318 / 810
墓参り 編
未来を作っていくため
しおりを挟む
「俺としても、ずっと見ないようにしていた問題だから、怖さはある。でも乗り越えるなら今だと思う。結婚式を挙げる時、できるなら父方母方、両方の親戚を呼びたい。速水家の人たちは俺の父親に会いたくないだろうけど、その辺も一日だけ我慢してほしいとお願いしたい。……未来を作っていくために、ちゃんと向き合って話したいんだ」
私はそう言い切った尊さんの腕をそっと撫でた。
小牧さんと弥生さんはニッコリ笑い、頷く。
「いいんじゃない? 応援するよ。正直、親世代の事は私たちにあまり関係ない。親や祖父母が特定の誰かにネガティブな感情を抱いていても、私たちが負の遺産を引き継ぐ必要はないわ。私たちは私たちで、キャッキャウフフと仲良くすればいいのよ。でも尊くんがお祖母ちゃんと和解したいって願う気持ちも充分理解する。だから私たちは尊くんの味方前提で、援護射撃するね」
そう言って、小牧さんは親指と人差し指で銃のハンドジェスチャーをすると、「バンバン」と言って撃つ真似をする。
「当てないでくれよ」
尊さんがニヤッと笑うと、小牧さんは大げさに目を剥いた。
「ホント、口の減らない人だなぁ……」
その時、黒トリュフののったリゾットが運ばれてきて、リゾット大好きな私は目を輝かせて食べ始めた。
「朱里さん、食いつきいいわぁ……」
弥生さんがしみじみと言い、小牧さんはリゾットを嚥下して頷いた。
「先日うちの店に来てくれた時も、美味しそうにパクパク食べてくれるから、作りがいがあるったら」
そう言った時、尊さんがいきなり「ぶふっ」とスパークリングワインに噎せて笑い始めた。
「な、なに!?」
目を丸くしてトントンと彼の背中をさすっていると、彼はナプキンで口元を拭いながら言った。
「こいつ、『To eat is to live』って書かれたTシャツを家着にしてて、同棲し始めた時にそれ見た時、ツボって腹痛くなるまで笑った事ある」
「ぶひゅっ」
「ぶほっ」
姉妹が同時に噴き出し、横を向いて口元を押さえ、プルプルと体を震わせる。
三人に笑われ、私は必死に説明する。
「た、確かにそのTシャツは気に入ってるけど、あれ、恵がくれたんだもん」
数年前の誕生日に、恵が『To eat is to live』――『食べる事は生きる事』と胸元にプリントされたTシャツをプレゼントしてくれた。
本命のプレゼントは別にあったけど、それは自作デザインのグッズを作れるサイトで、恵が作って注文してくれた奴だ。
彼女は『ついで』と言っていたけれど、せっかくもらった物だし、書いてある言葉にも『確かにな……』と感銘を受けて、家ではよく着ている。
恵も私がお気に入りにしたのを喜んでいて、『クタクタになったら次のあげるからね』と言っていた。
……それぐらいお気に入りのTシャツなんだけど、まさかここで笑われる事になるとは……。
私が微妙な顔をしていたからか、小牧さんはパタパタと手を振って「ごめんごめん」と謝る。
「尊くん、可愛い朱里ちゃんの、大切なTシャツをネタにしたらダメよ」
「悪い悪い。いじりっちゃいじりだけど、可愛いからつい。……嫌だったか?」
尊さんに改めて聞かれ、私は首を横に振る。
「ううん。いじりでも、尊さんのは私の事を可愛がってるっての分かるから。今まで嫌だった事は一度もないですよ」
そう答えると、姉妹が寄り添って「「ヒュ~……」」とはやしたててきた。
私は照れつつも、「それほどでも……」と控えめにピースをする。
そのあとはメインのお肉を食べながら、姉妹がちえりさんとメッセージアプリで連絡をとりつつ、青葉台にある速水家にどんなタイミングで行くかを話し合っていった。
**
レストランを出たあと買い物をしてから、ハイヤーに乗って青葉台に向かう。
速水家の豪邸があるのは、二丁目の公園の西側だった。
車窓から見える時点で、どの家も面積が広く、通りに面して塀がずっと続いている。
当然家の中が見えないようにデザインされていて、目隠しのための木や、大きなガレージの格子細工にもお金がかかっている。
圧倒されて無言になっていると、車は一軒の豪邸の前で止まった。
小牧さんが鍵を開けて門から中に入り、続いた私は思わず声を上げてしまった。
「う……わぁ……」
私はそう言い切った尊さんの腕をそっと撫でた。
小牧さんと弥生さんはニッコリ笑い、頷く。
「いいんじゃない? 応援するよ。正直、親世代の事は私たちにあまり関係ない。親や祖父母が特定の誰かにネガティブな感情を抱いていても、私たちが負の遺産を引き継ぐ必要はないわ。私たちは私たちで、キャッキャウフフと仲良くすればいいのよ。でも尊くんがお祖母ちゃんと和解したいって願う気持ちも充分理解する。だから私たちは尊くんの味方前提で、援護射撃するね」
そう言って、小牧さんは親指と人差し指で銃のハンドジェスチャーをすると、「バンバン」と言って撃つ真似をする。
「当てないでくれよ」
尊さんがニヤッと笑うと、小牧さんは大げさに目を剥いた。
「ホント、口の減らない人だなぁ……」
その時、黒トリュフののったリゾットが運ばれてきて、リゾット大好きな私は目を輝かせて食べ始めた。
「朱里さん、食いつきいいわぁ……」
弥生さんがしみじみと言い、小牧さんはリゾットを嚥下して頷いた。
「先日うちの店に来てくれた時も、美味しそうにパクパク食べてくれるから、作りがいがあるったら」
そう言った時、尊さんがいきなり「ぶふっ」とスパークリングワインに噎せて笑い始めた。
「な、なに!?」
目を丸くしてトントンと彼の背中をさすっていると、彼はナプキンで口元を拭いながら言った。
「こいつ、『To eat is to live』って書かれたTシャツを家着にしてて、同棲し始めた時にそれ見た時、ツボって腹痛くなるまで笑った事ある」
「ぶひゅっ」
「ぶほっ」
姉妹が同時に噴き出し、横を向いて口元を押さえ、プルプルと体を震わせる。
三人に笑われ、私は必死に説明する。
「た、確かにそのTシャツは気に入ってるけど、あれ、恵がくれたんだもん」
数年前の誕生日に、恵が『To eat is to live』――『食べる事は生きる事』と胸元にプリントされたTシャツをプレゼントしてくれた。
本命のプレゼントは別にあったけど、それは自作デザインのグッズを作れるサイトで、恵が作って注文してくれた奴だ。
彼女は『ついで』と言っていたけれど、せっかくもらった物だし、書いてある言葉にも『確かにな……』と感銘を受けて、家ではよく着ている。
恵も私がお気に入りにしたのを喜んでいて、『クタクタになったら次のあげるからね』と言っていた。
……それぐらいお気に入りのTシャツなんだけど、まさかここで笑われる事になるとは……。
私が微妙な顔をしていたからか、小牧さんはパタパタと手を振って「ごめんごめん」と謝る。
「尊くん、可愛い朱里ちゃんの、大切なTシャツをネタにしたらダメよ」
「悪い悪い。いじりっちゃいじりだけど、可愛いからつい。……嫌だったか?」
尊さんに改めて聞かれ、私は首を横に振る。
「ううん。いじりでも、尊さんのは私の事を可愛がってるっての分かるから。今まで嫌だった事は一度もないですよ」
そう答えると、姉妹が寄り添って「「ヒュ~……」」とはやしたててきた。
私は照れつつも、「それほどでも……」と控えめにピースをする。
そのあとはメインのお肉を食べながら、姉妹がちえりさんとメッセージアプリで連絡をとりつつ、青葉台にある速水家にどんなタイミングで行くかを話し合っていった。
**
レストランを出たあと買い物をしてから、ハイヤーに乗って青葉台に向かう。
速水家の豪邸があるのは、二丁目の公園の西側だった。
車窓から見える時点で、どの家も面積が広く、通りに面して塀がずっと続いている。
当然家の中が見えないようにデザインされていて、目隠しのための木や、大きなガレージの格子細工にもお金がかかっている。
圧倒されて無言になっていると、車は一軒の豪邸の前で止まった。
小牧さんが鍵を開けて門から中に入り、続いた私は思わず声を上げてしまった。
「う……わぁ……」
158
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる