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恵 編
そっか、そういう感じか
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「肝心の朱里とは話がついたし、今さら篠宮さんとどう話そうが、別に気まずくも何ともないわ。むしろもうコソコソしなくていいんだと思うと、一気に楽になった」
「あはは! さすが恵だな。引きずらないところ、好きだわ」
思わず笑うと、恵は「でしょ」と言ってニヤッと笑った。
尊さんからのメッセージはこうだった。
【大丈夫か?】
たったそれだけだけど、彼が心配してくれているのが分かる。
私の知らないところで、恵と繋がっていた後ろめたさがあるんだろう。
彼の事だから『中村さんには落ち度はない。俺が望んだ』と庇うと思う。でも恵は恵で、罪悪感があるんだ。
(やっぱり当事者の三人で顔を合わせて、ちゃんと話したほうがいいんだろうな)
そう思った私は、彼にメッセージを打った。
【大丈夫です。でも、一回三人で話しませんか?】
送信したあと、すぐに返事がきた。
【そうする。どこの店にいる?】
【ここです。会社から歩いてすぐですよ。席空けておきますね】
私はお店の公式サイトをブラウザで開くと、URLを送る。
【まだ会社にいるから、すぐ行く】
私は彼の返事を見たあと、微笑んで『待ってます!』のスタンプを送った。
「すぐ来るって」
「そっか」
恵はジェノベーゼを私の取り皿に盛ってくれていた。
「ありがと」
「まあ、勿論、篠宮さんに奢らせるけどね」
ケロッとして言うので、思わず笑ってしまう。
「おぬしも悪よのぉ~」
「今まで篠宮さんには色々奢ってもらったわ~。向こうにも罪悪感があるって分かってるから、こっちも遠慮なく食べたし」
悪びれもなく言う恵は、もうさっきの事を引きずっていないみたいで安心した。
(……こう思ってしまうの、ずるいかもしれないけど)
少し考えていた時、恵が話題を振ってくる。
「篠宮さんとは、どういうデートしてるの?」
「んー、そういえば、まだデートらしいデートはしてないかな。十二月頭からの今で、バタバタしてて……。食事に行ったりホテルにお泊まりはしてたけど、遊園地とか水族館とかは行ってないし、東京からも出てないかも」
「駄目でしょそれ~。何やってんだあいつ」
恵は渋面になり、「篠宮~、アウト~」とテレビ番組の物真似をする。
「あはは!」
恵は笑った私を見て微笑んだあと、テーブルに両肘をつけて少し前屈みになる。
「あの激重感情の篠宮さんが、朱里を雑に扱うなんてないと思うけど、何かちょっとでも悲しい事があったら私に言いなよ? 『悪い』とかは考えなくていいから。親友として相談に乗らせて。朱里が知らない時期の篠宮さんと会っていた分、彼について何か言えるかもしれないし」
「うん、ありがとう」
そのあと、私たちはデートに良さそうな場所について話した。
私は昭人としか付き合った事がないし、恵はそもそも男性に興味がなく〝デート〟はしていない。
でも二人で魅力的だと思うスポットや、行ってみたい温泉、観光地、都道府県などについて話すと、楽しくなって尊さんが来たのにも気づかないほどだった。
「お疲れ」
二人でスマホを覗き込んでキャッキャしていた時に、上から声が降ってくる。
「あっ、尊さん」
会社近くの店でも、こうやって無防備に彼の名前を呼べるのは、時々お手洗いに立ちつつ店内に会社の人がいないかチェックしているからだ。
他の部署の人の顔までは分からないけれど、少なくとも近くの席の人は会話の内容などから大丈夫……と思いたい。
本当はもっと遠い店にしたほうが良かったかもしれないけど、先に恵と二人で……という事だったから、致し方ない。
「こっちにどうぞ」
私は自分の席の隣を示す。
彼が来ると聞いていたから、荷物はすでに除けてあった。
「サンキュ」
「篠宮さん、ドリンクメニューどうぞ」
恵に「部長」ではなく「篠宮さん」と呼ばれ、彼はメニューを受け取りつつ軽く瞠目する。
「……そっか。そういう感じか」
そして、納得がいったように小さく笑った。
「あはは! さすが恵だな。引きずらないところ、好きだわ」
思わず笑うと、恵は「でしょ」と言ってニヤッと笑った。
尊さんからのメッセージはこうだった。
【大丈夫か?】
たったそれだけだけど、彼が心配してくれているのが分かる。
私の知らないところで、恵と繋がっていた後ろめたさがあるんだろう。
彼の事だから『中村さんには落ち度はない。俺が望んだ』と庇うと思う。でも恵は恵で、罪悪感があるんだ。
(やっぱり当事者の三人で顔を合わせて、ちゃんと話したほうがいいんだろうな)
そう思った私は、彼にメッセージを打った。
【大丈夫です。でも、一回三人で話しませんか?】
送信したあと、すぐに返事がきた。
【そうする。どこの店にいる?】
【ここです。会社から歩いてすぐですよ。席空けておきますね】
私はお店の公式サイトをブラウザで開くと、URLを送る。
【まだ会社にいるから、すぐ行く】
私は彼の返事を見たあと、微笑んで『待ってます!』のスタンプを送った。
「すぐ来るって」
「そっか」
恵はジェノベーゼを私の取り皿に盛ってくれていた。
「ありがと」
「まあ、勿論、篠宮さんに奢らせるけどね」
ケロッとして言うので、思わず笑ってしまう。
「おぬしも悪よのぉ~」
「今まで篠宮さんには色々奢ってもらったわ~。向こうにも罪悪感があるって分かってるから、こっちも遠慮なく食べたし」
悪びれもなく言う恵は、もうさっきの事を引きずっていないみたいで安心した。
(……こう思ってしまうの、ずるいかもしれないけど)
少し考えていた時、恵が話題を振ってくる。
「篠宮さんとは、どういうデートしてるの?」
「んー、そういえば、まだデートらしいデートはしてないかな。十二月頭からの今で、バタバタしてて……。食事に行ったりホテルにお泊まりはしてたけど、遊園地とか水族館とかは行ってないし、東京からも出てないかも」
「駄目でしょそれ~。何やってんだあいつ」
恵は渋面になり、「篠宮~、アウト~」とテレビ番組の物真似をする。
「あはは!」
恵は笑った私を見て微笑んだあと、テーブルに両肘をつけて少し前屈みになる。
「あの激重感情の篠宮さんが、朱里を雑に扱うなんてないと思うけど、何かちょっとでも悲しい事があったら私に言いなよ? 『悪い』とかは考えなくていいから。親友として相談に乗らせて。朱里が知らない時期の篠宮さんと会っていた分、彼について何か言えるかもしれないし」
「うん、ありがとう」
そのあと、私たちはデートに良さそうな場所について話した。
私は昭人としか付き合った事がないし、恵はそもそも男性に興味がなく〝デート〟はしていない。
でも二人で魅力的だと思うスポットや、行ってみたい温泉、観光地、都道府県などについて話すと、楽しくなって尊さんが来たのにも気づかないほどだった。
「お疲れ」
二人でスマホを覗き込んでキャッキャしていた時に、上から声が降ってくる。
「あっ、尊さん」
会社近くの店でも、こうやって無防備に彼の名前を呼べるのは、時々お手洗いに立ちつつ店内に会社の人がいないかチェックしているからだ。
他の部署の人の顔までは分からないけれど、少なくとも近くの席の人は会話の内容などから大丈夫……と思いたい。
本当はもっと遠い店にしたほうが良かったかもしれないけど、先に恵と二人で……という事だったから、致し方ない。
「こっちにどうぞ」
私は自分の席の隣を示す。
彼が来ると聞いていたから、荷物はすでに除けてあった。
「サンキュ」
「篠宮さん、ドリンクメニューどうぞ」
恵に「部長」ではなく「篠宮さん」と呼ばれ、彼はメニューを受け取りつつ軽く瞠目する。
「……そっか。そういう感じか」
そして、納得がいったように小さく笑った。
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