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恵 編
ベースを強くすればいいんじゃないか
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「やだぁ~……。まじめな話のあとに、さりげなく惚気入れてくる男、やだわぁ……」
恵がげんなりした顔をし、生ハムをモシャモシャ食べる。
「速水尊はこういう男なんだよー」
私は「んふふ」と笑ってサラダの残りを取り皿にとる。
「でも説得力あるなぁ。私は尊さんや恵に強さっていうか、ちょっとやそっとの事じゃ揺らがない芯を感じて憧れてた。きっと考え方が根本的に違うんだろうね」
私は運ばれてきたサングリアの果実を、マドラーでクルクル回しながら言う。
そんな私の言葉を聞き、尊さんは小さく笑った。
「気にしちまう気持ちは分かる。寂しい時や〝誰か〟の言葉で勇気づけてほしい時って、スマホ開いてちょっと検索したら望む言葉が手に入る。凄く便利だし、孤独を癒すのに最適なツールだと思う。俺もかつては凄くその手の言葉を検索して、自分を励ましていた」
尊さんの過去を思いだし、私はコクンと頷く。
「それを間違えているとは言わねぇけど、最近は少し考え方を変えた。他人の言葉を見て『そうだよな』って自分に言い聞かせるのもアリだけど、気を抜くと何かがきっかけになってすぐ弱る。『じゃあ、そもそものベースを強くすればいいんじゃないか?』って思ったんだ」
「ベース……とは、人間性的な?」
尋ねると、尊さんは「そう」と頷く。
「ネットに頼らなくても、『俺ってこういう奴だし』って堂々と顔を上げて、二割の奴になんと言われても動じねぇ男になりたいって思った。そのためには、一にも二にもリアルで経験を積んで自分に自信を持つ事だ。シンプルな考え方だけど、筋トレして体を鍛えたら、性格悪ぃけど『俺はこれだけ鍛えてスーツを格好良く着こなしてるけど、お前は?』って思える。知識を得て金を増やしておいたら、心にもある程度余裕はできるし」
「わぁ……、できる男のサクセス理論つえぇ」
恵がぼやく。
「ぶっちゃけ、ネットの中でどれだけ〝強者〟になって他人に噛み付いても、情報開示されたら金のねぇおっさんでした、だったらあまりにも……だろ? ネットでどれだけ〝逆らったら怖い人〟認定されようが、リアルにはそんなに影響しねぇと思ってる。どんなにフォロワーがいようが、顔出しでもしてなきゃ道行く人はそいつの事をまったく気にしねぇし。ま、ある程度SNSの投稿を見てたら、その人の素は見えるかもしんねぇけどな。でもネットで出してる部分がそいつのすべてでもない」
「そうですね。普通に話してたフォロワーさんが、実は凄い人だったと知って、ビビった事は何回かありました。でもそういう人に限って、自我を前面に出して私生活や仕事を自慢したりしないんですよね」
私がフォロワーさんの話をすると、尊さんは「そう」と頷いた。
「本当にリアルが満たされてる人って、SNSをしなくても十分幸せだと思うぜ。いいねをもらったり、金を使った事を自慢しなくても、自分に誇りを持って堂々としていられるんだ。俺の友達にまったくSNSやらない奴がいて、連絡手段は電話かメールの奴がいるな。『煩わしくなくていい』って言ってる」
「確かに、そういう生き方はアリですよね。真の陽キャっぽい」
同時に、私はコンビニで買った物も《期間限定GETしました!》って投稿しちゃってるので、ちょっと恥ずかしくなった。
「まぁ、最初にいったように全部は否定しない。健康的にやれてるならいいんだ。俺がこういう考え方になったのも、昔、自分がかなりネガティブな使い方をしていたからであって」
尊さんは私の気持ちを見透かしたように言い、ポンポンと頭を撫でてくる。
「でも最近はネットの動きに疲れを感じるかな。鼻息荒く誰かを叩いて優越感に浸る奴がいるし、アルゴリズムで操作されて、見るものが偏って自分の世界が狭くなる。不愉快なものを見なくて済むのはありがたいし、好きなものを見られるのはいい事だ。でも無意識に狭めた世界での常識を見て、『皆が言ってる』と思い込むのは良くねぇよ」
「確かにそうですね。私、ラーメンばっかりいいねしてるから、タイムラインがラーメンだ……」
そう言うと、尊さんと恵は「ぶふぉっ」と噴きだしてしばらく肩を震わせていた。
しばし笑ってから、尊さんはドリンクメニューを手にして言う。
「『見たくねぇな』って思った時に見ない選択をできるならいいけど、人って疲れてる時や病んでる時に、余計にダラダラ見ちまう癖がある。生産的な事をするより、目の前にあるもんをただ眺めるほうが楽だからだ。それに情報をドバーッと浴びないと、世間に置いてかれるとか、半分強迫観念っぽくなってるんだよな」
「あー、それはあるかも。学生時代の友達とか同僚とか、ご飯食べながらスマホ見てて、『今、あんたとご飯食べてる私がここにいるんだけど……』ってなります」
恵が言ってるのは私以外の友達なんだろうけど、ちょっと心当たりのあった私は、しょんぼりして謝った。
「ごめん。私、一時、昭人の情報ばっかり追ってたな……。今思ったらめちゃキモい。恵は『やめなって』って止めてくれて、なんとかネトストするのやめられたけど、あれはヤバかった……」
それを聞き、尊さんが何回か頷いて言った。
「それはさ。簡単に得られる褒美だからだよ」
「褒美?」
精神的ダメージを負うのに褒美と言われ、私は首を傾げる。
恵がげんなりした顔をし、生ハムをモシャモシャ食べる。
「速水尊はこういう男なんだよー」
私は「んふふ」と笑ってサラダの残りを取り皿にとる。
「でも説得力あるなぁ。私は尊さんや恵に強さっていうか、ちょっとやそっとの事じゃ揺らがない芯を感じて憧れてた。きっと考え方が根本的に違うんだろうね」
私は運ばれてきたサングリアの果実を、マドラーでクルクル回しながら言う。
そんな私の言葉を聞き、尊さんは小さく笑った。
「気にしちまう気持ちは分かる。寂しい時や〝誰か〟の言葉で勇気づけてほしい時って、スマホ開いてちょっと検索したら望む言葉が手に入る。凄く便利だし、孤独を癒すのに最適なツールだと思う。俺もかつては凄くその手の言葉を検索して、自分を励ましていた」
尊さんの過去を思いだし、私はコクンと頷く。
「それを間違えているとは言わねぇけど、最近は少し考え方を変えた。他人の言葉を見て『そうだよな』って自分に言い聞かせるのもアリだけど、気を抜くと何かがきっかけになってすぐ弱る。『じゃあ、そもそものベースを強くすればいいんじゃないか?』って思ったんだ」
「ベース……とは、人間性的な?」
尋ねると、尊さんは「そう」と頷く。
「ネットに頼らなくても、『俺ってこういう奴だし』って堂々と顔を上げて、二割の奴になんと言われても動じねぇ男になりたいって思った。そのためには、一にも二にもリアルで経験を積んで自分に自信を持つ事だ。シンプルな考え方だけど、筋トレして体を鍛えたら、性格悪ぃけど『俺はこれだけ鍛えてスーツを格好良く着こなしてるけど、お前は?』って思える。知識を得て金を増やしておいたら、心にもある程度余裕はできるし」
「わぁ……、できる男のサクセス理論つえぇ」
恵がぼやく。
「ぶっちゃけ、ネットの中でどれだけ〝強者〟になって他人に噛み付いても、情報開示されたら金のねぇおっさんでした、だったらあまりにも……だろ? ネットでどれだけ〝逆らったら怖い人〟認定されようが、リアルにはそんなに影響しねぇと思ってる。どんなにフォロワーがいようが、顔出しでもしてなきゃ道行く人はそいつの事をまったく気にしねぇし。ま、ある程度SNSの投稿を見てたら、その人の素は見えるかもしんねぇけどな。でもネットで出してる部分がそいつのすべてでもない」
「そうですね。普通に話してたフォロワーさんが、実は凄い人だったと知って、ビビった事は何回かありました。でもそういう人に限って、自我を前面に出して私生活や仕事を自慢したりしないんですよね」
私がフォロワーさんの話をすると、尊さんは「そう」と頷いた。
「本当にリアルが満たされてる人って、SNSをしなくても十分幸せだと思うぜ。いいねをもらったり、金を使った事を自慢しなくても、自分に誇りを持って堂々としていられるんだ。俺の友達にまったくSNSやらない奴がいて、連絡手段は電話かメールの奴がいるな。『煩わしくなくていい』って言ってる」
「確かに、そういう生き方はアリですよね。真の陽キャっぽい」
同時に、私はコンビニで買った物も《期間限定GETしました!》って投稿しちゃってるので、ちょっと恥ずかしくなった。
「まぁ、最初にいったように全部は否定しない。健康的にやれてるならいいんだ。俺がこういう考え方になったのも、昔、自分がかなりネガティブな使い方をしていたからであって」
尊さんは私の気持ちを見透かしたように言い、ポンポンと頭を撫でてくる。
「でも最近はネットの動きに疲れを感じるかな。鼻息荒く誰かを叩いて優越感に浸る奴がいるし、アルゴリズムで操作されて、見るものが偏って自分の世界が狭くなる。不愉快なものを見なくて済むのはありがたいし、好きなものを見られるのはいい事だ。でも無意識に狭めた世界での常識を見て、『皆が言ってる』と思い込むのは良くねぇよ」
「確かにそうですね。私、ラーメンばっかりいいねしてるから、タイムラインがラーメンだ……」
そう言うと、尊さんと恵は「ぶふぉっ」と噴きだしてしばらく肩を震わせていた。
しばし笑ってから、尊さんはドリンクメニューを手にして言う。
「『見たくねぇな』って思った時に見ない選択をできるならいいけど、人って疲れてる時や病んでる時に、余計にダラダラ見ちまう癖がある。生産的な事をするより、目の前にあるもんをただ眺めるほうが楽だからだ。それに情報をドバーッと浴びないと、世間に置いてかれるとか、半分強迫観念っぽくなってるんだよな」
「あー、それはあるかも。学生時代の友達とか同僚とか、ご飯食べながらスマホ見てて、『今、あんたとご飯食べてる私がここにいるんだけど……』ってなります」
恵が言ってるのは私以外の友達なんだろうけど、ちょっと心当たりのあった私は、しょんぼりして謝った。
「ごめん。私、一時、昭人の情報ばっかり追ってたな……。今思ったらめちゃキモい。恵は『やめなって』って止めてくれて、なんとかネトストするのやめられたけど、あれはヤバかった……」
それを聞き、尊さんが何回か頷いて言った。
「それはさ。簡単に得られる褒美だからだよ」
「褒美?」
精神的ダメージを負うのに褒美と言われ、私は首を傾げる。
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