちで食べるなんてとんでもない、大きなプレートの上に申し訳程度に二辺の隅を折られたクレープが広がり、その上にゴロゴロと新鮮な野菜やモッツァレラチーズ、玉子などが載っている。

 まさにフォークとナイフで食べるクレープだ。

 クレープメニューは沢山あり、ざっくりと具はピザみたいなものだ。

 でも、勿論甘いクレープメニューもある。

「尊さん……」

「皆まで言うな。両方喰え」

「アイアイサー!」

 返事をした私は、まず三種類のスモークハムと玉子、チーズのクレープを食べ、そのあとにレモンとお砂糖のシンプルなクレープを食べる事にした。

「本場のパリでも、しょっぱいのを食べてから甘いのを食べて、お供にはシードルってお作法があるからね」

「ホントですか? 素敵なお作法!」

 涼さんの言葉に目を輝かせると、恵が「真に受けないの」と突っ込む。

「いつかパリでも本場のクレープ食べたいな」

 そう言いつつメニューを捲り、飲み物はレモネードにした。

 こちらは何を頼んでもサイズが大きいので嬉しい。

 話しながら待っていると、お待ちかねのしょっぱいクレープがやってきた。

「いただきまーす!」
しおりを挟む
感想 2,618

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです

葉山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】 「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」 ★あらすじ★ 「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」 28歳の誕生日。 一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。 雨の降る路地裏。 ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。 「捨て猫以下だな」 そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。 そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。 「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」 利害の一致した契約関係。 条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。 ……のはずだったのに。 「髪、濡れたままだと風邪を引く」 「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」 同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。 美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。 天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。 しかし、ある雷雨の夜。 美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。 「……手を出さない約束? 撤回だ」 「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」 10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。 契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。 元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー! 【登場人物】 ◆相沢 美月(28) ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。 ◆一条 蓮(28) ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

処理中です...