【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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恵 編

基本的に他人に興味ねぇし

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「俺、とりあえずビール飲んどくわ」

 尊さんはチラッとドリンクメニューを見てから即決し、店員に注文する。

「篠宮さん、食べたい物があったら自分で注文してくださいね。あと、私たちは割り勘のつもりで控えめに注文してましたが、篠宮さんの奢りという事で遠慮なく食べます」

 恵の図々しいとも言える言葉を聞いても、尊さんは「ははっ」と笑うだけだった。

「どうぞ遠慮せず食ってくれ」

 そのあと三人で食べたい物を注文したあと、再度三人で「お疲れ様」と乾杯した。

「……で、二人の話は解決したのか?」

 尊さんが切り出し、私はコクンと頷く。

「二十代の篠宮さんが、どんだけ病んで朱里を気にしてたかは話してませんけど、お互い知ってる事を話して状況を把握しました」

 恵の言葉を聞き、尊さんはじっとりとした目で彼女を見る。

「中村さん、君ね……。割と……、言うね……」

「あはは! もう開き直りましたから」

 恵はケロッと明るく言い、手をヒラヒラと振る。

 その様子を見て、尊さんは微笑みながら溜め息をついた。

「……まぁ、良かったよ。俺のやってた事は非常識だったし、中村さんを利用して二人の友情に亀裂が入ったらどうしようとか……、会社で悶々としてた」

 やっぱりそう思ってたか。

「大丈夫ですよ。流れ上、尊さんが責任を感じるのは仕方ないですけど、私たち二十六歳ですよ? 成熟しきった……とは言えませんけど、ちゃんと話し合える大人で、親友同士です」

 私が言うと、尊さんは頷いてからビールを飲んだ。

「女の友情は固いな」

「そうですよ。篠宮さんが首を突っ込む前からの仲ですから」

「中村さん……、当たり強いのヤメテ……」

 尊さんがしょんぼり顔で言うものだから、私たちはつい顔を見合わせて笑ってしまった。

「……私の恋が叶わないのはともかく、付き合ってるなら朱里をちゃんとしたデートに誘ってあげてくださいよ」

 恵に言われ、尊さんは申し訳なさそうな顔で私を見た。

「すまん。ちゃんとする」

「や、いいんですよ! 付き合ってからバタバタしてたのは、私が一番分かってますし。こないだ横浜帰りに言ってましたけど、そのうち温泉とかランドとか色々行く……んですもんね?」

「ああ、朱里の行きたい所に、どこでも連れて行く」

「言質とりましたからね」

 恵はそう言ってからグラスを傾け、二杯目のビールを呷る。

 トン、とテーブルにグラスを置いてから、彼女は渦中の尊さんに話題を振った。

「それはそうと、噂の的ですけど大丈夫です? 私たちの心配をしてる場合じゃないでしょう」

「あー……」

 彼は少し上を向いて考える素振りを見せる。

「……まぁ、〝上〟の話し合いではなんとかなる……感じかな」

「前に予想していたような感じになります?」

 私が尋ねると、尊さんは「多分な」と頷いた。

 詳細を言わないのは〝外〟で不用意に社内の事を言いたくないからだろう。

「篠宮さんは大丈夫なんです? 色々言われてるじゃないですか」

「まーなぁ……」

 今日なんて、胸糞悪い会話を聞いてしまった。

 社食から戻る時、他部署の男性社員がこんな会話をしていた。

『速水部長ってあのイケメンだろ? 若くて部長なのに、実は御曹司ってマジかよ』

『天は二物を与えるのかね~。でも社長が不倫して生まれた子だろ? 隠し子が同じ会社にいるとか、どんな昼ドラだよ』

『速水部長と付き合いたいって女多いけど、金目当てで分かりやすっ。それに結婚しても、部長の両親からは祝福されないだろ? お気の毒ー』

『ウケる。父親は不倫で、母親は鬼籍? 継母は逮捕。それでも顔が良くて金持ってたら結婚したいのかね。女ってこえー』

 そんな会話を聞いた私は、後ろから思い切り殴ってやりたくて堪らなかった。

 恵が腕を組んで私を押さえてくれていたから、暴れずに済んだけど……。

 尊さんは生ハムを取り皿にとりつつ言う。

「俺、こないだ『人を大切にしたい』とは言ったけど、関わる人全員を……なんて、菩薩みたいな事は考えてねぇから大丈夫。外野の言葉でいちいち傷付かねぇわ」

 サラッと言ったのを聞いて、とりあえず安心した。

「朱里は俺を『愛情深い』って言ってくれるけど、本当に大切にしたいのはごく身近な人だけだ。あとはうまく生きていくために利用していく感じ。基本的に他人に興味ねぇし」

『興味がない』とハッキリ言われ、私は目を見開いた。
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