【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
168 / 778
恵 編

他人に興味がないし、期待もしてない

しおりを挟む
「『どうなってもいい』って思ってる訳じゃない。一般的な考えだけど、災害があったら無事を祈る気持ちは持ってる。でも、毎日世界の平和を思って悲嘆する訳にいかねぇよ」

「確かに。私も『世界が平和になればいいな』とは思いますけど、四六時中考えて悩みはしないかも」

 恵が同意し、私もうんうんと頷く。

「俺が会社の中で一番大切にするのは自分の部下だ。その上位にプライベートで関わる人がいる。誰だって大切にする人のヒエラルキーがあるだろ?」

「ありますね」

 私は頷き、自分の心のピラミッドの頂点に尊さんや恵、母がいるのを心の中で確認した。

「同じ部署の奴らは、仕事をうまく回していくための大切な仲間だ。だから諍いの〝芽〟になりそうだな~、と感じた奴は少しずつ懐柔してったな」

「え? どうやって?」

 私は興味を持ち、少し前のめりになる。

「ちょっとトゲトゲした態度の奴を見つけたら、飲みに誘ってうまくそいつの抱えてる不平不満、コンプレックスを吐き出させて、まるっとフォローして味方につける」

「わぁ……、サイコパスだ」

 恵はドン引きしている。

「でも、どうりでうちの部署、雰囲気がいいと思いました。確かに個人の性格が原因でトラブった事はあるけど、ギスギスはしてませんよね」

「そう、人間関係っていう土台を綺麗に整えておくと楽に働けるワケ。職場が庭なら、上司は庭師。ちょいちょい様子を見て、手入れをするのが俺の役目だと思ってる」

 それを聞き、恵が頷いた。

「あー、確かに時々、『速水部長と飲みに行った』って言ってる人いたかも」

 言われて思いだしたけれど、ちょっと前の私は〝部長〟が嫌いだったからあまり〝部長〟を褒める言葉を聞き入れていなかったかもしれない。

「そうやって俺は〝うちのこ〟を大事にするワケ。あとは管轄外だし、さっきの話に戻るけど、仕事の話じゃないなら『知るか』って感じだな。そいつらを俺のプライベートにも、人生にも関わらせるつもりはねぇ」

 割り切った考えを聞き、私は「はー……」と感心する。

「たとえば今回みたいに仕事以外の事でクソミソに言われても、ぶっちゃけ仕事に影響ないならどうでもいい。人から悪く言われるなんて、俺には〝今さら〟な事だし。それに、世界中の人間に好かれるなんて無理だしな。2:6:2の法則って知ってるか?」

「聞いた事はあるかも」

 恵が頷いてジェノベーゼをフォークで巻く。

「二割の人はどう足掻いても俺を嫌う。嫌われないように努力しても嫌う。なら、努力して心を痛めるだけエネルギーの無駄。活火山のマグマを、バケツの水を使って一生懸命消化しようとするもんだ。なら、朱里みたいに俺を好きでいてくれる人を喜ばせて、自分も一緒に幸せになる道を選んだほうがずっといい。視線を向ける先を変えるだけで、そこには常夏のビーチがあって可愛い恋人と美味い飯、綺麗な景色がある」

 尊さんはおどけるように言ってニヤリと笑うと、オリーブを口に入れた。

「こう考えてはいるけど、優しくしてくれる人には丁寧に接するよ。こう見えて季節の挨拶にハガキを送るとか、マメにしてる」

「へぇ~、意外!」

 恵が目を見開いて驚いてみせた。私も彼がアナログでハガキを書くと思っていなかったので意外だった。というか、尊さんの手書きメッセージほしい……。プレミアム価格で買う。

「そう説明されて理解しても、私は尊さんみたいに割り切れないかな。どうしても人の目を気にしてしまうかもしれない」

 そう言うと、彼は小さく笑った。

「朱里は『自分を好きになってくれるかも』って周りの人に期待してるからだと思う。俺は関わりができたら相手の事を考えるけど、話した事のない奴まで気にできねぇな。そういう意味で、俺は他人に興味がないし、期待もしてない」

「そっか……」

 彼の言いたい事を理解し、私は溜め息をつく。

「俺、あんまりSNSもやらねぇし、その他大勢からどう思われるかとか、本当に気にしてねぇんだよな。皆、『共有したい』とか『自慢したい、見て!』『吐き出したい』って思って投稿、シェアしてるだろうけど、顔も知らない奴を気にしすぎるのは嫌だ。それより俺自身が色んな事をして経験を積んでいきたい。俺はネットよりリアルのほうが大事だ」

「はー……」

 割とSNSを見ちゃってる私が感嘆の溜め息をつくと、恵が頷いた。

「私もあんまりネットやらないし、それは賛成かな。つらつらと見てたらムカつく事が書いてあったり、情緒不安定になるんだよね。それだったらキャンプして火見るわ。これが本当の〝炎上〟」

「あっははは! さすがアウトドア派!」

 私は思わず声を上げて笑う。

「SNSを悪いとは言わねぇけど、何かあったら考えるのがネットの事、友達との話題もネットの事……は、ちょっと現実から離れてるんじゃないかな、と感じる。リアルの生き方を疎かにしないように、ほどほどの付き合いが大事だと思う。朱里はそこまでじゃねぇけど。まぁ、暇になったらいつでも俺を見てくれよ。飽きさせねぇから」

 尊さんは最後にそう言って、自分を指さしてニッコリ笑った。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

半日だけの…。貴方が私を忘れても

アズやっこ
恋愛
貴方が私を忘れても私が貴方の分まで覚えてる。 今の貴方が私を愛していなくても、 騎士ではなくても、 足が動かなくて車椅子生活になっても、 騎士だった貴方の姿を、 優しい貴方を、 私を愛してくれた事を、 例え貴方が記憶を失っても私だけは覚えてる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるゆる設定です。  ❈ 男性は記憶がなくなり忘れます。  ❈ 車椅子生活です。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

処理中です...