【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
46 / 779
篠宮家 編

その覚悟はあるか?

しおりを挟む
「先に言っておく。俺は自分の望みを叶えるためなら、多少の犠牲はやむなしと思っている。お前達にその覚悟はあるか?」

 尊さんに尋ねられ、風磨さんとエミリさんは視線を交わす。

 二人は、テーブルの下で手を握り合ったようだった。

「勿論だ」

「風磨さんと結婚したいと決めた日から、何があろうと乗り越えるつもりでいます」

 二人の言葉を聞いても、尊さんはさらに尋ねる。

「母親のどんな姿を見ても? 絶望的な真実を知っても? 最悪、あの家から怜香さんがいなくなっても?」

 尊さんの真剣な横顔を見て、私は彼が抱えている〝爆弾〟の大きさを察した。

「あの女は改心するタマじゃない。意見を言えなくなるぐらい叩きのめすしかない。『そこまでしなくても』と思うかもしれないが、『やめてほしい』と言ってやめる女なら、今こんな話をしていない。それに、あの女をつけ上がらせた父と俺たち兄弟が、責任持って始末をつけないといけない事情がある」

 余程の事をするつもりだと理解したのか、風磨さんは表情を引き締めて頷いた。

「構わない。この年齢になってまだ結婚できず、母親の陰に怯えているのはおかしい。僕は大人の男で、自分の妻ぐらい自分で決められる。政略結婚をしなくても、今後の篠宮フーズの業績を上げていく実力もあるつもりだ。それに、父が母に負い目を持つのは分かるが、僕は能力のある尊がいつまでも部長職にいる事を、ずっと不満に思っていた」

 ……良かった。

 風磨さんの本音を聞いて、私は心底安心した。

 家族の中に絶対的な味方がいたじゃない。

 今までは男兄弟だし、あまり本音を言い合えなかったかもしれない。

 でもお互い同じ目的のためなら、こんなにも協力し合える。

「じゃあ、三ノ宮さんに先に連絡をしておく必要がある。多少なりとも巻き込んでしまうから、根回しはしておかないと」

 あ、やっぱりお見合いクラッシャーの戦法でいくんですね。

「分かった。……ところで、尊が抱えているネタは今言えない事か?」

 風磨さんの質問を聞き、尊さんは首を横に振った。

「兄貴は人がいいから絶対動揺する。だから今は言わない。爆弾を落として悪役になるのは、俺だけでいい」

「っそういうの……っ!」

 私はカッとなって、とっさに尊さんのジャケットを掴んだ。

 けれど彼はいつもの穏やかな顔で私を見つめ、その手を優しく振りほどいた。

「俺自身が決着をつけないといけない事なんだ。過去に清算をつけて、お前と歩んでいくためには、絶対に必要な事だ。……だから、やる」

「やらせてくれ」じゃなくて、「やる」。

 その言葉一つで、彼の決意の深さを知った。

 私は胸の奥にしまっている尊さんの姿を思いだし――、コクンと頷いた。

 この人が解き放たれるなら、もっと自由に生きられるなら、側できちんと見届けよう。

「じゃあ、兄貴、三ノ宮さんに『話がしたい』って連絡してくれ。日付は一月六日土曜日、時間は……そうだな、十四時にパークウェルティーズ東京のラウンジカフェで」

「……やけに具体的ですね?」

 私が尋ねると、尊さんはニヤリと笑った。

「時限爆弾なんだ」

「……相当な威力があるのは、何となく想像します」

「見届けるためにお前にも来てもらうけど、被弾はさせないよ」

「ありがとうございます。盾にします」

「……お前、塩対応になるにはまだ早いぞ。エミリを見習うな」

 尊さんは私の顎をキュッと掴み、不満げに目を細める。

 その様子を、風磨さんがニコニコして見ていた。

「尊に好きな人ができて本当に良かったよ。朱里さんはいい人っぽいし、これからお付き合いできるのが楽しみだな」

 風磨さんの言葉を聞いて、尊さんが「は?」とでも言いたそうな顔をしたからか、彼は慌てて言い直す。

「いや、家族ぐるみというか、グループデート?」

「学生じゃないんだから、勘弁してくれ」

 意外と可愛い兄弟のやり取りを見て、私とエミリさんはクスクス笑った。



**



 それから問題の一月六日になるまでは、師走という事でめちゃくちゃ忙しく過ごした。

 けど、週末にあるクリスマスには尊さんとデートできた。

 彼が前に言っていたように、昭人とした事を〝上位互換の上書き〟をする内容だ。

 昭人はお洒落なレストランや、ちょっといいホテルに連れて行ってくれた。

 でも尊さんが選んだ場所はどこもワンランク上だった。

 ほっぺが落ちるような美味しい料理を食べ、美味しいワインを遠慮なく飲ませてもらった。
しおりを挟む
感想 2,457

あなたにおすすめの小説

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

完結 愛人さん初めまして!では元夫と出て行ってください。

音爽(ネソウ)
恋愛
金に女にだらしない男。終いには手を出す始末。 見た目と口八丁にだまされたマリエラは徐々に心を病んでいく。 だが、それではいけないと奮闘するのだが……

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...