【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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確かめ合う気持ち 編

側にいますし、支えます

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「怜香さんが舞台から去った今、私たちの結婚に反対する人はいなくなったと思います。……でもそれだけじゃ済みませんよね」

 気になっていた事を言うと、彼は真剣な表情で重々しく頷く。

「ああ、あいつがやらかした事がニュースになれば、篠宮フーズの株価は大暴落、バッシングされるだろう。母が社長の不倫相手と知られれば、父が叩かれるのは勿論、俺が婚外子である事も明るみになり、渦中の人となる」

 これから訪れる事を予想し、私はギュッと尊さんの手を握った。

「側にいますし、支えます」

「……これから父や兄貴、役員たちが火消しに奔走するだろう。騒ぎが収まるまでは静かにしていたほうがいい。結婚式を挙げるまでは時間が掛かるし、式場や招待客などもまだ決まってない。会社ではしばらく今まで通り上司と部下を通して、ほとぼりが冷めた頃に式を挙げよう。何もこっちから周りを刺激する必要はないから」

「はい」

 亘さんは特に大変な思いをするだろうけど、彼がすべての元凶でもあるんだから、しっかり責任を取ってほしい。

「……尊さんは大丈夫ですか?」

「ん?」

 彼は優しい顔で尋ねてくる。

「今まで〝速水部長〟として過ごしてきたのに、実は社長の息子とか、社長夫人にお母さんと妹さんを殺されたとか……、噂の的になるでしょう」

「んー、ストレス耐性は強いからな。まったくダメージを負わない訳じゃないけど、俺には朱里がいる。それに糾弾されるべき〝悪〟は俺じゃないしな。むしろ、うまく立ち回れば俺は被害者の側で済むと思うけど」

 そこまで言って、尊さんはニヤリと笑う。

「下手すれば、親父は辞任だな。後釜には風磨がつくかもしれねぇし、若すぎるって声が出たなら他の役員が社長になるだろう。不祥事があっても篠宮フーズはでけぇ会社だから、倒産の危機はない。今後の方針は上層部……、祖父さんたちの話し合い次第だな」

「お祖父さんって……、名誉会長?」

 尋ねると、尊さんは鼻で笑う。

「そ、定年のない妖怪。死ぬまで会社から金をもらってるから、そりゃあ優雅なもんだよ。それも年収何千万の世界だ」

「ひえ……」

 まさか定年がなく、そんなに大金をもらっている人がいると思わず、私は目を見開く。

「ひでー世界だろ? 妖怪は親父なんかよりずっと権力を持ってるからな。そいつらから見れば、親父なんてただの駒だ。あいつが辞任しても会社は困らないし、火消しができるなら喜んで辞任させるだろ。それで子会社かどこかに新しいポストを用意するんだよ」

「うわぁ……。天上人の闇……」

 私のような平社員には分からない世界なので、ドン引きだ。

 その時、部屋のチャイムが鳴った。

「お、ようやく来たか」

 バスローブ姿の尊さんはソファから立ちあがり、出入り口に向かう。

 そして服を持ってきたコンシェルジュさんと会話をしてから、紙袋を手にして戻ってきた。

「お前も着替えろよ。レストランの席を用意してくれるって言ってたから、気分転換に飯を楽しもうぜ」

「はい」

 尊さんは気を遣ってくれてベッドルームで着替えるらしく、私はちょっと迷ってから洗面所で着替える事にした。

 服を汚したと言われてもほんのちょっとで、濡れタオルでちょんちょん拭けば大丈夫な程度だ。

(でも気にしてるんだろうな。あそこまで弱った姿を見せてしまった訳だし)

 ボロボロに傷付いて泣いて、嘔吐した彼を思いだすと胸の奥がギュッとなる。

 紙袋に入っていたのは、百貨店に入っている系のブランド服だった。

 値札は当然取られているけれど、トップス、ボトムスそれぞれ万は超える……と思う。

(いやいや、贈られた物の値段を考えたら失礼だ!)

 私はピシャッと両手で頬を叩き、着ていた服を脱いで着替え始める。

 替える必要がないのに、ストッキングまでお高級そうな新品が入っていた。

 彼がコンシェルジュさんに伝えて買ってきてもらったのは、黒いハイネックの縦リブニットで、バルーンスリーブの手首がやや長めに絞ってある。それに合わせるボトムスは、ハイウエストで白と黒の千鳥格子柄のマーメイドスカートだ。

 ……うん、いや、こういう服好きだけど、さっき感情が乱れていた中で、よくここまで私にマッチした服を頼めたな……。さすがだ。しかもサイズピッタリじゃん。

(ニットは伸びるから、胸元気にしなくていいんだよな。ボトムはそれほど苦労しないんだけど)

 スカートのウエストファスナーを上げながら思い、せっかく洗面所にいるのでうがいをした。

(ちょっとファンデよれてるかな。少しメイク直しするか)

 もと着ていた服は紙袋に入れ、私はリビングダイニングに戻る。

「お待たせです。私、ちょっと化粧直し……、…………あぁ……」

 私は着替えた尊さんの姿を見て、感嘆の溜め息をついてしまう。
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