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恵 編
他人に興味がないし、期待もしてない
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「『どうなってもいい』って思ってる訳じゃない。一般的な考えだけど、災害があったら無事を祈る気持ちは持ってる。でも、毎日世界の平和を思って悲嘆する訳にいかねぇよ」
「確かに。私も『世界が平和になればいいな』とは思いますけど、四六時中考えて悩みはしないかも」
恵が同意し、私もうんうんと頷く。
「俺が会社の中で一番大切にするのは自分の部下だ。その上位にプライベートで関わる人がいる。誰だって大切にする人のヒエラルキーがあるだろ?」
「ありますね」
私は頷き、自分の心のピラミッドの頂点に尊さんや恵、母がいるのを心の中で確認した。
「同じ部署の奴らは、仕事をうまく回していくための大切な仲間だ。だから諍いの〝芽〟になりそうだな~、と感じた奴は少しずつ懐柔してったな」
「え? どうやって?」
私は興味を持ち、少し前のめりになる。
「ちょっとトゲトゲした態度の奴を見つけたら、飲みに誘ってうまくそいつの抱えてる不平不満、コンプレックスを吐き出させて、まるっとフォローして味方につける」
「わぁ……、サイコパスだ」
恵はドン引きしている。
「でも、どうりでうちの部署、雰囲気がいいと思いました。確かに個人の性格が原因でトラブった事はあるけど、ギスギスはしてませんよね」
「そう、人間関係っていう土台を綺麗に整えておくと楽に働けるワケ。職場が庭なら、上司は庭師。ちょいちょい様子を見て、手入れをするのが俺の役目だと思ってる」
それを聞き、恵が頷いた。
「あー、確かに時々、『速水部長と飲みに行った』って言ってる人いたかも」
言われて思いだしたけれど、ちょっと前の私は〝部長〟が嫌いだったからあまり〝部長〟を褒める言葉を聞き入れていなかったかもしれない。
「そうやって俺は〝うちのこ〟を大事にするワケ。あとは管轄外だし、さっきの話に戻るけど、仕事の話じゃないなら『知るか』って感じだな。そいつらを俺のプライベートにも、人生にも関わらせるつもりはねぇ」
割り切った考えを聞き、私は「はー……」と感心する。
「たとえば今回みたいに仕事以外の事でクソミソに言われても、ぶっちゃけ仕事に影響ないならどうでもいい。人から悪く言われるなんて、俺には〝今さら〟な事だし。それに、世界中の人間に好かれるなんて無理だしな。2:6:2の法則って知ってるか?」
「聞いた事はあるかも」
恵が頷いてジェノベーゼをフォークで巻く。
「二割の人はどう足掻いても俺を嫌う。嫌われないように努力しても嫌う。なら、努力して心を痛めるだけエネルギーの無駄。活火山のマグマを、バケツの水を使って一生懸命消化しようとするもんだ。なら、朱里みたいに俺を好きでいてくれる人を喜ばせて、自分も一緒に幸せになる道を選んだほうがずっといい。視線を向ける先を変えるだけで、そこには常夏のビーチがあって可愛い恋人と美味い飯、綺麗な景色がある」
尊さんはおどけるように言ってニヤリと笑うと、オリーブを口に入れた。
「こう考えてはいるけど、優しくしてくれる人には丁寧に接するよ。こう見えて季節の挨拶にハガキを送るとか、マメにしてる」
「へぇ~、意外!」
恵が目を見開いて驚いてみせた。私も彼がアナログでハガキを書くと思っていなかったので意外だった。というか、尊さんの手書きメッセージほしい……。プレミアム価格で買う。
「そう説明されて理解しても、私は尊さんみたいに割り切れないかな。どうしても人の目を気にしてしまうかもしれない」
そう言うと、彼は小さく笑った。
「朱里は『自分を好きになってくれるかも』って周りの人に期待してるからだと思う。俺は関わりができたら相手の事を考えるけど、話した事のない奴まで気にできねぇな。そういう意味で、俺は他人に興味がないし、期待もしてない」
「そっか……」
彼の言いたい事を理解し、私は溜め息をつく。
「俺、あんまりSNSもやらねぇし、その他大勢からどう思われるかとか、本当に気にしてねぇんだよな。皆、『共有したい』とか『自慢したい、見て!』『吐き出したい』って思って投稿、シェアしてるだろうけど、顔も知らない奴を気にしすぎるのは嫌だ。それより俺自身が色んな事をして経験を積んでいきたい。俺はネットよりリアルのほうが大事だ」
「はー……」
割とSNSを見ちゃってる私が感嘆の溜め息をつくと、恵が頷いた。
「私もあんまりネットやらないし、それは賛成かな。つらつらと見てたらムカつく事が書いてあったり、情緒不安定になるんだよね。それだったらキャンプして火見るわ。これが本当の〝炎上〟」
「あっははは! さすがアウトドア派!」
私は思わず声を上げて笑う。
「SNSを悪いとは言わねぇけど、何かあったら考えるのがネットの事、友達との話題もネットの事……は、ちょっと現実から離れてるんじゃないかな、と感じる。リアルの生き方を疎かにしないように、ほどほどの付き合いが大事だと思う。朱里はそこまでじゃねぇけど。まぁ、暇になったらいつでも俺を見てくれよ。飽きさせねぇから」
尊さんは最後にそう言って、自分を指さしてニッコリ笑った。
「確かに。私も『世界が平和になればいいな』とは思いますけど、四六時中考えて悩みはしないかも」
恵が同意し、私もうんうんと頷く。
「俺が会社の中で一番大切にするのは自分の部下だ。その上位にプライベートで関わる人がいる。誰だって大切にする人のヒエラルキーがあるだろ?」
「ありますね」
私は頷き、自分の心のピラミッドの頂点に尊さんや恵、母がいるのを心の中で確認した。
「同じ部署の奴らは、仕事をうまく回していくための大切な仲間だ。だから諍いの〝芽〟になりそうだな~、と感じた奴は少しずつ懐柔してったな」
「え? どうやって?」
私は興味を持ち、少し前のめりになる。
「ちょっとトゲトゲした態度の奴を見つけたら、飲みに誘ってうまくそいつの抱えてる不平不満、コンプレックスを吐き出させて、まるっとフォローして味方につける」
「わぁ……、サイコパスだ」
恵はドン引きしている。
「でも、どうりでうちの部署、雰囲気がいいと思いました。確かに個人の性格が原因でトラブった事はあるけど、ギスギスはしてませんよね」
「そう、人間関係っていう土台を綺麗に整えておくと楽に働けるワケ。職場が庭なら、上司は庭師。ちょいちょい様子を見て、手入れをするのが俺の役目だと思ってる」
それを聞き、恵が頷いた。
「あー、確かに時々、『速水部長と飲みに行った』って言ってる人いたかも」
言われて思いだしたけれど、ちょっと前の私は〝部長〟が嫌いだったからあまり〝部長〟を褒める言葉を聞き入れていなかったかもしれない。
「そうやって俺は〝うちのこ〟を大事にするワケ。あとは管轄外だし、さっきの話に戻るけど、仕事の話じゃないなら『知るか』って感じだな。そいつらを俺のプライベートにも、人生にも関わらせるつもりはねぇ」
割り切った考えを聞き、私は「はー……」と感心する。
「たとえば今回みたいに仕事以外の事でクソミソに言われても、ぶっちゃけ仕事に影響ないならどうでもいい。人から悪く言われるなんて、俺には〝今さら〟な事だし。それに、世界中の人間に好かれるなんて無理だしな。2:6:2の法則って知ってるか?」
「聞いた事はあるかも」
恵が頷いてジェノベーゼをフォークで巻く。
「二割の人はどう足掻いても俺を嫌う。嫌われないように努力しても嫌う。なら、努力して心を痛めるだけエネルギーの無駄。活火山のマグマを、バケツの水を使って一生懸命消化しようとするもんだ。なら、朱里みたいに俺を好きでいてくれる人を喜ばせて、自分も一緒に幸せになる道を選んだほうがずっといい。視線を向ける先を変えるだけで、そこには常夏のビーチがあって可愛い恋人と美味い飯、綺麗な景色がある」
尊さんはおどけるように言ってニヤリと笑うと、オリーブを口に入れた。
「こう考えてはいるけど、優しくしてくれる人には丁寧に接するよ。こう見えて季節の挨拶にハガキを送るとか、マメにしてる」
「へぇ~、意外!」
恵が目を見開いて驚いてみせた。私も彼がアナログでハガキを書くと思っていなかったので意外だった。というか、尊さんの手書きメッセージほしい……。プレミアム価格で買う。
「そう説明されて理解しても、私は尊さんみたいに割り切れないかな。どうしても人の目を気にしてしまうかもしれない」
そう言うと、彼は小さく笑った。
「朱里は『自分を好きになってくれるかも』って周りの人に期待してるからだと思う。俺は関わりができたら相手の事を考えるけど、話した事のない奴まで気にできねぇな。そういう意味で、俺は他人に興味がないし、期待もしてない」
「そっか……」
彼の言いたい事を理解し、私は溜め息をつく。
「俺、あんまりSNSもやらねぇし、その他大勢からどう思われるかとか、本当に気にしてねぇんだよな。皆、『共有したい』とか『自慢したい、見て!』『吐き出したい』って思って投稿、シェアしてるだろうけど、顔も知らない奴を気にしすぎるのは嫌だ。それより俺自身が色んな事をして経験を積んでいきたい。俺はネットよりリアルのほうが大事だ」
「はー……」
割とSNSを見ちゃってる私が感嘆の溜め息をつくと、恵が頷いた。
「私もあんまりネットやらないし、それは賛成かな。つらつらと見てたらムカつく事が書いてあったり、情緒不安定になるんだよね。それだったらキャンプして火見るわ。これが本当の〝炎上〟」
「あっははは! さすがアウトドア派!」
私は思わず声を上げて笑う。
「SNSを悪いとは言わねぇけど、何かあったら考えるのがネットの事、友達との話題もネットの事……は、ちょっと現実から離れてるんじゃないかな、と感じる。リアルの生き方を疎かにしないように、ほどほどの付き合いが大事だと思う。朱里はそこまでじゃねぇけど。まぁ、暇になったらいつでも俺を見てくれよ。飽きさせねぇから」
尊さんは最後にそう言って、自分を指さしてニッコリ笑った。
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